第8話 白馬
「もし私達が無事にルームを抜け出せたら、まずはどこに行きたい?」
研究所と林を繋ぐ長いトンネルの中、ライが聞いた。
「えっとね。……遊園地行きたい!私、メリーゴーランド乗りたいの!」
トンネル内にセレンの快活な返答が響く。思えば、昨日池の畔で書いていた絵は白馬の王子様だった。そう思い、
「じゃあ白い馬に乗るの?」
と聞く。
「ううん。馬って一人乗りでしょ? 私ライと二人で乗れるのが良いな〜」
「えっ!?」
セレンから予想外の返事が帰って来て、咄嗟に出たのは随分と呆けた声。ライは、(我ながら間抜けな声が出た)と一人で恥じた。
「本当に? 馬には乗らなくて良いの?」
そう聞くと、
「うん! あ、ちょっと待って。…………やっぱり、乗りたい、かも」
だんだん小さくなって行くその声にライは吹き出した。
「何それ。じゃあ二回乗りましょう」
「え! 良いの?」
「勿論」
「やっっっったー!!」
その声はコンクリートに囲まれたトンネル内にどこまでも響いていった。
「まぁ、それも無事に脱出できたらの話だけどね」
「そんなこと言わないでよ」
二人は数秒間顔を見合せ、そしてまた数秒後に吹き出し、互いに大声で笑いあった。
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