4 ライくんのヒミツ

放課後になった。

「よし!」

覚悟を決めてライくんの教室1–3へ向かう。

「失礼しまーす…。」

扉をガラガラっと開けて中に入ると教室はシンとしていて肌寒い。

黒板の前にはライくんが立っている。

「あ。来た来た!」

ライくんはニッコニコで迎えてくれた。

「自己紹介がまだだったね。俺の名前は黒川刕くろかわ らい。ライって呼んでね!」

自分の名前を黒板に書くなりそう告げた。

「君の名前は?」

そう聞かれたので、

「え、えっと、辻堂リリコです!」

やった!ちゃんと言えた!

「リリコちゃんかぁ。かわいい名前だね!」

「えっ‼︎」

男の子に「かわいい」って言われたり、下の名前で呼ばれるの初めてかも…。

「リ、リリコでいいよ!」

赤くなって慌てて手を振る。

そうするとライくんは「わかった!」と笑って

「じゃあ本題入るね。」

すぐにライくんは真剣な声でそう言った。

「リリコちゃんのつけてた勾玉のネックレッス、いま見せてくれる?」

「え?いいけど…。」

勾玉を差し出すと、ライくんは急にその勾玉に白い人型のお札を力強くバシィッと貼り付ける。

「光再生起死滅末…」

いきなり呪文を説き始めた。

「…再生呪格・真‼︎」

最後に大きな声で呪文を説き終わると…

ピカッ!

勾玉が光って宙に浮いた!

だがあっという間にライくんの手に落ちた。

「…まさか本物とは…!」

ライくんは目をまん丸にして勾玉に目を向ける。

私も頭の中が真っ白だ。

するとライくんが近寄って来て、

「リリコ!お前にずっと会いたかった!俺を手伝ってくれるか⁉︎」

そう言ってギュッと私の手を握る。

「え、えええええええええええぇっ⁉︎」

何が何だかわかんない!

どうゆうこと⁉︎

「あっ!ごめん。いきなり言われても意味わかんないよね。」

ライくんは握っていた私の手をやっとはなしてくれた。

「びっくりするかもしれないけど…みんな!おいで!」

そう言ってライくんはパチンと指を鳴らした。

すると

「「「「「「なんですかぁ?」」」」」」

そう言って出て来たのは…まさかのオ・バ・ケ!

私、私っ怖いものとかオバケ苦手で…

「ギャァ〜っ!!!!!」

 クラリと目まいを起こして失神してしまった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

…ん?

目を覚ました私は硬い学校の机を2つ組み合わせた所に寝かされていた。

起き上がると私の腕に何かがついている?

見てみると…包帯⁉︎

私、ケガでもした⁉︎

包帯はどこかにつながっている。

その先を見てみると、すぐそこに包帯ぐるぐる巻きのアイツ!

「ミイラ」がいた!

「フギャァー!」

「…あ!待って!ライに起きたって言わないといけないから…。」

シュルシュルシュルシュルッ

逃げようとすると私の手足は包帯でぐるぐる巻きにされて動けなくなってしまった。

「ギャー!やめてぇ!助けてくださいぃぃ!」

大声を上げると、ガラガラっと教室の扉が空き、ライくんが入って来た。

そうするとミイラは私の手足の包帯をほどした。

「あはは。やっぱりびっくりしちゃったか。君、失神しちゃってさ。もし起きたら教室の外に逃げて俺が説明出来なくなっちゃうかなって思ったからミイラに見とけって頼んだんだ。ごめんね!」

そう言ってペコリと頭を下げてくれた。

「あのっ!これ、本物のオバケなんですか?」

なーんてね。ただの仮装でしょって思ったけど…

「うん。本物だよ。」

そう返されてまた失神しそうになっちゃった!

「ええ⁉︎」

「じゃあ紹介するね。みんな出て来てー。」

すると5人のオバケが教室の外から入ってきた。

ポカーンとしている私を無視してオバケの自己紹介が始まる。

最初は私のそばにいたミイラが話し始めた。

「僕はミイラのムーです。よろしくね。」

包帯のせいで顔はしっかり見えないけど、穏やかな雰囲気のミイラだ。

次に髪が蛇のあのオバケ。

「アタシはメデューサのナナ!よろしくっ!」

「これって目を見ると石になっちゃうヤツじゃないでしたっけ⁉︎」

私が言うと、

「ああ、よく知ってるね。大丈夫。俺がその技を封印してるから。」

ライくんがそう言うので恐る恐る見ると、確かに石にならない。

美人で目がくっきりしている気が強そうな子だ。

さっきライくんが言ってた「封印」ってのも気になるけど…

次にお札を貼ってダボダボの服を着た男の子。

「僕はキョンシーのリィ!よろしくねっ!」

元気そうに笑う姿はなんか怖いです…。

ヤンチャな感じもするけど綺麗に髪は整っている。

「あ!僕、身の回りのものは綺麗にする癖があるんだよね。」

私の気持ちも読み取れちゃうあなたがさらに怖くなってきましたから!

心の中でそう思ったらリィくんは口をへの字に曲げた。

そんなのを無視して自己紹介してきたのは背が高いけれどとっても可愛らしい女の子。

「セイレーンのセレナです〜。よろしくです〜。」

眠そうに言われたらこっちも眠くなってきた。

「セイレーンって歌って眠らせるオバケですよね?」

私が言うとセレナちゃんは、

「そうなんです〜。歌いたいんですけど歌うことさえライさんに封印されてしまいました〜。」

悲しそうに言うセイレーンにライくんは苦笑い。

次に大きな黒いフードをかぶって、それまた大きなカマを肩に担いだ男の子が言う。

「死神のジンだ。」

シンプルな説明で終わったのでライくんが、

「こいつは話すのが嫌いでね。人と関わるのさえ苦手みたいなんだ。許してあげて。」

「う、うん。」

そして最後にオバケと言ったらアレのふわふわ宙に浮くやつ!

「初めまして!幽霊のサナよ。よろしくね!」

物語の主人公みたいな明るい性格と真面目そうな顔立ち。

でもやっぱり下半身はなくて、ふわふわと浮いている。

「以上。俺が封印しているオバケたちです!」

ライくんがそう言ってもまだ私の脳は理解をしていない。

「どうゆうこと?」

尋ねてみると、

「俺ね、神職で結構えらい人の息子なんだ。で、父さん見てるうちに『かっこいいなぁ』『僕もあんな風になりたい』って思えてきて、どうしたらなれるか聞いたんだ。そしたらオバケを封印できるようになれってこの人型のお札を100枚ぐらいもらった。俺ん家の神社にいるオバケたちを片っ端から封印しようとしたけどうまくいかなくて。何回も修行して封印できたのがこの6匹。んで5匹以上封印できたら透き通った青い勾玉見つけてこいって言われて、もしそれを身につけている人がいたらそれは選ばれし者だ、連れてこいって言われたんだ。それが君、リリコなんだよ。」

やっと全てが理解できた気がする。

「でも私が選ばれしものってどうゆうこと?」

「この青い勾玉…『青玉』は選ばれた人にしか身につけられないんだ。って言うか、どこで見つけたんだ?この青玉。」

「えっと…お引越しする前に友達からもらったの。」

「友達の名前は?」

「さ、桜ちゃん。」

そう言った瞬間

「桜っ⁉︎」

ライくんは信じられないものを聞いたみたいな顔をして桜ちゃんの名前を口にする。

「どうしたの?」

桜ちゃんのこと知ってるのかな?

聞いて見たけど

「…いや、なんでもない。」

さえぎられちゃった。

「それより、リリコにやってほしいことがある。」

「やってほしいこと?」

ライくんはオバケたちを見回してこう言った。

「君は本当に選ばれし者なのかをテストさせてもらう。」











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