第21話 人生そのものがカントンくん

pm 7:40


「お泊まりなんだから、飲んじゃえば?」

「あうっ、そっそうだね、貰っちゃおうかなぁ」

カレンは冷蔵庫から缶酎ハイを持って来て小阪に渡した。

「はい」

「あっありがとう」

「じゃぁ、あらためて乾杯!」

「か、乾杯」

小阪はお泊まりが決まり喉はカラカラ。

開けた酎ハイをグビグビと半分くらい一気に飲んだ。

「ぷはー、うまい!」

「コボちゃん、さっきの話なんだけど」

「さっきの?」

「絶対言わないでよ!」

あー!オモチャの事をカミングアウトする気だなぁ!今日は、無いから俺で慰めてくれってかぁ!

「い、言わないよ、誰にも」

「ヒナと涼くんと食事した後ね、絶対笑わないでよ!履いてたパンツが消えたの!」

「パンツ?」

オモチャの事だと考えてた小阪は、答えが違ったことにより動揺した。

「そうなの!トイレで脱いで失くしたとかじゃなくて、履いてるうちにスッと消えたの」

「えっ?それは...」

あー!!!剣崎さんといる時に、初めて召還したパンツだ!全然忘れてたぁ!って今もズボンのポケットに入ったまま?


小阪はズボンのポケットに手を入れてみた。


あー!持って来てる!

って事は、これっ間違いなくカレンちゃんの生パンティだったのかぁ!


「なにごそごそしてるの?」

「いや、車の鍵があたって痛いだけだよ」

「それよりちゃんと聞いてる?」

「聞いてる!白いパンツだよね!」

「えっ!なんでコボちゃん白いパンツだってしってるの?」

「あっいやぁ、パンツといえば白だなぁって...」

カレンが上目遣いで小阪の顔を覗き込む。

「まさか!」

「ままままさかだよ」

「この前お風呂覗いた?」

「覗いた?ないないないない!天に誓ってもないよ!」

「あー!なんなのー全然興味ありません的な発言!ちょっとショックぅ」

なんだ!なんだ!カレンちゃん酔ってきたのかなぁ?また俺に興味あります的な発言!

覗いていいなら言ってくれないと!

さっきはパンツで危うくばれるとこだったけど、この展開はやっぱり俺に惚れてるやないかぁーい!


小阪はまたも、酔った女の子の言葉を鵜呑みにして妄想と股間を膨らませるのであった。


pm8:15


二人ともだいぶ出来上がってきたようで、ただでさえ噛み合わない会話がさらに噛み合わず、しかし楽しい時間は続いた。


「コボちゃんて彼女いないの?」

「いっいないよ」

生きてきた時間全部彼女いません!

俺の初彼女になるしかないよねぇ。

「ふーん、そうなんだ、好きな人いる?」

「好きな人はいるよ」

そう!あなた!あなたですよ!

「私もいるんだぁ、言っちゃおうかなぁ」

「そ、そうだね!言ったらカレンちゃんなら絶対想いは伝わるよ!」

コボちゃんは僕ですよ!あなたの愛する男はここにいますよ!さぁ思いきって言ってごらんよ!

「あのね、コボちゃん...私..」

「うん」

小阪の心臓は自分でもわかるくらいの音をたてて、今にもマンガのようにハートが飛び出す勢いだ!

「私...好きなの...」

「...」

白目をむいてぶっ倒れるくらいの衝撃が小阪を襲う。

キタ━(゚∀゚)━!

キタ━(゚∀゚)━!

キタ━(゚∀゚)━!

これが告白ってやつかぁ!

「しっしっ知ってたから」

「えっ?気付いてた?バレちゃってたかぁ」

「わ、わかりやすい性格だね」

「ハハ、もうバレちゃってるなんて恥ずかしいよ。涼くんに会った時から一目惚れだったから」

「えー!」

また白目をむいてぶっ倒れたあとに象に踏みつけられるほどの衝撃が小阪を襲う。

「そんな知ってるのに驚いたふりしないでよ、照れるから」

「涼くん?ヒナちゃんは知ってるの?」

「うん、ヒナは大事な友達だしちゃんと言ったよ。カレンには負けないって言われたけどね」

なんて勘違いしてたんだぁ!俺なんか好きになるはずないのは最初からわかってたのに、変な期待して、妄想して、

でもでもカレンちゃんを想うこの気持ちの整理はつかない!


やっと見つけた彼女いない歴脱出の出口は、とても小さく、妄想で膨らんだ今の小阪では到底抜け出すこともできず、

暗く湿った人生の中でカレンという唯一の光が内側にいる小阪を照らしただけであった。

また童貞という皮を被り、

ひっそりと暮らす日々が待っている。

いつか一皮剥けて大人になる日がくるのか今後の小阪に期待しよう。






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