第7話 表もあれば裏もある!?ダブル『凛』の日常!!(7)




冷静になって行く心が、ヤマトに問いかけていた。




「第三者から見て、どう思う?」


「うはははは!よーわからんわ!ただな~あの先生、わしんとこで世界史教えてんねん!」


「それはもう聞いた。」


「そうか!そいでの~凛と同じ委員会の女の子に、菅原凛さんについて、なんぞ聞いとったでー?」


「え!?私のことを・・・?」


「せやせや!人目から隠れるように、コソコソや~!案外、裏を取っとるんっちゃうんか?」


「そうなんだ・・・・。」




彼女とは共通点がないからわからなかったけど・・・




「助けてもらえるなら、助けてほしい・・・・」


「凛?」


「いつまでも・・・・このままは、ツライ・・・・」


「そやな・・・・凛がいじめられとるの、わしも見てられんからのぉ・・・助けてええか?」


「だめです。それがきっかけで、僕が『凛道蓮』だとバレては困ります。」


「うははは!またそれかいな!?用心深すぎやろー?」




私がいじめられっ子だとわかってから、ヤマトは私を助けたがる。


でもそれは、私にとって嬉しいことではない。


嬉しくないわけじゃないけど・・・・




(いじめが終わるよりも、バレて瑞希お兄ちゃんとの関係が壊れることの方が怖い・・・)




「・・・なにより、相手が厄介だ。」


「渕上ルノアがか~?」


「ああ。学校と生徒を言いなりにさせるだけの力を持ってやがるからな・・・」




いずれ、何とかするにしても、今は証拠作りだ。



(そのために毎日、どんないじめを誰から受けたか日記に書いてるもんね。破られた教科書や壊された文房具も写真データで残し、入学祝でもらったお小遣いで買ったボイスレコーダーで悪口も録音してるし・・・!)




〔★コツコツと積み重ねていた★〕




ヤマトからの実力行使の援軍を断れば、彼はニコニコしながら言う。



「凛がええっちゅーなら、従うわ~けど、見てられなくなったら、自動的に救助に向かうからのぉー?いじめられっ子が、格闘技できるってわかるのもめんどうやろ?どうせ、『菅原凛』で戦う気もあらへんやろし?」


「ごめん・・・」




彼の申し出に謝るしかできない。



こんな遠回しなことしたくないけど、今の私にとって、瑞希お兄ちゃんとつながっていられる凛道蓮はなくしてはいけない存在なのだ。


だから、少しでも連想されるきっかけは見せたくない。



「まぁ・・・・今の状況で直接手を下せば、私が傷害罪の加害者にされますからね。格闘技を習っていたことは、中学生になってからは内緒にしていので・・・バレてないとは思いますが・・・。」



祈ってはいるけど。



「そやなぁー!そういえば、その格闘技のおけいこ、やめたんやってな?」


「・・・ええ。最近まで、週1で顔を出すぐらいは出来ていましたが・・・」


「うははは!通わんでも、リアルで戦えるからのぉ~!」


「好きで戦ってるわけじゃないですが・・・気づかれてるみたいで。」


「誰に?何を?」


「師範が・・・気功(きこう)の流れもわかる方みたいなんです。」


「天気予報師の資格持っとんかい?」


「違います!武術の修練(しゅうれん)を行えば、高まる気のことです!」




〔☆良い子のためのワンポイント解説☆〕

気功(きこう):気功の『気』は人間の生命エネルギーのことを、『功』は鍛錬を意味しており、生命エネルギーを使った鍛錬のことだよん♪気を高めることで、健康にもなれるのだ☆彡気功士という職業もあるので、気になる人は調べてみてね♪





「うはははは!ミラクル~!気功を探れば、何でもわかるっちゅーんかい?」


「茶化さないで下さい!気功は本当にすごいんですから!」


「どんくらーい?」


「例えるなら、拳銃を撃つと消炎のにおいが残りますよね!?それと同じで、僕が殺気を込めて戦った後の残り香を嗅ぎ取るんです!」


「だったら、凛道蓮やった後に行かんとええが~!?」


「そうしてましたよ!時間を置いても、呼吸を整えてみても、私が前の私じゃないって感じ取ったみたいで・・・・!」


「単に、いじめられっ子オーラに反応したんちゃうか?相談するチャンスやったんちゃう?」


「面倒だからいいですよ!言ったところで、学校関係者でもないのに何ができますか?」



生徒を管理する立場の人達が、渕上の味方をしてる時点で意味がない。



「それに・・・両親も、これ以上は月謝を払わない、通わせる気がないって言ってたんです!安全で有名な私立に入学したんだから、無駄。その時間を、塾へ行く時間にしたらいいって言いましてね・・・!」


「ほぉ~そんで、塾に通っとんかい!?龍星軍の総長しながらー?」


「今は行ってません!ただ・・・夏期講習を申し込んだ塾さえよければ・・・夏休み明けから通うことになるでしょう。」


「はぁー子供に勉強させたがる親やな~!?菅原さん、そんなことせんでも、十分、頭ええやん!?」


「大学受験の準備ですよ。」


「今から受験かいな!?そりゃあ、このままエスカレーター式で、大学には行きとうないのはわかるけどなぁ~?」


「でしょう?とはいえ、塾に行くと瑞希お兄ちゃんとの時間が減るので・・・上手く調整をつけたいんですよね・・・!」



私の今の学力なら、塾まで行かなくていいと思う。


ヤマトには言えないけど、そのためにワンランク下の有名私立高校に来たのだ。


でも、今は事情が違う。



「渕上家は、そのまんま、あゆみが丘学園の大学に行くからのぉ~」


「ええ・・・!」



大学生活の4年間まで、渕上達のおもちゃにされたくない。




(これというのも全部、いじめがあるせい。)




「しっかし、どこいっても、いじめはあるもんやんぁ~ツライやろう?」


「うん・・・」



そうだよ。


いじめがあるせいで、私は、私は・・・・!




(余計なパワーを使ってる!!瑞希お兄ちゃんのこと以外で、よけいなパワーを使いたくないのに!!)




〔★ツライの気持ちが違った★〕





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