第10話 決戦、お風呂大戦争
前回までのあらすじ、
シェアハウスの大浴場を我が物にしたカナタだったが、後から文句言われるのを阻止するために証拠隠滅してしまう。
だが帰宅した少女たちは己が一緒に風呂に入るべきだと主張。
血で血を荒らす頭脳戦へと傾れ込んでしまい、平和的解決のためにルーレットで決めることになった。
「意義あり!」
某番組で見たことのあるルーレットがリビングに運び込まれたが、その異様な光景に「待った」をかけるものがいた。
「イカサマをしているかもしれない、確かめてもよろしくて?」
キリッと言い放ったエレノアに、少女たちは顔を見合わせる。
「確かに……」と言いたげな衝撃を各々で感じているが、景品になったカナタだけは「この茶番早く終わらないかな」とつくづく思う。
サウナ後は眠いのだ。
イカサマの有無を確認したエレノアは、付け入る隙のなさに落胆。
ここで細工をhこ施すことはそう難しくない。
だがバレずにやれるかは別問題。
ならば身の潔白を証明し、他人の揚げ足をとるまで!
「問題は誰が回すか……ね」
足を組んで優雅にソファに座る玲奈は、ルーレットの欠陥性を指摘する。
このレーレットは人力で回し、ダーツで射るタイプ。
だがそれでは複数人がブッキングする状況になってしまう。
それではだめだ。
一夜の過ちを犯すためにもタイマンは必須。
他の女に渡すわけにはいかない。
「ねぇ、これいつまで……」
「アンタは黙ってなさい」
何で怒られなきゃいけないんだ。
そんな表情で棒立ちするカナタだが、元はと言えばコイツが元凶。
部屋の隅っこでうずくまるカナタを放置して、彼女たちは自身が勝つ手段を模索する。
(カナタに投げさせるのが一番公平)
(だけど彼はルーレットの回転くらいは見切れる)
(……チキってたわしに投げる可能性がある以上、それは許可できない)
(って、何でたわしがあんのよ! 邪魔じゃない、あれ!)
(そうみんなは考えるはず)
莉音の顔が不気味に歪む。
(たわしは回転をかければ遠心力で私の名前に切り替わる)
用意した人間にのみ許されたイカサマ。
(大丈夫ですよ、ちゃんとお世話してあげますから)
バレぬよう舌なめずりをする。
莉音は少し病んでいた。
「一ついいか、全員で入るのどうだ? ボクはそれでもいい」
つまり可能性がゼロになるくらいなら20%でも欲しい。
その発言を聞いた彼女たちの脳内計算で導き出された結論は、アリ。
独占したい。
けれどチャンスが消えるくらいなら全員で、それは真っ当だ。
1か100で賭けるより、10でもいいから欲しい。
だがそれはある条件を満たした人間にのみ許された限定条件。
そう、巨乳かどうかだ。
「私はいいですよ! みんなで入ったほうが楽しいですって!」
現状、一番デカいのは莉音。
故にこのように余裕がある。
並んでも負けることがない、むしろ引き立て役にさえできる。
だからこそ彼女が拒むことはない。
そして2番目がこの提案をした美夜。
彼女もまた凶悪なものをぶら下げているため、他人と比較しても遜色ない。
何より彼女は今の今まで爪を隠してきた。
普段ガードの固い少女が見せる白い肌。
(この時のための布石だったのか!)
アドバンテージを持った者が手を組んだ。
あの二人が横並びになればカナタは余裕で窒息できる。
英数字後半の強さは伊達じゃない。
だがこの提案に最も衝撃を受けたのは絶壁のエレノアではない、渚沙だった。
彼女もデカい、だが見方を変えればだらしない身体。
剣道によって鍛え抜かれた筋肉質な肉体の上に乗るブツと比べれば見劣りする。
彼女は5人の中で最も中途半端であると言えよう。
「……私は反対」
渚沙がそう口を開いたそのとき、
「逃げるなああ!」
抜き足差し足で離脱しようとしていたカナタの姿があった。
「早く取り押さえて! 景品が逃げる」
「逃さぬ」
即座に捕まり、紐で縛り上げられる。
ご丁寧に指の一本ずつ縛り上げられたそれは、生半可な力では引きちぎれない。
「やめろー! 離せー!」
こんな所に居られるか、俺は逃げるぞ! と言わんばかりの大暴れ。
それもそのはず。
サウナ後2、3時間たった今が最も睡眠に適している。
ここを逃せば絶妙に寝られない時間が訪れてしまう。
だが彼女たちはそんなことお構いなし。
うるさい彼に猿轡を噛ませて黙らせる。
「モゴモゴ」
終わらないデッドヒート。
白熱する口論。
終いにはキャットファイトまで繰り広げられる。
譲れない戦いの最中、景品である彼は寒い廊下に追いやられて湯冷していた。
「モゴモゴ」
今日はとても、冷える日だった
昔助けた女の子が自称『許嫁』を名乗る美少女になって結婚を迫ってきた。 みつる @hamukara
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