第1話 発明

 約三年前の事。世界最高峰の科学研究所、ルームにて、世界初、『人間の感情を持った人型アンドロイド』が発明された。

 女性研究者、ライ率いる研究チームによって開発されたは、イタリア語を元にセレンと名付けられた。

 メディアは、セレンとライの事を大々的に取り上げ、『天才科学者の正義の発明』と謳い、二人は一躍時の人。否定的な意見も多少あったようだが、その意見すら批判される程世界は賑わいを見せ、世界中が彼女らを賞賛した。

 中には、0が何個付くかも分からない値段でセレンを買い取ろうとする者も居たが、その夢は呆気なく破られる。ルームがそれを許さなかったからだ。

 それはそうと、セレンは到底他人には渡せる様な代物では無かった。


 可憐な美少女の形をしたセレンには、一つの欠陥があった。

「三年で全ての機能を停止。それまでに得た記録も全て失ってしまいます」

 セレンが感情を持つ前、彼女自身がこう言った。まさしく彼女は、失敗作だった。

 ルームはこれを世間に知らせることはしなかった。研究所の名に傷が付くと考えたから。その為セレンは、ルームに、ライに大切に守られている。

 外部の人間の手が触れぬ様に。

 晴れを意味するその名に恥じぬ様に。

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