7 梅見花咲神社
土曜日まではいろんなことがあった。
放課後はいつも通りライくんと勾玉を上手に扱えるように練習!
最近は難しいメデゥーサのナナちゃんまで封印できるようになったんだ!
練習した後は女子オバケグループと話したり、たまには宿題を手伝ってもらったり。
私の大事な友達が増えた気がして嬉しいなぁ。
リィくんやムーくんとも仲良くなったけど、ジンくんとはまだそんなに話したことはない。
封印の練習も気まずくて出来っこない。
でも忘れ物を届けてくれたことがあったんだ。
ジンくんはお散歩が好きで、学校中を毎日散歩しているらしい。
そこで私がいつもバックの横にはめていた水筒がないことに気づいてお散歩してとってきてくれたんだ。
根は優しい子なんだなぁ、なんて少し友達になれたよ!
あ、そうそう。ちょっと危険なことがあってさ…。
ライくんに「今日の放課後も校庭集合ね!」なんて仲よさそうに話しかけてくるから女子の目線が鬼モードになっちゃうんだよぉ〜(泣)
いつか殺されるんじゃないかなってドキドキしながら学校生活送ってマス…。
そして待ちに待った約束の土曜日!
お気に入りの長袖とスカートを履いて勾玉のネックレスを装着!
いざ、白梅東公園へ!
「行ってきまーす!」
私はお母さんに元気に行って外に出た。
「行ってらっしゃい。」と手を振るお母さんには申し訳ないけれどウソをついたの。
土曜日は友達と遊ぶってデマカセを言ってお母さんを騙してしまったんだ。
遊びはしないけど、ライくんて友達じゃないかな?
半分正直かな?たぶん。
白梅東公園に着くと、私服姿のライくんが来た。
「おーい!リリコー!こっちこっち!」
手を振ってるライくんの元へ駆け寄ると、
「早く行こう!とっておきのお出迎えだから!」
満面の笑みでウキウキ楽しそうなライくん。
「そうだねっ。私も楽しみだなぁ。」
にっこり返せた!よかったぁ!
私服姿のライくんの笑顔がまぶしすぎて返せなかったかもしれなかったよ!
「じゃあ行こっか!」
そういってライくんは私の手をつないだ⁉︎
反射神経で手をバッと離しちゃった!
するとライくんも場を理解できたらしく、
「ご、ごごご、ごご、ごごごめんっ!俺、小さい頃よく母さんと手をつないでたからウッカリ…。」
綺麗な顔が真っ赤に染まり、手をブンブンと振る。
「わっ私こそ離しちゃってゴメンっ!」
私も手をブンブンと振る。
それを見ていたらしい近所のおばあさんはニコニコしながら「青春ねぇ。」という。
「「‼︎」」
私たちは恥ずかしくなって下を向きながら歩いて行く。
ライくんは下を向きながらも神社への道がわかるみたい。(登下校で通ってるみたいだしそれくらい分かるか!)
歩いていくと地面が階段になった。
「き、気をつけて。」
顔を上げるとライくんがまだ気まずそうな顔をしてこちらを向く。
「だ、大丈夫だよ‼︎さっきのこともう気にしてないから!」
精一杯の笑顔で返すとライくんも安心したらしい。
そして階段を上がると、梅の木が道の左右にズラァっと植えてあってどれも綺麗な花が咲き誇っている。
奥の方には赤い鳥居が連なっている。
「俺の家の庭の一つだよ。」
そう言われたのでびっくり!
庭が広いのもびっくりだし、「庭の一つ」ってことは何個もあるんだよね⁉︎
改めてライくんの家がすごいことがわかった。
多く連なる鳥居をぬけると綺麗なお庭と道が現れた。
お庭には川が流れているしここにも梅の木がたくさんある。
道を進んで行くと、巫女さんが両側3人、計6人いて、
「「「「「「おかえりなさいませ、ライ様。いらっしゃいませ、リリコ様。」」」」」」
美人な巫女さんたちは息ぴったりにそう言い、頭を下げた。
えぇっ!
なんか「リリコ様」って呼ばれるのに慣れてなくて、緊張しちゃう。
なんてことないみたいにズンズン進むライくんに急いでついて行く。
そしてやっと現れた本日のメイン、神社!
大きくずっしりとした和風の建物で、息をすることを忘れるくらい綺麗だ。
「ただいま〜。例のリリコ、連れて来たよ〜。」
ライくんがそう言うと奥の方からダダダっと美人な女の人が走って来た。
着物を着ていてライくんにそっくりな顔立ちだからお母様かな?
ライくんのお母さんらしき人は
「よくおいでなさいました、リリコさん。私はライの母、綾女(アヤメ)と申します。リリコさんのことは息子からお伺いしました。それでは神社にお入りください、中でライのお父様がお待ちです。」
上品にゆったりと告げる綾女さんに見とれてしまうが、急いで靴を脱ぎ、新鮮な神社に足を入れる。
広い(広すぎる)神社内を3分ほど歩くと、一番奥の部屋にたどり着いた。
綾女さんがふすまに「リリコさんがおいでなさいました。」と言うと中から「入ってくれ。」と低い男性の声が聞こえた。
3人で中に入るとそこには大きな鏡があり、その前には30代ぐらいの男の人がいた。
ZA・神職って感じの服を着ている。
「初めまして、ライの父、和(やまと)だ。息子からリリコさんの話は聞いている。すでに私の話も聞いていると思うが勾玉についての話をしておこう。その勾玉は『青玉』という勾玉だ。そのほかにも『赤玉』と『緑玉』と『黄玉』、『白玉』があるのは知っているか?」
え?ほかにもそんなにいろんな種類があるの?
「いいえ。そこまでは知りませんでした。」
答えると、
「そうか。では勾玉について教える。この勾玉はこの世に二つと存在しない幻の勾玉だ。それぞれ色がついており、選ばれた者たちに盛大な力を授けることとして語り継がれているものなんだ。5種類あり、全てを集め、『光星神宮』と言う場所に全ての勾玉を授けると『虹玉』という勾玉ができる。それを使うと願い事が3つ叶うと言われている。願いを叶え終わるとまた5つの勾玉となって世界に散らばるんだ。」
そうだったの?てことはこの勾玉、ヤッバイやつじゃん!
なんで桜ちゃんが持っていたんだろう…。
「リリコさんはどこでその勾玉を手に入れたんだ?」
これは正直に答えた方がいいよね?
「私、この前引っ越してきたんです。引っ越す前に友達からもらったんです。」
言うと、もっと聞いてきた。
「なんて言う友達?」
「さ、桜ちゃんです。」
そう言うと、
「桜っ⁉︎」
和さんが大声を出す。
話を聞いていた綾女さんまで「桜っ?」と身を乗り出している。
そして和さんは私の隣に座っていたライくんをにらむ。
「ライ!なんで!なんで父さんに伝えなっかったんだ!」
思いきり叱られたライくんはくちびるを噛みしめる。
「…だって…!」
悔しそうに告げたライくんを無視して和さんはライくんのほおをパシンと叩いた!
ドッと倒れたライくんに私は近寄ろうとする。
それを見た綾女さんはライくんのことなんて気にもせず、私の方へ近寄ってきた。
「リリコさん、せっかくきてくださりましたが今日はおかえりください。また今度機会があったらお呼びいたしますので…。今日は家まで巫女が送ります。お気をつけておかえりください。」
「…は、はい…。」
ライくんを助けたいけれどこれ以上近寄れない空気だ。帰るしかない…。
ふすまを開けるとそこにはもう巫女さん1人がいた。
綾女さんにうながされて神社の入り口まで行った。
靴を履いてライくんときた道を歩く。
今でもライくんのことが心配だ。
ライくんのことを気にしているのがバレたのか、巫女さんは
「さっきのライ様のことはお忘れください。」
巫女さんに優しい口調だけど厳しく言われた。
その後ライくんのことをずっと心配していたらもう家についていた。
「ありがとうございました…。」
巫女さんに一礼してから家に上がる。
「おかえり〜!リリコ!今日の晩御飯はリリコの大好きなうどんよ!」
そう言われてもなぜか嬉しくない。
「…ありがとう。」
元気に答えたいのに言葉が重くなっちゃう。
「どうしたのリリコ。なんか嫌なことでもあった?」
うん。助けたかった。なのに助けられなかった。
そんな自分が情けない。
でもそれだからといってお母さんを心配させたくなんてないんだよね。
「ううん。大丈夫だよ。」
笑顔を作って言葉を返してからすぐさま自分の部屋へ向かった。
なんか変だな。
私、ずっとライくんのこと心配してる。
明日は日曜日。学校にはいけないからライくんとは会えない。
…いや、危険だけど会える手段はある。
行くんだ、また神社に。
怖いけど、緊張するけど、私の大事な友達だ。
そしてライくんは悪くないっていうんだ!
私はその夜、綺麗な満月に向かってそう誓ったのでした。
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