14 決まった旅先

放課後、私は急いで二階の空き教室へ向かった。

ヒメちゃんが学園一の情報通っていうのはすごく驚かされた。

っていうことは、私の秘密も知られているんじゃないかってビクビクしちゃうけどっ!

ガラガラガラっ

空き教室のドアを開けると中にはもうヒメちゃんとライくんが立っていた。

「遅かったですわね、ブスさん。」

「大丈夫?」

「ご、ごめんごめん!今日、日直だったからさ。」

2人を待たせちゃった!申し訳ないなぁ。

「じゃ、本題行くぞ。ヒメ、闇夜会について教えてくれ。」

ライくんが挑むような眼差しでヒメちゃんを見据える。

「なぜ闇夜界について聞きたいんですか?」

ヒメちゃんも真剣な顔。

闇夜界を知りたい理由。

ヒメちゃんに言ったらびっくりされちゃうんじゃないかな。

するとライくんが私の方を見て頷く。

「ヒメになら言ってもいいんじゃないかな。」って目だ。

じゃあ私が言わなきゃ。

「ヒメちゃん、長くなるんだけどね−」

私は今までのことをリリコちゃんに話した。

ここに引っ越してくる前のこと。

桜ちゃんのこと。

勾玉のこと。

ライくんに出会ったときのこと。

オバケたちのこと。

封印の練習をしたときのこと。

ライくんの家に行ったときのこと。

和さんや綾女さん、巫女さんたちのこと。

ライくんの家にまた行ったときのこと。

桜ちゃんについて話してもらったときのこと。

悪精を倒したときのこと。

セツくんのこと。

桜ちゃんの過去についてのこと。

助けようとして生徒や先生に聞いて回ったこと。

そしてヒメちゃんにあったこと。

自分も過去を改めて振り返ってみると、この短期間がすごく長く感じた。

楽しいこと、悲しいこと、嬉しいこと、辛いこととかがたっくさんあったなぁ。

ライくんも窓の方をゆっくりと見つめて思い出しているような懐かしいような顔をした。

ヒメちゃんは最初の方つまらなそうに話を聞いていたけれど、途中から話を聞いてくれて。

ちゃんと最後まで話せた。

「ふーん、なるほどですわ。それで桜さんという人を助けるために闇夜界に行きたいというんですね。」

「「うん。」」

私たちは次の言葉が発せられるのを緊張しながら待った。

「闇夜界は…」

ヒメちゃんが口を開いた。

ゴクリ。

唾を飲み込んでヒメちゃんを見つめる。

「闇夜界は…私もあまり知りませんの。」

「「…え?」」

え?知らなかったの?

私はポカーンと口を開けて呆然とした。

「ヒメ、それもっと先に言え…。」

ライくんも頭を抱えて大きなため息をついている。

「ただ、知っているかもしれない人物はいますわ。」

ヒメちゃんは自慢げに喋り出した。

「「知っているかもしれない人物?」」

私たちはオウムみたいに言葉を繰り返す。

「ええ。いますわ。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「私が小さい頃、お正月の時。初詣で神社に行ったんですの。そこには私と同じくらいの年齢、私よりは背が高かったですが、子供の巫女さんがいたんです。その子はまだ幼いのに立派な舞をしていたんです。その舞を、小さい頃の私はつまらない踊りだと思っておりました。ですが、その舞が妙に独特な歌詞で、『封じろ、封じろ』とか、『雷よ落ちろ』とか変なことしか言ってないんです。で、その中に『闇夜界よ、月明けれ』ってフレーズがありました。『闇夜界ってなんだろう』というような幼心で終わってしまいましたけど…。もしも確かめたいならその神社の場所、調べましょうか?」

ヒメちゃんの丁寧な説明が終わった後、私とライくんは2人揃ってフリーズ。

「そうなんだ」という気持ちと「どういうこと?」という気持ちが頭の中でぐるぐるしてる。

でもなんとなく理解できたし、その神社に行きたい!

「あの、ヒメちゃん。あの、ありがとね!お話ししてくれて。よかったらそこの神社、教えてもらえないかな?」

私が感謝すると、ヒメちゃんが私を下からニラんだ。

「何言ってるんですの?私、別にリリコさんに頼まれてもやる気が失せるだけですわ。」

やっぱり私じゃダメですか…。(ガックリ)

「ヒメ、お前の力が必要なんだ。リリコの親友の命がかかっている。お願い!その神社、教えてくれ!」

次にライくんが熱くお願いすると、

「も、もちろんですわっ!こんなところで終われません!女子たるもの、諦めるのは恥ずかしいですもの!」

うわぁーっ!ライくんだとこんなに気合入っちゃった。

その途端にヒメちゃんは床においてあった可愛らしいバックからシンプルなノートパソコンを取り出して、ぱかっと開けたと思ったら怖いくらいの高速タイピング!

ダダダダダダダっ!っと力強く押しすぎて、キーが吹っ飛びそうだよっ!

ヒメちゃんは私には意味のわからない英数字を大量に打ち込んで、最後にとびきり力強くエンターキーをバシッ!と打った。

すると神社の映像が出てきた。

「今、私の家にあったドローンカメラを神社に向かわせましたわ。今写っているのは神社の生放送です。ドローンからの信号を読み取ると、これは福島県にありますわね。ここからじゃ少し遠いですが…。」

「「ヒメ(ちゃん)すっご…。」」

私たち2人揃ってびっくり。

「こんなに遠いんじゃ電車などを使うしかいけませんね。諦めた方がいいと思いますわよ?」

くるりとこちらを向いたヒメちゃんは私たちのことを思ってくれているのかもしれない。

でも桜ちゃんのためだもの。

行かなくっちゃ!

「でも、私行きたいっ!友達を助けたいの!」

ちらっとライくんの方を見ると頷いてくれた。

ヒメちゃんは挑むような眼差しを私に向ける。

私も負けじと見つめ返す。

「…」

「…」

長い沈黙が続いて。

「はぁ、ほんっとうにブスさんは友達思いすぎてしつっこいですわね。本当に手間を焼かせるんじゃねぇですわ。」

ため息をついて、ヒメちゃんは再びパソコンを操作し始めた。

そして、公務室に行って帰ってきた。

「はい、これ、そこに行くための地図と電車線です。絶対に親友を助けるんですわよ。リリコさん。」

「ヒメちゃん…。」

ヒメちゃんの雰囲気は最初に会った時と違って温かい。

「ありがとう、私行ってくるねっ!」

感謝したらヒメちゃんも少しだけ口のはしを持ち上げて笑ってくれた。

ライくんも笑顔で見守ってくれている。

ヒメちゃんの気持ちに答えるためにも、絶対に闇夜会に行かなくっちゃ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る