10 桜の秘密

美味しいクッキーを食べ終わった私はため息をつく。

それと同時に桜ちゃんのことが気になった。

ライくんが閉じ込められた理由は和さんたちに桜ちゃんのことを伝えなかったから。

なんでそれだけで怒られるの?桜ちゃんと何か関係があるの?

あんなに怒ったぐらいだからきっと桜ちゃんはライくんたちと繋がりがあるのかもしれない。

でもあんなに言いたくなさそうだったライくんに無理やり聞くのも迷惑かけちゃうし…。

「はぁぁぁぁー。」と大きなため息を漏らすと、ライくんが口を開けた。

「あの…、桜のことなんだけど、今までの秘密、話してもいい?」

気まずそうに、でも声は真剣で背筋はピンと伸ばしていた。。

桜ちゃんのこと?もしかしたら情報ゲットかも!

「うん!聞かせて!」

ワクワクを隠さぬ態度で言った。

「じゃあ話すね。」

ゴクリ。

唾を飲み込んみこんで、私まで背筋を伸ばす。

「昔…俺がまだ小学三年生ぐらいの頃。桜がここ、白梅町に住んでいたんだ。桜のお父さんとお母さんは病気で、一人っ子の桜は2人の看病をしていたみたいなんだ。していたのは看病だけじゃなくてこの梅見花咲神社にも病気がひどくならないように毎日お参りしてた。雨の日も雪の日も。決して欠かさなかったんだ。三年生の俺は桜と同学年だから桜としょっちゅう遊んでた。でも、桜は看病で忙しくてすぐに家に帰ってしまったけどね。」

ライくんが淡々と話して行く。

そうだったんだ…。

確かに桜ちゃんは四年生に転校してきて。

家に遊びに行ったら、お父さんとお母さんは見当たらなかった。

桜ちゃんはお買い物とかお仕事とか言ってたけどウソだったんだ…。

空気が鎮まると、ライくんの声が重くなった。

「ある日。噂で聞いたところ、桜の両親は病気が悪化して仕事もできなくなってしまったんだって。このまま衰えて行く生活の中でも桜はお参りを欠かさなかった。時には『私が仕事を変われれば…。』なんてつぶやいていたりもした。それを見た俺の父さんと母さんは『神社で働くか?』って桜に言ったんだ。桜は喜んで神社の仕事を引き受けた。仕事って言ってもお掃除とか冠婚葬祭の片付けとかだったけど。でもお給料は払ってたから桜はそれをつかってご飯を買ったり薬を買ったりしていたらしいんだよね。そしたら桜のお父さんたちも体が良くなったみたいで仕事も復帰できたんだ。桜はそれで喜んでたし、よかったって思ったよ。」

っていうことはもう桜ちゃんの両親は元気ってこと?

よかった!

ふと安心したら、ライくんの顔が苦い物をかみつぶしたような顔でこう言った。

「だけど。…桜の両親は殺されてしまったんだ。」

「え…。」

どういうこと?

私はその場をうまく飲み込めなくて聞き返すのが精一杯だった。

「殺されたんだ…っ!悪精たちに!」

悪精?殺された?

「悪精ってな…キャッ!」

ドォォォォンッ!

大きなものが落ちてきたみたいな音とともに大きな揺れが起きた。

「まさか!」

ライくんは大きく目を開いて窓の方に目をやる。

私もつられてみると、

「何…アレ…っ!」

大きな体でとっても黒い。

手足があって指は何本か数えられないほどたくさんある。

まるでクモが人間化したみたいな姿。

グルッ

その怪物はこちらを見た。

顔には何個もの目があり、口は耳まで避けている。

なんとも恐ろしい姿に私は絶句した。

「悪精!!!!!」

ライくんの叫んだ言葉にクラリとした。

これが悪精⁉︎コイツに桜ちゃんの両親は殺されたの⁉︎

するとライくんの部屋の外からバタバタと足音が聞こえた。

「きっと神社の人たちも慌てているんじゃないかな。

ライくんは震えた声で告げる。

「これじゃ街が危ない。…倒してくる。」

「ええっ!」

ライくんは窓をこじ開けようとするけどビクともしない。

「クソッ!窓にも鍵がかけられていたか!それも魔術で!」

ライくんの両親そんなこともできるの⁉︎

って危ない危ない。こんなこと考えてる場合じゃなかった!

諦めたような顔をしたライくんを見て私は窓の近くへ行く。

「私、やってみる。」

私は首に下げている勾玉をギュッと握る。

「やってみるって何を?」

ライくんはキョトンとした。

「この窓を開けてみる!」

そう言って私は勾玉を力強く握って窓の方に向ける。

「お願い!開いてっ!」

すると勾玉がピカッと光りだし、鍵の形になる。

そしてそれを窓へ突き刺す!

ガチャッ!

「「開いた!」」

私とライくんは顔を見合わせてうなずく。

するとライくんはベットの下から1つの弓とお札のついている矢を取り出した。

そしてそれを素早く構え、矢をそえる。

ライくんは悪精を睨みつけこう唱えた。

「悪精よ。天に召されろ、封じ込め!!」

そしてビュンと矢を飛ばす!

すっごく距離が離れているのに、矢はスピードを落とさずに悪性の方に向かう。

そしてその矢は、見事、悪精に命中!

矢が突き刺さると、悪精はウガアアッ!と叫んだ。

が、その矢を振り払い、ライくんを睨みつけた。

「仕方ない!リリコ!行くぞ!」

そう言って私を無理やり抱きかかえて窓の外へジャンプ!

「私、死んじゃううううううっ!」

泣き叫ぶけどライくんは涼しい顔。

ストン、と着地した。

私は抱きかかえられてたから安全デシタ…。

「大丈夫?」

ライくんはにっこり。

でも私は死んだような顔して睨みつける。

「…死ぬと思いましたから…。」

声も枯れ果てていますよぉ。

「そんなことより早く行こう!」

ライくんはそんなこと無視して走り出す。

「ちょっ!待ってよライくん!おいてくなぁ!」

私も全速力で走り出した。

何より私も戦うのが嫌だ!

ライくん1人でちゃっちゃとかたずけてよぉ〜!

私の願いなんて虚しく叶わず、一緒に参戦しないといけないのでした。

アーメン。

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