第6話 決断

「どう?」

 ライがそう呼び掛けてもセレンは何も言わない。お絵描き帳を傍に置き、ちょこんと体育座りをしている。ライも何も言う事は無く、セレンの言葉をゆっくりと待っていた。

 無情にも時は流れ、高い所にあった陽は傾きかけている。風は柔らかいと感じる程に凪いでいた。

 数秒後、数十秒、もしくは数分、十数分後セレンは小さく口を開く。

「三。私は三番を選択する」

 胸が高鳴った。

「私、ライとずっと一緒に居たいの!ずっとずーっと!ライと沢山色んな場所行きたいの!絶対に離れたくない!」

 ライの方に顔を向け、満面の笑みで答えたセレンは、やはり人間の様。残り一ヶ月でこの笑顔を失ってしまうと思うと、少し怖くなった。セレンが居なくなった後、しっかり生きて行けるのか。

「ありがとう。セレン。世界中何処へでも連れて行ってあげるわ。これからはずっと一緒にいましょう!約束よ!」

 ライは小指をセレンに差し出す。二人の小指は柔らかく絡まり合い互いに優しく歌った。手は冷たかった。

「どうやって逃げるの?」

 唐突にセレンは言った。

「明日、この場所を使って逃げるの。……詳しい事は、考えて無い、けど」

「考えて無いの!?」

「うん……」

 ライの返事は弱々しくて、セレンは少し面白いと思った。

「まあ良い。決行は早朝よ。私があなたの部屋へ行くから準備しといて」

「うん。分かった!待ってるね」

 言葉を交わすと、二人は互いの身体を強く抱き締め合った。

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