第15話 魔法の事に興味津々くん
pm 1:42
予定通りカラオケに到着し、部屋に入り歌う事なく会話は始まる。
「フゥー」
剣崎が席に着いて大きなため息をついてから話始めた。
「まずはこの魔法の使い方だね」
「はっはい!」
小阪は生唾を飲んで剣崎の方を食い入るように見る。
「使い方はいたって簡単。相手に触れて好きになれって願うだけ」
「えっ?それだけ?」
「そう、それだけ。ただコボくんと僕の魔法は違うと見てるんだ」
「一緒じゃないんですか...」
落胆の表情を見せる小阪。
「うん、コボくんはリップグロスを出したでしょ?悪いとは思ったけど、バーで話してるの聞こえてたから」
「はい、突然でてきました。」
「まぁ、コボくんの魔法は置いておいて、僕の魔法の話しからするね」
「はっはい」
「僕の魔法はさっきも言った様に誰でも触れば好きにする事が出来るんだ、僕が初めて魔法に気付いた日のことなんだけど...」
ーーー 二年前の夏のことーーー
小阪と同様に剣崎も深夜に指が光り熱を出して模様が刻まれた。
当時剣崎は小説家を目指し日々奮闘中。
そんな中、このような出来事が起きた。
これはいったいなんなんだ?
剣崎は刻まれた模様を眺める。
疲れているせいか、小説の書きすぎで夢でも見ているのではないかと剣崎は思った。
翌朝になり指を見ると、模様がある。
夢や幻ではない、疲れているせいでもない。
しかし剣崎は特に気にする事なく、いつもと変わらない生活を続けた。
剣崎は飼っている猫に懐かれていない。
ご飯はもちろんトイレの片付けとお世話は剣崎の役目だ。
しかし、剣崎の母親にしか懐いていない。
陽だまりで寝ている猫を剣崎は抱き上げ、頭を撫でる。
「なんでお前は、僕に懐かないんだ。こんなに可愛がっているのに、もっと僕の事を好きになって懐いてくれたらもっと可愛いのに...」
その時、指の模様の線が青く発光して暖かくなった。
びっくりして猫を放り投げてしまった。
猫は床に上手に着地して、剣崎の足元へ
どうした?僕の足元に来てスリスリするなんて、初めてのことだ!
ゴロゴロ喉を鳴らしては僕を見上げて甘えたような鳴き声をあげる。
懐いている!僕の後を着いて離れない!
どうゆうことだ?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「飼い猫が急に懐いてきてね、しかも溺愛してるかのように舐めて毛繕いまでしてくるのをヒントに仮説をたてたんだ!」
「猫でも魔法が...」
「うん!人でも動物でも頭を撫でて好いて欲しいって願えば叶うんじゃないかってね」
「じゃぁ手当たり次第に頭を撫でたんですか?」
「いやぁ人間は難しいから、最初は近所の犬から試してみてさぁ、やっぱり成功したんだ!しっぽ振って凄い舐めてくるんだよ」
「頭を撫でるって難しいですよね、特に人は!」
「そうなんだよ!でもあることがきっかけで触って願えば魔法がかかるのがわかったんだ!」
「あること?」
「祖母が亡くなってね、礼服をクリーニングに出したんだよ」
「クリーニング?」
「そのクリーニング屋さんは近所で有名な看板娘が居てね、僕も密かに恋心を抱いていたんだよ。」
「頭撫でたんですか?」
「違うよ!これがきかっかけ!クリーニング出して、引き取りに行った時にお金払うでしょ?その時お釣りを貰う時に、手を添えて渡してくれた時に、多分心のどこかで好きになって欲しいって願望があったんだよ!指の模様が青く光って暖かくなったんだ。」
「それでどうしたんですか?」
「うん、彼女の目がうっとりとして、僕をジーっと見つめてるんだよ」
「本当なんですか!」
「本当だよ!その時お釣りを渡した手をギュッて握られて、いきなり好きですって」
「えー!そんな展開に!」
「もう、天にも昇る気持ちってこれだぁってね」
「じゃぁ、いきなり付き合ったんですか!」
「上手くいかなかった...」
「どうしてです?相思相愛じゃないんですか?」
「そう!ここが僕の魔法のミソというか、1つわかったことかな」
「どうゆうことですか?」
「次の日に、彼女に会いに行ったらね、昨日の事を覚えてないんだ」
「覚えてない?」
「ショックだったよ、実ったはずの恋が次の日には失くなるんだから、それから家に帰ると懐いてたはずの猫も懐いてない!それで、また仮説をたててね!」
「どんな?」
「好きになってるリミットがあるんじゃないかってね!」
「あー」
「また猫で実験したよ!そしたらリミットが八時間ってのがわかったんだ」
「八時間しか?」
「そう!僕を好きになる時間は八時間。そしてそれを過ぎたら全てなかったことになる!」
「それって八時間立つ前にもう一度、触れて願ってれば永遠にループするんじゃないですか?」
「僕も同じ事を思った!でも人は一度きりなんだ、猫や犬は撫でて願えば何度も大丈夫なのに、人は一度きりなんだ」
「試してみたんですか?」
「うん、クリーニングに違うスーツ出して、お釣りを貰えるように大きいお札出して、願ってみたけど、指は光らないし、彼女も営業スマイルのみ」
「残酷ですね」
「そうだね、しかも、それだけじゃなかったんだ!人の気持ちをコントロールした対価を僕が精算しないといけなかったんだ」
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