第20話 ピンチはチャンスくん

pm 6:30

会社から左遷をうけた小阪は肩を落として帰宅。自室に入りベッドに倒れ込む。


「はぁぁ、どうしよ」


大きなため息をついて、仰向けに天井見ながら考える。


「こんな事も魔法で解決とかならないかなぁ、はぁー」


自分自身の日々の努力の足りなさと、仕事の出来なさに会社から左遷をうけたが、小阪は自分自身に問題があるとは一ミリも思っていない。

なんなら魔法でどうにかなるんじゃぁ?的な発想しか出来なかった。


ブーブー


「電話だ!誰だよぉ」

カレンちゃん!!!

「もっもしもし、もしもし」

「アハハ、もし多すぎ」

「あぁ、どうしたの?」

「コボちゃん今暇?」

「うん、大丈夫だけど」

「よかった!家遊び来ない?」

「えっ?行く、行くよ!」

「じゃぁ、待ってるから来てね」

「わかった!すぐ行くね」

なんだぁカレンちゃん!俺に会いたいのか!

もう光の速さで飛んでくからねぇ!


小阪はベッドから飛び起きて、財布と携帯をポケットに入れ、走って車に飛び乗った。


pm7:05


ピンポーン


「はーい、鍵開けるから待ってね」

インターホン越しにカレンの可愛い声がする。


ガチャ


「いらっしゃい、あがって」

「お邪魔します。」


前回と同様に甘い香りに包まれる。


あーカレンちゃん家いい匂いだなぁ

今日もめちゃくちゃ可愛いし

今日は俺に何の用事ですかぁ?

告白されたりなんかして!キャーッ


小阪はちょっとお呼ばれしただけで、テンションマックス!妄想マックス状態になっていた。


「コボちゃん、この前お金置いていった?」

「いやっ、置いていってないよ」

「なんか三万円と小銭が置いてあったの」

「置き忘れたんじゃない?」

「コボちゃんじゃないのかぁ?なんか一昨日から変な事ばっかり起きて、今日1人だと少し怖くて、ヒナ誘ったら用事あるみたいだしで、コボちゃん暇してないかなぁって」

「何があったの?」

「んー?とりあえず座って」

「はっはい」

「コボちゃんなんか食べた?」

「いやっ仕事から帰ってすぐだったから」

「じゃぁ、夕飯用事するから食べていって」

「うん、ありがとう」

カレンはキッチンに行くと夕飯の用意を始めた。


なんだなんだ!この展開!

新婚みたいやないかぁーい!


「今日の夕飯はキムチ鍋でーす」

カレンが鍋をコタツに運んできた。

「コボちゃん、お酒飲む?」

「あっ、運転だから」

あー!!!失敗したぁ!

お酒飲んだら帰れないから、

お泊まりじゃぁん!

カレンちゃんのお誘いを断ってしまったぁ!

「そか、じゃぁ私だけ飲んじゃお」

そう言って、カレンは缶酎ハイとペットボトルの水を冷蔵庫から持って来た。

「じゃぁ、コボちゃんはお水ね」

カレンは小阪に水を渡すと、缶酎ハイを開けた。

「とりあえず乾杯!」

小阪のペットボトルに缶酎ハイを当てる。


ゴクゴク

「美味しいー」

旨そうに飲むなぁ、やっぱり俺も貰えばよかった。でも今さら言ったら下心丸出しだよなぁ...

「さぁ食べて食べて!」

カレンが小阪の取り皿に取り分ける。

「いただきます。うまい!」

「よかったぁ、辛さは大丈夫?」

「うん、ちょうどいいよ」

「コボちゃん辛さに強いんだね」

「普通だよ、ところで何があったの?」

カレンは少し不安な顔を見せる。

「なんか、コボちゃん帰ってからヒナ達とご飯食べて帰ってきたらさぁ」

「うん、何?」

「昨日8時頃帰宅したのね、帰ってお風呂入ってお風呂で歯を磨くんだけど、歯ブラシが無いの!コボちゃん帰った後に歯磨きしたから、絶対にあるはずなのに」

「えっ?」

「それだけならいいんだけど、コボちゃんと酔って帰って飲んだ水あるでしょ!飲みかけだから冷蔵庫入れておいたのに無いの!」

「ええっ!」

「これはあまり言いたくないんだけど...」

ヤバッ!全部魔法で召還したの俺じゃんか!

言いたくないよねぇ!大人のオモチャなんて!

小阪の広角が少しあがり、ニヤニヤ顔になっている。

「言いたくないことは、言わなくていいよ」

「今少しニヤニヤしたでしょ?ちゃんと話聞いてる?」

「ニッ..ニヤニヤなんてしてないよ!ちゃんと聞いてる」

「本当?誰か私のいない間に誰か入ったのかな?泥棒とか?怖いよぉ」

カレンは今にも泣き出しそうな顔をしてる。

「だっ大丈夫だよ!きっと酔ってたから間違って捨てたりしちゃったんだよ!」

「本当?そうかなぁ?じゃぁあのお金は?」


ん?たしかに他の物は俺が召還したけど、お金って?もしかしたらカレンちゃんは失くなるだけでリスクだらけだから、失くなった分をお金で補填されたってことかな?そう考えないと等価交換にならないし、俺のテレビとかゲームってどこにいってるのって感じだな。まだまだわからないことだらけだ!


小阪は無い頭をフルに活用して考えた。

悩んでいる小阪にカレンは気付き言った。


「コボちゃん?今日泊まって行く?」

「ふぇ?」

「だから今日お泊まりしてく?」

えーーーーーーーーーーーっ!

お泊まりしてく?お泊まりしてく?

お泊まりしてく?お泊まりしてく?

お泊まりしてく?お泊まりしてく?


してくーーーー!


「ハッハイ!」


今日会社を左遷された事など

全く忘れた小阪。

大ピンチだった中に訪れたチャンス。

ピンチはチャンスの絶好調男へとなれるのか?

小阪の想いは届くのか?

カレンの想いはどうなのか?

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