3 新しい中学校生活

次の日の朝。

ジリリリリリッ!

うるさい目覚まし時計をパシン!と叩き、二度寝をしようとすると、下からお母さんの声が聞こえる。

「リリコ!中学校遅刻するわよ!」

その言葉を聞いて、はっと思い出す。

今日は初めての中学校だ!

布団からガバッと起きて、さっそく新品の制服に袖を通す。

胸のところには深い赤のリボンがついていて、ブレザーのポケットには金色で学校の校章、梅の花の形が縫われている。

膝下ぐらいまであるスカートは青と黒のチェック柄。

この学校の制服はとってもオシャレ!

そしてこっそり桜ちゃんからの勾玉ネックレッスを首に下げる。

学校ではアクセサリーを持ってちゃダメだけど、なんかつけないと桜ちゃんと離れて行ってしまいそうだから秘密でつけることにしたんだ。

最後にいつものピンをつけて、着替え完了!

ルンルン気分で一階に降りると美味しそうなクロワッサンがテーブルにのっているではありませんか!

「お母さん、おはよう!このパンどこで買ったの?」

お母さんに尋ねてみると、

「おはようリリコ。それは近くのパン屋で買ってきたのよ。近くにパン屋があるのは便利だわ。」

「そうなんだ!じゃあ早速いただきまーす!」

椅子に座ってクロワッサンを手に取り、お口をパクリ!

外はパリッと、中はしっとりとしていて噛むたびにバターの甘さが出てくる。

「美味しい!とっても美味しいよ!今まで食べたクロワッサンの中で一番美味しい!」

「それは良かったわね。でもそれより学校遅れるわよ?」

反射神経で壁時計を見るなりクロワッサンを口に押し入れ、桜ちゃんがくれた巾着をバックに押し込み、そのバッグを持って

「いってきまーす!」

玄関を開けて学校に走って行った。

通学路は梅の花満開の木がずらり。

ちょうど花が散る頃だから、風が吹くとずわぁっと落ちてくる。

「うわぁ!」

頭に桜の花びらがたくさんのっかっちゃった!

ペッペッと頭から花びらを落としながら走っていたらあっという間に学校についた。

さあ、1日頑張るそー!

気合を入れて校門をくぐった。

すぐさま校舎へ向かい、壁に貼ってあるクラス表に目を向ける。

思ったより生徒数多いな。

クラス表を見ると、私は…1–2か。

学校の入り口の前にはキレイな花壇が置いてある。

「後で来たいな…。」

そう思いながら靴箱に靴を揃えていれ、上履きに履き替える。

陽の光で温められた明るい廊下を通り過ぎ、1–2のクラスに入る。

「お、おはようございます!」

気合入れて言ってみたけど、クラスでおしゃべりをしていた人たちは私の方チラリとみて、すぐに会話に戻ってしまった。

これは友達作戦失敗デスカネ…。

でもまだ諦めないぞ!

一旦黒板に貼ってある席順を見て、自分の席に座る。

隣の女の子におはようと言っても返してくれなかった。

「はぁぁぁぁ…。」

みんな新学期だから忙しいのかな?

「しょうがないか」ってしょんぼりしていると、先生が入ってきた。

「はーい皆さーん。おはようございます。この1年2組を担当させて頂きます、佐藤友紀と申しますー、佐藤先生って呼んでねー。」

いかにも穏やかそうな佐藤先生はゆっくりとクラスを見渡す。

「じゃ出席とりまーす。」

そういって出席確認が始まった。

「青木さん。」

「はい。」

「坂本さん。」

「はぁい!」

次々と呼ばれていく。

「辻堂さん。」

私だ!

「は、はい!」

できるだけ元気に手を挙げた。そうすると、

「元気のいい挨拶だねー。」

と言われた。

嬉しい!やったぁ!

先生に褒められただけだけど、なんかやりきった気分!

新しい中学校生活のスタートは元気にはじめられた!

そのあとは始業式をして、学校説明。

あっという間に2時間目がおわちゃった。

今は業間休みだからやることないな、と思って体育館の近くに行ってみた。

そうすると、

「キャーッ♡」

「ライくんかっこいい!」

「頑張れー!」

女の子たちのグループの声が聞こえた。

そっちの方を見ると4、5人くらいの女の子たちが騒いでいる。

なんとなく友達を作ろうと思い、近寄って

「何かあるんですか?」

と聞いてみた。そうすると、

「ライくんよ!あそこにいる今バスケのボール持ってる子!」

女の子たちが指差す方を見ると、バスケをしている男の子がいた。

その子、ライくんは何人もの敵を通り抜け、見事にシュート!

さっきは動きが早くて見れなかったけど、よく見ると整った綺麗な顔立ちの男の子だ。

サラサラの黒髪で、綺麗にまとまっている。

TEA・イケメンって感じだな。ま、興味はないけれど。

その後もバスケの試合を見ていたけど、相手のチームにポイントはとらせず堂々勝利!

それもポイントを入れたのは大体そのライくんって子だ。

「すごかったな…。」

独り言を呟きながら教室に帰った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

そのあと3、4時間目が過ぎていき、給食を食べた後、掃除をしてあっという間に昼休みになった。

「あっ!そうだ!学校の入り口の方の花壇を見に行こう!」

そう思って走った。


花壇に着くとそこにありえない人物がいた。

ライくんだ。

どう見ても業間休みに見たあの子だ。

ずっと見ていると、ライくんがこちらを向いた。

「君、花好きなの?」

そう聞かれた。

なんて答えたらいいのかわかんなかったから、

「は、はい。ま、まあ。あはは…。」

そう返した。

「この花ってキレイだよね。よく手入れしてあるし。俺さ、バスケやってるんだけどたまにはこういう風に花を見るのもいいね。」

ニコッっと笑ったその顔に思わず見とれてしまう。

「そう、ですね!わぁあ!」

そうですね、って返そうとしたら近くの石につまづいちゃう。

その反動で隠してた勾玉ネックレッスが出てきちゃった!

すぐに隠そうと思ったけれど、いつの間にか目の前にいたライくんはネックレッスを引っ張る。

「これ、君の?」

ライくんが真剣な顔で見つめてくる。

私はせいいっぱいいにコクンとうなずいた。

ヤバイ、バレちゃったかな…。

怒られるのを覚悟すると、ライくんが急に

「今日の放課後、俺のクラスに来てくれる?」

そう言った。

「う、うん。いいですけど…?」

あいまいに答えると、

「やったあ!じゃあ俺のクラス、1–3に集合ね!」

そう言ってライくんはヤケに嬉しそうにクラスに帰って行った。

え?どういうこと?

頭が?でいっぱいになってきちゃった。

そうして私とライくんは秘密の約束(?)をした。

何だろう、放課後に何かある予感がする!

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