1-2-2.文字の特別定義

📖この節では、次の項目について説明する。

  【こく

   🖈チョソングルという奇跡

   🖈和製漢字の逆輸入

  【たい

   🖈たいは字義通りの用法ではない

  【じょすう】⛏

   🖈序数表記の提案

   🖈序数表記の元来

  【じょうようかんひょう

   🖈常用漢字という目安

   🖈ひらがな表記に対する的外れな邪推がなされますが

   🖈人名用漢字という法的ルール

   🖈漢字の使用当否の調べ方



      †



📕【こく

 〈当国が独自に定めた漢字〉の意。

 〝働〟〝腺〟〝糸〟などがこれ。

 [][][せいかん]と書いてほぼ同義。


 〝え、そういうのアリなの?〟と思われるかもしれないが、「そういう事をしては行かん」というルールは無い。

 したがって勝手に漢字を作るのは、私人公人問わずアリである。

 ただし、それが受け入れられるかどうかは、また別の話。

 また、新字とは民間主体で産まれ、それを公人が認めるという形が一般的であるため、公人が新字作成をすることは基本的に無い。


   📍チョソングルという奇跡


 余談だがそういう観点では、漢字を覚えれない民を思い、公人主体で考案された「チョソングルチョソングル)」は、世界的に珍しい奇跡のような文字と言える。

 なおかんこくにおいては「ハングルハングル)」と呼ばれるし、一般にもそれで通用してはいる。

 しかし朝鮮語を記述するために、朝鮮国で産まれた文字なのであるから、チョソングルのほうが適切かとは思われる。

 ただしもちろん、人によっては呼び方にこだわりがるだろうから、そのような人に対してまでこの考え方を強制すべきではない。


 なおチョソングルは表音文字、つまりはであるが、一字一音をあらわす日本語のそれとはすこし、形式が異なる。

 朝鮮語はもともと漢字ベースであるため、一字で漢字を指せるよう、複数の音素部品を組み合わせて一字を表現する、という形になっている。

 かつ、その発音は朝鮮語固有のものが多く、歴史的経緯により日本語圏での発音が混じったりもした。

 ゆえに一字で漢字を指すとはいえ、その発音は漢音のそれと異なる場合が多い。

 たとえば中国語圏で「ユェシュ」であるものが、朝鮮語圏では「ヤグソグ」であり、これは日本語圏での「やくそく」にだいぶ近いと言える。


   📍和製漢字の逆輸入


 なお〔丼〕〔畑〕〔鱈〕などの国字が、中国語へと逆輸入されている。

 日本での語や字が中国へとでんする場合、タイワンを発端としてシィァンガンを経由し、やがて大陸本土に伝わるという経路が一般的なようである。

 タイワンが特に親日的であり、シィァンガンがそれに準じるためと思われるもので、つまりこの2つのくには日本と中国のけ橋として、さいたるかなめだと言えるだろう。



      †



📕【たい

 〈文面上でのかいざん抑止のためにあえて複雑化させた漢数字の語形変化〉の意。

 〝れいいちさんろくしちはちきゅうじゅうひゃくせんまん〟などがこれ。

 なお[だい]ともわれるが、意味に違いは出ないからどちらでもよろしい。


 たとえば〔一〕に対しては、一線加えれば{十}へ、さらにもう一線で{千}へと、無理なくかいざんできる。

 こんな事では、正確な数字が重要である文面においては本当に困るので、自然発生でなしに意図して定義された。

 なおこれに対する、〝いちさん……〟などの通常の漢数字を「しょう」とも呼ぶ。


   📍たいは字義通りの用法ではない


 ただ、〔貮〕のように専用に作られた字も一部あるが、大半は別字を当て字したもの。

 「れい」は当て字のほうであり、その字義は〈雨垂れ〉。

 漢数字での〈0〉は〔リン〕であり、たまたま同音の〔リン〕が当て字されただけであって、国訓としても〈0〉を意味する際の読みは〈zeroゼロ〉を原語とする「ぜろ」である。

 したがってかいざんが問題になる場合を除いては、漢数字表記はしょうのほうが適切ではある。


 ちなみに見た目では判別しづらいが、文字として「れい(#𝟹𝟶𝟶𝟽)」と「丸記号(#𝟸𝟻𝙲𝙱)」は別物で、コンピュータ上でも別字として定義されている。



      †



📕【じょすう】⛏

 〈序数を特に表現するための漢数字の語形変化〉の意。 

 〝れいいちさんろくしちはちきゅうじゅうひゃくせんまん〟がこれ。


   📍序数表記の提案


 「じょすう」とは数量を表す数詞ではなく、〈順番や番号をともなってそれに該当するものを示す〉であるため、計算などに用いれる性質のものではない。

 その混同を避けるため、英語における「firstファーストsecondセカンドthirdサード……」などに相当するものとして、いま例に挙げるとおりにこれを新たな定義として提案する。

 ……一部たいと重複するが、ほかにとうな字が見付からなかったのでカンベンしてほしい(

 そしてわざわざたいと別個に用意したのは、以前〝「三人称」は「一人称」の三倍〟との残念な勘違いを犯したゆえに、本当に残念だったからである(


   📍序数漢字の元来


 なお〔弌〕〔弍〕〔弎〕は、元より序数字として用いられている模様。


 また、〔貳〕〔弍〕が正式なのであって、上に{一}のつく〔貮〕〔弐〕は誤字なのだ、ともわれる。

 〔武〕がその誤字の元と推定されるが、この字の部首は{止}であり、{⿱一弋}のような構えの部首は存在しない、ともされる。



      †



📕【じょうようかんひょう

 〈公文書における漢字遣いの目安を示した内閣告示〉の意。


 次のサイトからPDFデータで入手できる。


 🌐 『文化庁‐常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)』

 https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/kanji/


 なおかっ書きで〔氣〕〔戰〕〔讀〕などの異体字が掲載されているが、これらは旧字を遣ってきた人たちに対する手引きにすぎず、常用漢字には含まれないとされる。

 ゆえに、たとえば『よみうり新聞』は飽くまで通用上のロゴであり、『読売新聞』が正式名称なのだという運用がされている。


   📍常用漢字という目安


 誤解されがちな所が、三点。

 まず、示されているのは「用いられるべき漢字」ではなく、「」。

 だから例えば〔求〕という字について、{キュウ}と{もとめる}の記載は有っても、{もとむ}は無い。

 よって、同じく{もと}という読みであるにもかかわらず、{求める}とは違って{求む}と書くことはすいしょうされないわけだ。

 漢字遣いの目安とはそういう事で、い換えれば


  • 常用漢字表とは「かんててよいのリスト」


であり、つまり{もとむ}とひらがなで書くことはまったく問題ない。

 次に一点、そもそもこれは法的拘束力のあるルールではなく「目安」であるので


  • これに沿わなくても間違いではない


わけだ。

 またもう一点、とはいえ公文書での記述が読めないと困ってしまうので、


  • 公用文では運用上でかば強いられる


ということ。

 そもそもこれは、〝へいめることをもくてきとしてもうけられているやす〟なのだ。

 だから公文書ならば極力沿ったほうがいいし、私文書でも可能ならば「じょうようがいみにはルビをるのがしんせつ」かと思われる。

 ざっとながめるだけならば30分も掛からないと思われるので、ぜひ一度目を通しておく事をお勧めする。


 いや、〝純文学ではルビを極力省くのが「つう」だ!〟とか言われても知らんがな(

 そんな事すっから、多くの人が入っていけなくてすたれるんや(

 禁忌とまでは言わんがせめて商業ではやめとけ、売れたいから売るんやろ(


   📍ひらがな表記に対する的外れな邪推がなされますが


 ちなみに、〝障がい〟という表記がよくみられてございますわね。

 そして、これに対する〝わざわざ「配慮()」などして、「害」の字を避けるのはいかがなものか〟との指摘も、まれに聴かれることでしょう。

 しかしこちらは、〝「しょうがい」の{ガイ}が常用漢字表に載っておらず、それについてはひらがな表記している〟というだけの話でございますの。

 〔碍〕と〔害〕は不可換の字であり、「しょうがいdisabledディセーブルドのうよくせい)」と「しょうがいobstacleオブスタクルじゃ)」もまた別々のことば

 つまりこれは、完全なる「はだかおうさまげんしょう」なのでございますわ。

 なぜそのような表記なのかとお疑いになるならば、素直にそうおたずねになればよろしい事ですのに、決め付けによって邪推をなさるとはまた、お里が知れてしまうことですわね。


 要するに、「しょうがいしゃ」とは〈体機能を抑制された者〉の事であって、〈障害を抱えた者〉の事ではございませんのよ。

 しょうがい者が必ずしも障害に困らされているわけでもございませんし、健常者が必ずしも障害に悩まされないわけでもございません。

 そうでなければ、相談室や占い師は繁盛しませんことよ。


   📍人名用漢字という法的ルール


 常用漢字はバリエーションが限られており、それに対して人の名前付けにはもっと豊かさが欲しい、というニーズも存在する。

 よって、飽くまで常用外であるというただしつきで、人名に使ってよい漢字のセットを定めたものが、人名用漢字表である。

 次のサイトで、PDFデータの入手や、読みけんさくなどができる。


 🌐 『法務省‐子の名に使える漢字』

 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji86.html

 🌐 『法務省‐戸籍統一文字情報 けんさく条件入力』

 https://houmukyoku.moj.go.jp/KOSEKIMOJIDB/M01.html


 お気づきかもしれないが、常用漢字表が文化庁かんかつであるのに対し、こちらは法務省かんかつとなっている。

 つまりこちらは目安ではなく、「法的拘束力のあるルール」だという事になる。

 具体的には〝氏名の文字は、常用漢字、人名用漢字、平仮名、および片仮名とする〟となる規定が、戸籍法施行規則第60条によって定められている。

 よって、


  • この定義にはずれる漢字では、戸籍登録することができない

  • ゆえに現代が舞台の作品では、


であるわけだ。

 もちろん、必ずしも沿っていなくてもストーリーにはあまり支障が無いだろうが、少なくとも現実には即さない設定だと言える。

 たとえば〔倶〕は意外にも、常用外かつ非人名用の漢字につき、〝いやさん、あんたそれじゃガチのめいやろ〟とツッコミ入れざるを得ない(

 もっともそれをさかに取って、不審者さがしの糸口とするトリックも成立するかもしれない。

 それと姓については人名用漢字の制限を受けないので、むしばみ一族とこまばみ一族、あんたらはギリギリセーフや(


 なんにせよ、リアリティを追求したい作家や読者にとっては、重要なポイントとなるだろう。


   📍漢字の使用当否の調べ方


 常用漢字や人名用漢字に該当するかどうかは、次のサイトで漢字けんさくすれば確認を取ることができる。


 🌐 『漢字辞典オンライン』

 https://kanji.jitenon.jp/


 残念ながら、一部の変態的()な読みや漢字については掲載されていないものも有るが、標準的な読みかどうかだけ確認できれば十分だろう。

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