第17話 魔法使用料は等価交換くん

pm 2:30

剣崎の話しの内容にうつむく小阪。

小さなため息が小阪から漏れる。

しかし、そんな事はお構いなしに、剣崎は会話を続けた。

「コボくんの魔法のことなんだけど、魔法使ったのって一度切りかな?」

「はい、リップグロスが出てきたのが一回だけです」

「その事、詳しく教えてくれないかな」

「はい」

その時に起きた現象をこと細かく、覚えている範囲で剣崎に説明した。

「まだ、コボくんはこれといって代償を精算したわけじゃないんだね」

「昔の記憶っていっても、リップくらいじゃ、それほど、なくならないんじゃぁ」

「うん、それもあるけど、僕と違ってコボくんは実物をだせる。目に見えるものと見えないもの。この差はでかいと思う。」

「もしかしたら、お金とか出せるのかな?」

「そうだね、しかしお金の代償は明確かもね」

「代償が何かわからないと、怖くて使えないですね」

「確かにそうだね、リップ出たときにお金とか減ってなかった?」

「あっ!そうかお金減ってたらわかりやすいですね」

小阪は財布の中身を確認する。

「バーでお会計するときに、コボくんお金ないのかなぁって態度だったから、もしかしたらリップの代金をお金という形で精算したのかなぁってね」

「お金は減ってないですね、あの時はお金じゃなくて、持っていたレアカード...」

小阪は財布の中身を全部出して何かを探している。

「コボくんどうしたの?何かないの?」

「レアカード!」

「レアカード?」

「はい、限定販売で買ったレアカードが失くなってるんです!多分このカードは市場で出回ることないカードなんです!」

「あっ!そっか!もう市場で出回る事のないリップグロスの精算はレアカード!」

「えー!あれ手にいれる為に3日も並んで手に入れたのに!」

「わかったぞ!コボくんの魔法は等価交換なんだ」

「等価交換?」

「おそらく、手に入らないリップグロス三箱と限定販売のレアカードの価値が一緒なんだと思う。コボくんからしたらリップよりカードだけど、あの時買えないものを買ってあげたいって気持ちの価値がカードと交換されたんじゃぁないかな」

「じゃぁ逆にリップグロス持ってカード欲しいって願えばカード出てくるのかな?」

「おそらく出てくると思う。まだ確定じゃないから被害の小さなもので実験してみよう」

「えっ?実験」

「例えば百円持って、百円の物を出せたら成功なんじゃないか?」

「そっか!等価交換ならそうなりますよね」

「じゃぁやってみよう」

「はい」


小阪は百円を持って欲しいものを願う......。


「出ない...」

「金額変えてみよう」


小阪は千円を持って欲しいものを願う......。


「出ない...」


剣崎は一万円札を小阪に渡す。


「いいんですか?」

「ああ」


小阪は一万円を持って欲しいものを願う...。

指の模様は光りを出すことなくそのまま。


「出ないですね?」

「うーん、本当に欲しいもの願ってる?」


やばい!最近発売したレアカードを願ってたぁ!あれって一万円くらいじゃ買えない!

一万円で欲しいものってなんだぁ?


「もしかして、一万円以上するもの願ってる?」

「あっいやぁレアカード欲しいって」

「コボくん本当にカード好きなんだな、いくらあればそのカード手に入るの?」

「ネットで三万から取引されてて...」


剣崎は財布から一万円札を数枚取り出し小阪に渡す。


「十万円もありますよ!」

「いいから、使ってみて」

「はっはい!」


小阪は十万円持ってカードを願った...。


しかし、何も起こらなかった。


「十万でも足りないって事ですかね?」

「お金とは交換されないのかもしれないな、もしお金と交換で出てきたら、ただの買い物だよね」

「たしかに!売っていないものしか出ないんですかね?」

「そっか!そうかもしれない!絶対買えないものを願ってみて!」

小阪は十万円持ったまま、再度願う....。

またしても何も起こらなかった。


「ちゃんと売ってなくて欲しいものを願ってる?」

「はい!ちゃんと願いました」

「僕のお金じゃ駄目なのかな?コボくんのお金でやってみる?」

「あっいやっ、五千円しかないです」

「今日はカード持ってないの?」

「あっ!カードならあります!お気に入りのカードなんで一枚二万円ほどします!」

「それ、使ってみようよ!」

「えー!」

なんで大切なカードを使わなきゃならんのぉ!剣崎さんのお金で手に入ると思ってたのに!逆に剣崎さんが俺にお金くれれば俺の金になるじゃんかぁ!


「コボくんの大切にしてるものだからこそ価値があるんだよ!お金じゃなくて気持ちの価値が大事なんだよ!」

剣崎は真剣な顔で、熱く問う。


「わっわかりました!」


もうこうなったら、可愛いカードちゃんを使うしかない!頼む!出て来ておくれ!


小阪はカードを持って願う...。

小阪の指の模様が発光し、指が熱くなる。

持っているカードがスーっと消えた。

小阪の握った拳の中に欲しいものが姿を現したのだ!


指の模様が発光をやめ、指の熱も消えた。

小阪は握った拳をゆっくりと開く。


「コボくん!成功だ!何が出て.....」


小阪の開いた手のひらに白い布のようなものが現れた。


「コボくん?これは...」


小阪の手のひらにあるのは女性の下着だった。


「パンティ...」


小阪はこんな時にカレンを思いだし、カレンの下着が欲しいと願ってしまった。

本当はカードから違うカードを願っていたが本能のどこかでカレンの下着を願っていたため本当に欲しいものが出てきてしまったのであった。


無事実験は成功した。

だがカラオケボックスの一室でおっさん二人が出てきたパンティを眺める滑稽な姿。

相変わらず人として最低な小阪であった。


時は同じくして、

涼とヒナと食事を済ませたカレン。

「えっ?」

「どしたぁ?カレン?」

履いていた下着が一瞬で失くなり、その下着を小阪が持っていることなどカレンには知るよしもなかった。

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