第13話 コタツで寝たら 臭臭くん

am 0:10

「カレンちゃん着いたよ」

寝ているカレンを小阪は揺すって起こす。

「うーん」

小阪はタクシー料金を払い、カレンの腕を持ってタクシーから降りた。

「カレンちゃん鍵何処にあるの?」

「待ってぇ、鍵ね」

カレンはバックから鍵を出して小阪に渡す。


えっと204号室だから二階だな、カレンちゃん、よちよち歩きだけど、歩いて行けそうだな。なんかキレイなアパートだなぁ、新築かなぁ。それにしてもだいぶ酔っ払ってるなぁ、覚えてるかなぁ?


小阪はカレンの腕を持ち支えながら階段を上り、なんとか部屋の前まで来た。


204号室!ここだ!鍵を開けてカレンちゃんの私生活の場に突入っすか!うぉぉぉ!テンションぶち上がってきたぁ!


ガチャ


玄関に入ると、甘い匂いに包まれる。中は真っ直ぐ廊下が伸び、正面にドア。右に2つドアがあり、左に1つドアがある。おそらく正面がリビングで右の手前のドアがトイレ。奥が脱衣場と風呂場と思われる。左が寝室になっている作りだと思われる。


「ただいまぁ」

靴を脱ぎ捨てて、カレンがよちよち正面のドアに向かう。

「コボちゃん、上がってちょーだい」

小阪は甘い匂いに包まれながらカレンの後を追う。

「おっお邪魔します。」

正面のドアを開けて中に入ると左にキッチンがあり、十畳ほどのリビングの真ん中にコタツが置いてあり、茶系の座椅子が2つ。

窓はベランダに出られる大きな窓とキッチンに光を入れる出窓があった。

正面の大きな窓に向かって右の壁に40型くらいのテレビと長めの白いテレビラック。

その隣に白いパソコンデスクがあり、デスクの上にノートパソコン。大きな窓の隣に観葉植物があって、全体的に白で統一された清潔感のある部屋。


「あー酔っ払ったぁ、お風呂入りたぁい」

カレンは冷蔵庫から水のペットボトルを2本出して、小阪に1本渡すと、持っている水のペットボトルを開けゴクゴクと飲んだ。

「コボちゃん、コタツ入れて座っててぇ」

カレンはそう言うと、部屋を出ていった。

小阪は部屋をキョロキョロしながらコタツに電源を入れて座る。


女の子の部屋っていい匂いするなぁ!

キレイにしてるし、コタツ布団も黒地に白猫の柄で可愛いし!犬派じゃなくて猫派ですか!ここでご飯食べて、テレビ見てるのかぁ。この広さならもう1人住めますなぁ!


ーーー妄想中ーーー

「ただいまぁ、今日も疲れたよ」

「お帰りなさい。ご苦労様でした。」

「お腹減ったぁ」

「先ご飯にする?お風呂入る?」

「お風呂にするかな」

「じゃぁお風呂入ってる間に夕飯用意するね」

カレンのおでこにキス。

「チュッ」

「もぅ!早くお風呂入って来て」

頬を赤く染め照れるカレン。

「あーいい湯加減だったぁ」

「さっぱりしたね!ご飯にしよ」

「おっ!今日は豪華だなぁ!おいしそうだぁ」

「今日はコボちゃんの好きな唐揚げだよ」

「なんかいいことあった?」

「今日何の日かわかるぅ?」

「誕生日じゃないし?んー?」

「今日で付き合って一年なんだよ」

「そっかそっか」

「もぅ忘れてたでしょ!私にとって大事な大事な日なんだから」

「ごめんごめん」

「キスしてくれたら許す!」

目を閉じるカレンにキスを...


ガチャ

ーーー妄想終了ーーー


リビングの扉が開いてカレンが顔を出す。


「コボちゃん!私お風呂入ってくるからゆっくりしてて」

「あっはいっ!だ大丈夫?お酒飲んでるから危ないよ!」

「シャワーだから大丈夫。一緒に入ってくれるのぉ?」

「あっいやっ、全然っ全然大丈夫だよ」

「フフっ、シャワー浴びてきまぁす」

カレンは小阪を少しからかった様子でニコッと笑顔で扉を閉めて浴室にシャワーを浴びに行った。


なんて可愛いんだぁ!妄想のカレンも現実のカレンも同じくらいに可愛い!

お風呂から出たら一緒に寝るのかぁ!!!

どーする?どーする?どーする!!!


小阪はスマホを取り出してSNSに書き込んだ。


今日飲み会終わって、酔った女子送って

女子の部屋のコタツでマターリ!

女子はシャワーナウ!!




「おおおー!女子の部屋なんですな!」

「キタ━(゚∀゚)━!」

「お泊まりですか?」

「キタ━(゚∀゚)━!」

「頑張ってくるでござるー!」

「美人局に注意だっちゃ」


ハハ!みんな羨ましがってるなぁ!

彼女いない歴35年!

とうとうこの日が来た!

やっぱり先に告白したほうがいいのか?

どうすれば?場面で?んー!!

今さらみんなに聞くのも嫌だし、

涼くんならどうするんだろ?

相手から言わせるっていつも言ってるけど、

言わせる?

俺のこと、どう思う?的な?

わからん!!!


経験のない小阪には、相手から好きだとか、相手から好意を寄せてこさせるといった涼のような上級テクニックがあるはずがない!

ただひたすらに妄想し、自分の器量を考えないで意外とポジティブに考えるのであった。


am 0:52


「あーさっぱりした!酔いも少し覚めたよ」

シャワーから戻ってきたカレンは、先ほどの泥酔状態とうってかわってケロっとした表情を見せる。

「よっよかったね」

「コボちゃんにはご迷惑おかけしました。」

素っぴんになって、部屋着を着たカレンを小阪はなめるように見る。その視線にカレンは顔を手で隠しながら

「素っぴんだからあまり見ないで!」

「すっ素っぴんも、かっ可愛いよ」

「フフっそんな事言ってぇ」

「本当にそう思うから」

「ありがと、今日遅いし泊まっていくでしょ?」

「そうさせてもらえると助かります」

「じゃぁ、ベッド1つしかないから」

おおおおお!フラグたったぁ!!!

一緒に寝ましょう!

「コボちゃんコタツで大丈夫だよね?」

「えっ?あっ大丈夫です」

「じゃぁもぅ寝るね!電気のリモコンはコタツの上にあるから、おやすみなさい」

そう言うと、カレンはリビングから出て言った。

小阪は電気を消し、コタツに潜り込む。

コタツ布団まで甘い、いい香りがする。

布団に顔を埋めてため息をつく。

皮肉な事にさっき活躍した小阪砲のせいで、コタツで暖められたパンツの悪臭がコタツ全体に広がり小阪の鼻に届く。

「臭っ!」


二度目の小阪砲を奮う事なく夜は更けていくのであった。

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