2 白梅町

プシューッ。

『終点、白梅町ぃー。白梅町でございまーす。』

アナウンスが鳴り響き、電車のドアが開く。

駅の階段を登って、あり得ない光景を目にした。

道沿いには満開の梅が咲き誇っていて、近くには川が流れている。

涼しい風が流れてきて前住んでいた東京とは大違い。

「キレイ…。」

思わずそうつぶやいた。

「ほんとねぇ。今はちょうど春だから花が咲く季節なのねぇ。」

お母さんも見とれちゃってる。

そのあと歩きで新しい家に向かった。

「あ。ここよ。リリコのいく中学校。」

そういってお母さんが指さした方を見ると、古びた小さな学校があった。

だが校庭には、大きく立派な梅の木があり、花びらが風で散っている。

「なんていう中学校なの?」

「赤崎中学校よ。」

中学校を通り過ぎて、そんなことを話しているとあっという間に新しい家に着いた。

外見は、東京に立っている家とあんまり変わらない。

「さ。中に入りましょうか。」

「うん。」

中は新鮮な新しい匂いがした。

壁沿いにはダンボールがいくつも置いてある。

家の中をお母さんと探索していると、

「ここの部屋、リリコの部屋にしましょう。」

私の部屋は二階となった。

「お母さんは部屋の掃除と整理をするから、リリコはあなたの部屋の整理をしちゃいなさい。机と椅子、ベットとかは業者さんに頼んで置いといてもらったわ。」

「はーい。」

自分の部屋に行ったらみんなのプレゼントを開けようっ。

弾んだ気持ちで部屋にプレゼントを運んだ。

部屋にたくさんのプレゼントを置いて、一つずつ丁寧に開ける。

キーホルダーや手作りのぬいぐるみ、折り紙や手紙などがたくさん入っていて、どれもこれも宝物だ。

そして最後に気になっていた桜ちゃんからのプレゼント箱を開けると手紙と手のひらに乗るような小さい青色と赤色の巾着が2つあった。

そっと手紙を開けると、

【リリコちゃんへ

 いつも遊んでくれてありがとう。

 リリコちゃんがお引越しするって知った時はとってもびっくりしたよ。

 寂しいけど、リリコちゃんとの友達の印にとっておきのプレゼントをあげるね。

 でも絶対にピンチになるまでは開けちゃダメ!

 巾着のままいつも持ち歩いてね。

 あ、でももう一つの巾着は開けていいよ!青い巾着の方ね!

 お引越ししても頑張ってね。

 ずっとずっと友達だよ!

                                  桜より】

と書いてあった。

嬉しい気持ちと寂しい気持ちがごっちゃになって涙が出てきちゃう。

「ありがとうっ。」

遠く離れた桜ちゃんに向けてそう言った。

それから青い巾着だけ開けると、中に勾玉のネックレスがあった。

水色で少し透き通っててキレイ。

それを眺めながら明日のことを考えた。

明日からは中学1年生だ。

不安なこともあるし、お母さんにも迷惑はかけたくない。

特に一番心配なのは友達ができるかどうか。

引越しする前は自分でなんとかできるでしょ、とか思ってたけど、いざとなると緊張してくる。

でも桜ちゃんたちが応援してくれてるんだもの、頑張らなきゃ!

新しい部屋の窓を開けて、

「頑張るぞぉー!」

自分の最大の声で綺麗な青空に向けて叫んだ。

なんかスッキリしたな。

友達づくりも頑張るから、見ててね桜ちゃん!

桜ちゃんがくれた巾着をギュッと握ってそう誓った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ふふ、あの子元気出したみたいね。」

片付けの一休みをしていたリリコのお母さんは上の会から聞こえた「頑張るぞぉー!」という声に微笑んだ。

「友達づくり、頑張ってね。あの子、私に迷惑かけないようにずっと1人で悩んでいること、お見通しなんだから。お母さんは応援しているわよ。」

お母さんは二階を見つめ、そう言ったのでした。

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