第6話 表もあれば裏もある!?ダブル『凛』の日常!!(6)




主語を使い分けながら、唯一の味方(?)に聞いた。




「いくら『私』の時は友達がいないからって、ヤマトまで付き合うことないんですよ?クラスの友達とかいるでしょう?」


「うはははは!かまへん、かまへん!ゆっくり作るから!なかなか、半径3メートルの壁が崩れへんねん!」


「え!?君もいじめられてるのかい!?」


「うはははは!よーわからんが、わしの声を聞くのには、その距離が一番ええらしーわ!」


「ボリューム下げなよ!」




〔★いじめではなかった★〕





「ヤマト!それ少しの工夫で友達集まるよ!作れるってば!」


「かまへん、かまへん!出来る時にできるわ!凛こそ、ええんか?後藤先生のこと!?」


「っ!?」





それで私の言葉が勢いを失う。


痛いところを突かれたわけだけど―――――




「・・・後藤先生との話、聞いてたんですか?」




念のため確認をふれば、ヤマトはゆかいに笑う。




「うははは!!なかなか、けーへんから、またいじめられとるんじゃないか思うてなー?ええ先生やと思うで!?」


「ヤマト的には、OKマーク?」


「せやな!あとの先公共は、あかんな!特に、井谷先生があかんな!わし、友達になりたくないわ!」


「大丈夫、井谷もそう思ってると思うから・・・」


「ホンマか!?うれしいのぉ~うははは!」




音に反応して動くおもちゃみたいに、ケラケラと笑うヤマト。


大きな音が出る実験もあるので、第二理科実験室は防音設備がついている。




(それがなければ、バレバレの音量よね・・・・)




〔★凛は工事した人に感謝した★〕




嫌な話題を変えるように、陽気な声でヤマトが言う。




「それはそうと、凛!蛇の目の結末は聞いたかー?はよう、飯にしようでー!」


「ああ、蛇塚達のこと?うん、瑞希お兄ちゃんからメールで聞いたよ。てか、君に気を取られて、お昼を買うの忘れたんですけど・・・?」


「うははは!ざんねーん!わしが買い占めたから、ありゃせんわ!ほれ、コロッケパン食え!」


「あ・・・ごめん、ありがとう。」




最近、いつもこう。


みんな、私のお弁当が渕上達に捨てられるって知ってる。


だから他の人も意地悪して、購買のパンやお弁当類を買占める。


そうすることで、渕上に媚び(こび)てアピールしてるのだ。




(そうなっても、私が困らないようにって、ヤマトが買っていてくれる・・・・)




「お客さーん、なににしますぅ~!?」


「じゃあ・・・コロッケと、卵サンドセット、たらこのおにぎり!」


「まいどー!おまけで。キットカッドつけたるわ!」


「ありがとう。」




定価と同じお金をヤマトに払う。


金額を上乗せするわけでもなく、おまけのお菓子までくれる。


ふと、気になったので聞いた。




「そういえば、ヤマト・・・いつもパンを買ってるけど、親御さんはお弁当作らないの?」


「うははは!わし、1人暮らしやねん!」


「え!?そうなの!?すごい!」


「せやろー!?今度、遊びに来てええで!なんなら、わしの部屋に凛道蓮変身セットを隠しとくか!?」


「え!?それはいくらなんでも・・・・」




一応、年頃の男の子の部屋。




「なんや!?けーかいせんでも、ええで~!凛、わしの好みのタイプとまったくちゃうから!」


「そーかい、ありがとうよっ!」




〔★ストレートだった★〕




一瞬困ったけど、そこまで言ってくれたら、逆にすがすがしいわ!




「うはははは!そない、すねんと!わし、凛には恋愛感情は無理やけど、それ以外やったら、なんぼでも付き合うでー?」


「僕も瑞希お兄ちゃん命だから、ありがたいよ。君には、いろいろ助けてもらってるから・・・・・」




(菅原凛でも、凛道蓮のでも、ヤマトは助けてくれたけど・・・・)




「ヤマト・・・どうして、僕のことを他の人にしゃべらないの?」


「はへ?ほりゃー、もぐもむ、やで!?」


「ごめん、食べてから言って。」


「んぐっ!せやから~ゆーとるやないか!凛の第一印象に惚れたんや!」


「え?可児君タイプ?」


「そやけど、少しカテゴリーが違うわ!可児君、凛をご主君って考えてるやん?」


「いや、それはわからないよ・・・」


「そうなんやって!わしの場合、凛とは平等な立場でいたいねん。」


「え?平等でしょう?」


「ほんまか?」


「え?なに?まさか、君の方が上になってるの??」


「うはーはっはっはっ!!」




私の問いに、ヤマトが手で顔をおおう。




「せやから、凛はええねん!」


「な、なにが??」




爆笑しながら言う相手に戸惑う。


そんな私に陽気な関西人は言った。






「わしは、凛のそこが好きやねん!あめちゃん食うか?」


「う、うん・・・・じゃあ、貰うよ・・・」




ご飯を食べてる途中なのに、飴玉を差し出すヤマト。



(・・・関西の人って、本当に飴玉を『ちゃん付け』するんだ・・・)



てか、なんでそんなにたくさん持ち歩いているの!?


ポケットからあふれてるって!



〔★なにわスタイルだった★〕




いろんな種類の飴玉を私に握らせながら、ヤマトは楽しそうに言う。




「そないゆーけど、凛こそ、わしをどない思ってんね~ん!?」


「え?声がデカくて話も長いあまりに『ラジオ』とあだ名されている馬鹿力の謎の関西人。」


「けっこ~つめこんできなぁ~!?うはははは!」




思った通りを言えば、パンパンと手を叩いて笑うヤマト。




「わしは別に、謎はつくっとらんけどなぁ~!そないに、ミステリアスかっ!?かっこええか!?」


「ごめん、嘘です。考え直してみれば、離れたクラスの転校生ということでわからないだけです。」


「なんでそこで遠慮すんねん!?つっこんできーや!うはははは!」


「いや、君と漫才を組んだ覚えはありませんから。」



〔★上手い切り返しをした★〕



「きっついなー自分?瑞希お兄ちゃん以外は、心をシャットダウンかいな!?」


「そうじゃないですよ!ヤマトは、良い友達だから・・・・今だって、こうやって付き合ってくれてて・・・・だから・・・・・」


「心配いらんで、凛。」



私の言葉を遮るようにヤマトは言った。






「学校では、『すがわら』さんと『あらしやま』くんや!バレるようなことせーへん!凛をだます気もあらへんからな?」



「ヤマト・・・」




少し、不安だった。


友達だと思っていた人達に裏切られ、簡単に信じてはいけないと思うようになっていた。


少しは、疑う心を持ってもいいけど・・・・・




「まぁ疑い深くなって、しゃーないわ!でもわし、後藤先生はええ人や思うで!?」


「・・・・そんなに、わかりやすかったか?」


「わかるっちゅーか、あんだけ凛・・・菅原さんばっかり物がなくなりよったら、普通の教師はおかしい思うで?」


「そっちじゃなくて!」


「なんや、あっちか?『いじめらてること』やのうて、『菅原さんがいじめの被害者』やって、疑ってきた後藤先生の態度かいな~?」


「そうだよ。」




まさか、今頃になって、私の無罪を信じる教師が現れるなんて・・・!


無意識に握りしめた拳がなる。





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