オバケ封じ
@kurage-kurione
1 お引越し
「じゃあね、リリコちゃん!」
「手紙送るからね!」
「電話もするよ!」
「元気にしろよ!」
「また会おうね!」
駅のホームで友達がたっくさんのプレゼントと、住所、電話番号が書いてある紙を渡される。
春休みの最後という日にお母さんのお仕事の都合で急に引っ越すことになったんだ。
新しいところに行って新しい体験をするのはどちらかというと好きな方だ。
でも。
こんなこと信じたくない。
いやだいやだいやだいやだいやだっ!
みんなと離れるのはとっても辛い。
「ねぇ、お母さん。やっぱりお引越しするのいやだっ!私みんなとここにいるっ!」
そう言ってみたものの、
「リリコ。もう6年生でしょう。あと少しで中学生よ。わがままを言わない!」
リリコのお母さんはきつく叱った。
なんかいやだって気持ちよりお母さんへの怒りの気持ちの方がふくらんできた気がする。
「もうっ!おかあっ…」
「リリコちゃん。」
私がお母さんに反論しようとしたら友達の桜ちゃんが私の手を握った。
「大丈夫だよ。電話も手紙も書くから。お引越ししてもその学校で楽しいことがいっぱいあるかもよ?」
桜ちゃんは精一杯の笑顔を私に向けた。
「だからずっとずっと、友達でいようね。」
その言葉に涙が溢れてしまった。
「ありがとうねぇ、桜ちゃん。リリコ、電車が来たからここでお別れよ。」
「…うん。」
電車に足を踏み入れようとすると、
「リリコちゃあぁんっ!」
後ろから桜ちゃんの声が聞こえて振り返る。
「私があげたプレゼントの中に秘密の袋が入っているから!もしもピンチになったら開けてみてね!」
ありったけの声で私にそう伝えた。
「リリコ!ドアが閉まっちゃうわよ!」
「うわっ!」
電車の中に引き込まれ、ドアが閉まった。
「じゃぁねー!」
かすかに聞こえるみんなの声。
私も窓の外へめいいっぱいに手をふる。
…うん。
頑張るよ、みんな。
私は強く手を握り、桜ちゃんたちがくれたプレゼント箱を見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます