第10話 伝説のホスト 剣崎くん

pm10:23


涼の案内したbarに到着した。

入り口に向かって、足元右に、看板のネオンが灯っている。

「w i z a r d?」

「ウィザードだよ。入ろう」

涼が店のドアを開け入る。

続いて、ヒナ、カレン、小阪と中に入っていく。

中は薄暗く、カウンターに椅子が8席。

細長く少し狭い感じの店内。

椅子は木製に深いワインレッドの皮が張ってある背もたれの部分が少し高めで、その背もたれの木製の部分の先がろうそくのような形をして尖っているアンティーク調のもの。すぐ後ろに白雪姫の魔女が使っていそうな、これまたアンティーク調の姿見があり、照明もアンティーク調のランプが店内を薄暗く灯している。

カウンターには40代後半くらいの口ひげを生やし、長い髪を後ろで結った、大人といった男性がコップを拭いている。

男性がこちらに気づき

「いらっしゃい、あれ?涼くんか、久しぶりだね。」

「マスターお久しぶりです。」

「なんかホストの時より派手になったねぇ」

「そうですかね?」

「さぁさぁ、みなさん席にどうぞ」

マスターに言われ涼、ヒナ、カレン、小阪の順で奥から席につく。

「ここ、凄く雰囲気ありますね。魔女とか住んでそうだもん、ねっ?カレン」

「ホントにそんな感じするね、今度女同士できちゃおうよ。」

「ここのマスター手品をサービスでしてくれるんだよ。」

マスターがヒナの前に手を出すと...

ぼわっ!

「キャッ!」

手から火が出たと思ったら一瞬でグラスが現れる!

「何を飲まれますか?」

「えっ!えぇー凄い!ソルティードッグください。」

今度は隣のカレンの前に手を出すと...

ぼわっ!

「....」

火が出たが何も出ない。

「私のグラスはでないの?」

「何を飲まれますか?」

「えっと甘い飲みやすいのが」

ぼわっ!

「キャッ!」

またまた火が出たと思ったら、一瞬でカレンの目の前にグラスに入ったカルアミルクが現れる。

これには、一同一斉に!

「えー!!!」

「どうぞ、カルアミルクです。」

「一瞬で飲み物まで、えっじゃぁ辛口のお酒頼んでても出たの?」

「どうですかねぇ、お客様が甘いものを指定されたものですから」

カレンは何やら小阪に耳打ちを始めた。

「コボちゃんは難しいもの頼むんだよ!」

「難しい飲み物って...」

マスターが小阪の前に手を出す...

小阪は緊張により、両手の手首を折り曲げ、まるでカマキリのようなポーズで身構える。

「何を飲まれますか?」

「えっと、あの、ハイボールを」

カレンは全然普通の飲み物じゃんと肩を落とす。

マスターは後ろのグラスを取り出してハイボールを作り出した。

「あっえっー!出ないの?」

「今日は女性限定なんですみません」

そう言ってマスターは小阪の前にハイボールを差し出した。

「コボちゃん何そのポーズ!カマキリさんみたいだよ」

小阪はカレンに言われて、ハッと気づく。

緊張すると直ぐに硬直してしまうことに。


うわぁカマキリさんとか言われたぁ!こんな洒落たbarでかっこよくスマートに飲みたかったぁ!涼くんはいつのまにかしれっとハイボール飲んでヒナちゃんと会話してんのに、カレンちゃんはなんか不機嫌な顔してるし、パンツは冷たいし!なんとかしてカレンちゃんともっと仲良くならなければ!


「おっお手洗い借ります。」

小阪は一度落ち着かせる為に、お手洗いへと向かう。お手洗いはカウンターの一番奥にある扉がお手洗いらしい。カレン、ヒナ、涼の後ろを通り過ぎようとした時、小阪の目に入ったのは...

カウンターの下でヒナと涼が手を繋いでいる!

なんだぁ!涼くんとヒナちゃん手を握って普通に会話してる!うらやましすぎる!

俺もカレンちゃんと手を繋ぎたい!

あー涼くんの手が太ももにまでのびたぁ!


凝視したいのを堪えてお手洗いに急ぐ小阪。

お手洗いからでて涼とヒナがどうになってるか気になって、目線をそちらにむけたが普通になにもなかった。

席に戻り、ため息をつく。

「遅いぞ!コボちゃん」

「あっああ...」

「コボちゃんも今日すっごい手品したよねぇ」

「あっあれは...」

「でも私が欲しいリップグロスを持ってるなんて、手品より凄いよね!魔法だよ!」

「たまたまだよ」

「それが、たまたまとかだったら運命感じるんですけどぉ」

「....」

カレンちゃん少し酔ってるのかなぁ?

運命とか俺はもう感じてるっちゅーの!

てか、あれは手品じゃなくて、マジで魔法だけどね。本当になんだったかわからんが、カレンちゃんがこんなに喜んでいるのだから結果オーライだな!


pm11:00


カランコロン


店に誰か入ってきた。

「おっ今日は貸し切りじゃないな」

「祐くん、いらっしゃい。どうぞ」

マスターが入り口に近い一番端の席に案内する。

「マスターいつもの」

「はい、マティーニね。ちょっと待ってね」

「あれ?祐さん?」

涼が席を立ち、今来たお客さんのほうへ近づく。

「涼か?久しぶりだなぁ」

「祐さんこそ!お久しぶりです」


なんだ?涼くんの知り合い?今時スポーツ刈りで気持ちぽっちゃりしてて、メガネかけてる。中学生みたいなおっさんだなぁ。


「みんな!さっき話したホストの先輩!伝説の元ホストの剣崎祐けんざきゆうさんだよ」


「えーーーーーっ!!!」


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