第2話 表もあれば裏もある!?ダブル『凛』の日常!!(2)



年配の方ということもあり、90度のお辞儀をすれば、おじいさんが楽しそうに笑います。




「はっはっはっ!良い子じゃないか、サナちゃん!?よく似た美人姉妹だね~」


「だから兄弟っすよ!わざとですか!?」


「すまん、すまん!からかいがいがるから、ついな~?しかし、あのサナちゃんが、立派な社会人になってくれてよかったぜ!」


「ちょ、よしてくださいよ、会長~」




しみじみ言う会長と、照れる瑞希お兄ちゃん。


その『意味』を知っているので、よくわかりました。





「おい、あれ!」


「うわ!?真田さん・・・?」





離れた場所から、こちらを見ている若者達のこともわかりました。






「やべぇーよ、元『龍星軍』の『初代総長』、『真田瑞希』さんじゃんか・・・!?」


「あれが?女みたいじゃんか!?」


「馬鹿!聞えたら、殺されんぞ!?」






そうなんです。


瑞希お兄ちゃん、こう見えて、元ヤンキーなんです。


女の子みたいに可愛い見かけによらず、とっても強いんですよ。


かつて、町中だけでなく、日本全国で一番になった最強暴走族。


『龍星軍(りゅうせいぐん)』初代総長の真田瑞希というのが、私の頭をナデナデしているお方なんです。




〔★彼の昔はワルだった★〕




今でこそ穏やかな瑞希お兄ちゃん。


そんな彼と私を見比べながら会長は言う。




「しかし、サナちゃん。お前、弟が2人いたんだな?」


「はあ?俺、1人しかいないですよ?」


「いや、オメーが頭をなでてる凛ちゃんと、もう一人いるんだろう?ヤンキーの暴れん坊が!」


「あ~それが・・・・」





(私です。)





言いにくそうにしている瑞希お兄ちゃんの代わりに、心の中でつぶやく私。





「ダメだぞ!凛ちゃんみたいに育ててやらねーと?なぁ、凛ちゃん?」


「いや、その・・・・・すみません。」


「ははは!なに謝ってる?ホント良い子だなぁ~ヤンキーと無縁でよぉ~」




いやいやいや。


関係あります、違います。




(思いっきり、ヤンキーなんですが・・・・)





気まずい思いで、瑞希お兄ちゃんを見れば、苦笑いしていた。


無理に修正しなくていいという合図。




「ははは!いまどき、こんな小動物系の男子はいないからなぁ~いじめられたら、このおじちゃんに言えよ!助けてやるからな、凛君よ?」


「あ、ありがとうございます・・・!」




親切な言葉に、だましているようで悪くなる。




(見た目は、普通の男の子にしてるけど~)





その正体は、『龍星軍4代目総長』、凛道蓮。


初代総長の真田瑞希さんから龍星軍を引き継いだ後継者。


『男子』としては小柄ですが、武術の腕前は高い新米ヤンキー。


格闘技と合わせて、トンファーという飛び道具を使って戦います。


でも、基本は平和主義者で喧嘩が嫌いなので、自分から戦うようなことはしないです。


自覚はないですが、か弱い小型動物のなのですよ~




〔★見た目だけだ★〕




「サナちゃんも可愛い見た目だが、凛君も可愛いなぁ~?ちっちゃいし、女の子みたいだな~」


「そ、そうですか?」


「会長、凛は男ですよ!?からかわないでください!」


「ははは!悪い、悪い!見た目で、ついなぁ~!」




ヤンキーは見た目も大事と言いますが、可愛くみられると気にしちゃいます。





(やっぱり、総長となると・・・男の子らしく見えなきゃダメなのかな?僕には、ニラミってものが足りないのかな~?)




だいたい、初めて会う人は驚きます。


まず、僕が龍星軍の総長だと思いません。


信じられないと言う意味で、びっくりしますね。


お決まりパターンで、同じことを言います。




これが凛道蓮か、あの凛道蓮なのか、と。




(ヤンキーらしく見えないって言われちゃうけど・・・・・・・)




会う人会う人がそんな反応なので、総長をしていて心配になりますが・・・






「お、おい!見ろよ!あのマスクしてる小さいの!」


「げっ!?凛道蓮じゃねぇか!?」


「なに!?笑顔で人を凍らせる『ジャックフロスト』!?」


「見た目に騙されて、何人も病院送りになったという詐欺動物!」


「やべ!見つかる前に行こうぜ!」


「警察呼んだ方がよくねー!?」


「やめろ!関わるとろくなことがない!」


「目が合わないうちに、逃げるぞ!」




(・・・まぁいいか。)




瑞希お兄ちゃんを見て、コソコソ話していたヤンキー共が、僕を見て青くなる。


そして、慎重に後ろ歩きで遠ざかっていく不良達を見て思う。






(僕は化け物かい?)





噂が独り歩きして、最近では『凛道蓮=危険物扱い』される。


一般人は可愛いと言って近寄ってくるけど、ヤンキー系は逃げて行ってしまう。


絶対、私よりも怖くて強そうなのに、気づけば道を開けてくれる。





(まぁ、喧嘩とか争いにならないからいいと思うけど・・・)





因縁をつけられる前に、いなくなるからいい。


今みたいに、勝手に逃げてくれるのでいい。


ニラミがきいてるみたいなら、いいけど・・・・






「真田さん達よりも、恐ろしいんだぞ、凛道蓮さんは!」


「見ちゃったよ!悪いこと起きなきゃいいけどな~」


「神社で厄払いして帰ろうぜ!」


「カラス、黒猫、凛道蓮だよな!」





(なんか、納得できない・・・)




〔★凛は敗北感を覚えている★〕





1人、ダメージを受けている私に気づくことなく、大人2人の会話は終わりに近づいていた。




「まぁ、だいたい、こんなところか?あとは前日に話そうぜ、サナちゃん!」


「わかりました、会長。俺のところの準備が終わったら、手伝いに行きますんで。」


「いつも悪いな。今年は、屋台の数も増えるし、他所から出店するところも多くてな。年寄りばっかだから、正直、そうしてもらうと助かるぜ。」


「気にしないでください。屋台やらせてもらえて、俺が助かってますから。今日はお時間頂き、ありがとうございました。」


「ああ!頼りにしてるぜ、サナちゃん!」




そう言って瑞希お兄ちゃんが頭を下げたので、話が終わったのだと察する。


チョコチョコと、ゆっくり移動して彼の背後に移動する。


その途中で、会長さんと再び目が合う。





(こういう時は、愛想笑い。)




ニコッと笑えば、おじいさんもニカッと笑った。





「よぉ、坊主!凛ちゃん!待たせちまって、ごめんな~?」


「いいえ、お仕事ですから、とんでもないです。どうか、瑞希お兄ちゃんをよろしくお願いします。」




瑞希お兄ちゃんの背後から顔を出し、ペコッと2度目になる90度でお辞儀をする。




「くぅ~礼儀正しい良い子だな!うちの孫らにも、見習わせたいぜ~!」




これに感心するようにいう会長のおじいさん。




「よし!良い子で待ってたちっちゃい凛のために、アイス買ってきてやる!」


「え?でも!」


「ジジイにおごらせろって!瑞希の分も買ってきてやるから、待ってろよ!」


「え?いや、会長、俺までしてもらうのは~」


「遠慮すんな!少し前まで入院してた奴がよ~?熱中症なめるなよ!?」


「熱中症だったわけじゃないんすけど・・・」


「いいから、2人共そこいろ!」




そう言って釘をさすと、足早に私達から離れるご老人。




「すぐ戻るからな~!」


「すみませーん、会長!ごちそうになります!ほら、凛も!」


「あ、ありがとうございます、会長さーん!」



「任せとけ!」





威勢良く笑うと、おじいさんは僕達に手を振る。


そして暑い中、アイスを買いに行ってくれた。





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