第7話 逃亡

「おはよう。準備は出来た?」

「おはよう!準備万端だよ!まあ、あんまり準備すること無かったけど……」

「まあ、ここなんにも無いからね」

 現在の時刻は午前四時。いつも忙しなく人がうごめく研究所内に人間は数十人しか居なかった。そしてその殆どが研究室内に引き篭っている為、逃亡するには打って付けである。

「ねぇ、あと一ヶ月って、具体的には八月の何日なの?」

「十八日よ」

「そーなんだ。今日二十日だよね」

「ええ。……『何でもっと早く言わなかったの』何て言わないでちょうだいね」

 セレンの表情が訝しげな表情に変わったのを見て、ライは付け加えた。

「はーい。……あ、この服じゃ街の人にバレちゃうよね。それはもう良いの?」

「心配要らないわ。林の小屋にあなたの服とかその他諸々を置いといたから。あなたを見世物にする気は一切無いから大丈夫」

「おー。さすがだね!ありがと!」

 昨夜、セレンと別れたライは休憩と称して子供用の服や靴。帽子など色々な物を貯金をはたいて大量に買った。そしてそれを研究用の大きなバッグに入れ、林の小屋へ置いて来ていたのだ。バッグには『危険物にて接触禁止 dyライ』と書いた大きな紙を貼り付けておく事にした。

「さあ、人が増える前に出発するわよ」

 ライは左手のアンティークな腕時計を見て言った。

「うん!行こ!」

 セレンは例の如くライの手を握った。

 今、二人の逃避行が始まるのであった。

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