第8話 表もあれば裏もある!?ダブル『凛』の日常!!(8)



いじめを受けるのはつらい。


精神的にも肉体的にも追いつめられる。




だから、同時にムカついていた。




いじめに耐えることに力を使うぐらいなら、その分を瑞希お兄ちゃんにあてたい・・・!


体力、精神力共に、好きな人に捧げたいのに・・・!




(これというのも、あのくされ女・・・・!)




「渕上あの野郎~!マジで覚えてやがれ・・・!」


「うはははは!おしゃべりはこんくらいにして、はよぅ食わん時間なくなるで!なぁ!?」


「そうですね・・・・!」




ヤマトのすすめもあって、憎いいじめっ子への怒りを収める。


食事を始める。


ヤマトから購入した卵サンドを食べる。


フィルムを開ける私の隣で、メロンパンの袋を開けながらヤマトが言った。




「そりゃそうと、凛!今日も行くんやろうー?」


「え?うん・・・・もちろん行くよ?」




主語はなかったが、何をどうするかは、わかっていた。





「当然、瑞希お兄ちゃんに会いに行くよ!」





土日の休みはもちろん、平日の午後も、時間が合えば、瑞希お兄ちゃんの元へ通っている。


そうすることで、私の精神が保たれてると言っていい。




「そういう思ったで~!」





私の言葉に、ヤマトがニヤリと笑う。




「わしもついてってええか!?」


「え?別にいいけど・・・・『僕』が瑞希お兄ちゃんと2人きりになるを邪魔はしないでよ?」


「うははは!せーへん、せーへんって、恋する乙女~!?わしの単車で店まで連れてったるわ!」


「え!?持ってるの?」


「うははは!当然やで!凛道蓮変身セット、もって来とるんやろ!?うちで着替えたら早いやん!?」


「ヒーローもののコスチュームみたいに言わないで下さい。着替えは・・・例のロッカーに置いてるので、持ってませんよ。」


「ほな、今日のところはわしの服貸したるわ!これからはわしの家に置きー!」


「え!?ヤマトの家に?」



意外な申し出に聞き返せば、パンを頬張りながら彼は言う。




「そーや!モグモグ・・・さっきもゆーたけど、そうした方が自分も楽やろ~!?コソコソ人目を気にして便所で着替えんでええやろ?ロッカーやって、パンパンに服詰め過ぎたらはじけるでー!?うはははははー!!」


「はじけるほど押し込んでませんよ!どちらかと言うと、瑞希お兄ちゃんの家に置いてる方が多いから・・・。」




最初の頃は、ロッカーに服を置いていたので持ち帰りをしていた。


でも、瑞希お兄ちゃん達が『凛道蓮専用』の部屋をプレゼントとしてくれてからは、そこで服の洗濯をしていた。


持ち帰ってコソコソ洗って干す必要はなくなった。




「ちゅーても、瑞希はんところで着替えるのは少ないやろ!?あのボロいロッカーがいつまでもあると思ったらあかんで!夏が来たら着替えるのも地獄やんか~!?」


「それは・・・そうですが・・・」


「菅原凛ちゃんの部屋やってそうや!隠して置いとるつもりでも、部屋の掃除と称して、思春期のエロ本チェックにきたおかんのごとく、見つけられたらアウトやで!?」


「わかりやすいですが、変な例えをしないでください!。心配しなくても、凛道蓮の時の服は、バンダナ以外は置いてないんです。」


「なんでや!?買う(こう)て隠すとかで、ワンセットぐらいの予備は隠しとるんちゃうか~!?」


「最初はそうでした。でも最近は、凛道蓮の服をモニカちゃんが作ってくれるんです。自分で買うにしても、菅原凛の姿ではなく、凛道蓮の姿で買った方が安全とわかりましたので・・・凛道蓮で買って帰った服は、瑞希お兄ちゃんの家に置くようにしてるんです。」


「あ!そっか!凛道蓮の姿で、瑞希はんの家に持って帰れば怪しまれへんなっ!?」


「ええ。運ぶ手間もなくなりますから・・・」


「うははは!そか、そか!かしこいのぉ~!!」




感心したように言うと、私の頭をナデナデするヤマト。




瑞希お兄ちゃんに頭をなでられるのはいいが、同級生相手だと、子ども扱いされてるみたいでちょっといやだ。


照れくさい。


私の気持ちを知らないヤマトは、数回なでた後で言った。




「どっちにしろ、変身場所が多い方がええやん!?わしの家、使わん部屋もあるからそこを更衣室にしたらええわ!」


「え!?それはちょっと、図々しい気が・・・」


「フローリングと畳の部屋、どっちがええ?」


「使う方向で話を進めてますか!?」


「なんかあかんのか??」


「いえ、気持ちは嬉しいのですが・・・・お邪魔する時は女子で、帰る時は男子なんて、コスプレも良いところじゃないですか?」


「うはははは!心配あらへん!住んでる人、あんま家におらへん人ばっかやねん!」


「詳しいですね?」


「おう!管理人しとるのが、マンションのオーナーの息子はんでな!わしの後ろに隠れて入れば、気づかへんわ!漫画を見る方に夢中やからのぉ~!」


「大丈夫なんですか、そこのマンションの防犯管理!?」




〔★凛は良いが、住んでいる住人が気の毒だ★〕




「平気や!防犯カメラちゃんとセットできてるねん!」


「だめじゃないですか!?入って行く私の姿と、出て行く私の姿が違ったら怪しまれますよ!?」


「せやから、漫画に夢中でモニターは見-へんって!」


「人間の目がそうでも、機械の目がそうじゃないでしょう!?録画は行われていますよね!?」


「うははは!ホンマ大丈夫や!防犯カメラ、しょっちゅう壊れて、今も修理中やねん!」


「違う意味で、大丈夫なんですかそれ!?」


「凛的にはええやろ~!?」


「そ、それは・・・私的には、いいと思いますが・・・!」




〔★続・住んでいる住人が気の毒だ★〕





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