1-1-2.補助的な文字

📖この節では、次の項目について説明する。

  【ちょうおん

   🖈長音符の本来

   🖈現在での長音符の用法

  【おど

   🖈踊り字の一覧

   🖈踊り字における留意点

   🖈二字式踊り字の実装方法

  【かんこうせいじゅつ

   🖈漢字構成記述の展望

  【がいらいおん】⛏

   🖈英語向け表記はお控えなさって

   🖈アイヌ語向け表記もお控えなさって



      †



📕【ちょうおん

 〈直前の一音を間延びさせる事を示す記号〉の意。

 〝長音符〟〝範囲符〟がこれ。



   📍長音符の本来


 特に会話文や歌唱文を、より忠実に表現するためのもので、これを繰り返し記号たる「おど」として転用するのは、本来の用途ではない。

 たとえば「あんな」を{あーんな}と記述するためのものであって、「ああする」を{あーする}と記述するためのものではない。

 繰り返しを表現したい場合には、そのための物である「おど」を用いて{あゝする}とするべきである。


 なお{長音符}は当初、外来語の表現のために、カタカナ向けに考案されたもの。

 それ以前では「ゲエムスタアト」のように、おんに相当するで書いていたわけだが……こっちのほうがカッコよくないか?(


   📍現在での長音符の用法


 ただ、口語という観点においては〝崩してなんぼ〟というところも有るので、許容されるべきとも思われる。

 また{範囲符}も、本来は「1から5」のよう範囲を示すために用いる符号であるが、近年では長音符としても許容され、{あ〜〜〜〜んな}のように長音を複数回繰り返す場合にとくに用いられる。



      †



📕【おど

 〈文字の繰り返しを示す記号〉の意。


 飽くまで「繰り返しであることを特に強調するための記号」であって、繰り返しの際に必ずそうしなければいけないわけではない。

 たとえば「などなど」は正式には{などなど}で、当然そのように書いてよい。


   📍踊り字の一覧


 次のようなものが有る。


  • 同の字点:直前の漢字1字の一回繰り返しを示す

  • 々々多重同の字点:重ねた分の文字数の直前の漢字の一回繰り返しを示す

  • 一の字点:直前のひらがな1字の一回繰り返しを示す

  • 濁一の字点:直前のひらがな1字に濁点付加しての一回繰り返しを示す

  • 片一ノ字点:直前のカタカナ1字の一回繰り返しを示す

  • 濁片一ノ字点:直前のカタカナ1字に濁点付加しての一回繰り返しを示す

  • 二の字点:1フレーズが2回繰り返される読みの漢字である事を強調する

  • 〳〵くの字点:2字以上のまじりフレーズの一回繰り返しを示す

  • 〴〵ぐの字点:2字以上のまじりフレーズに濁点付加しての一回繰り返しを示す

  • 小くの字点:くの字点が使用できない場合に代用する

  • 小ぐの字点:ぐの字点が使用できない場合に代用する

  • ノノ字点:直前の文や文節の一回繰り返しを示す

  • どう:表欄において直前欄と同一の内容である事を示す


   📍踊り字における留意点


 基本的に、「○の字点」との名称の{○}を崩した字形。

 それが漢字やのように見えるものも含まれるが、の定義に有る「ずいするはつおん」を決まって持たないため、飽くまで記号に分類される。

 ただし{どう}に限り、〔同〕の俗字として成り立ったものであるので、例外的に漢字に分類される。

 とはいえ、示したとおり表中に限定して用いるものであるため、〝ここにどうを入れてください〟のように「どうの字そのもの」に言及する場合を除いては、基本的には文中に登場する性質のものではない。


 また例えば「そもそも」は〔も〕、「ゆめゆめ」は〔ゆめゆめ〕を一字に集約したものであり、そのため{そもそも}{ゆめゆめ}と表記しようとすると実際には「そもそもそもそも」「ゆめゆめゆめゆめ」の意となってしまうので適切ではない。

 これらについて、しかしあえて繰り返しである事を強調したい、という場合に「そもそも」「ゆめゆめ」と{二の字点}を用いる。

 なお、繰り返さないで書きたい場合には「も」「ゆめ」と書くのが自然であり、これを「そも」「ゆめ」と書いてしまうのは決して許されない、とまでは言わないが、成り立ちを考えると正直どうかと思われる。


 {〳〵くの字点}{〴〵ぐの字点}は二文字で表現するため、基本的に縦書き用とされる。

 しかし、それらが適応しない場合に代用する目的で、{小くの字点}{小ぐの字点}が用意されたものの、正直これらはひらがなの「く」「ぐ」とほとんど見分けがつかない。

 そのためまじりかにとらわれず、「ようしょようしょ」や「ようしょようしょ」のように、{同の字点}を重ねて代理する例がみられる。


   📍二字式踊り字の実装方法


 なおWebウェブブラウザで表示させる場合であれば、CSSで


      SPAN.hz-vertical

   {

     display: inline-block;

     vertical-align: middle;

     writing-mode: vertical-rl;

     text-orientation: upright;

     line-height: 1em;

    }


からのHTMLで


    <SPAN class="hz-vertical">〳〵</SPAN>


のようなスタイル指定で横書き表示にも対応可能ではある。

 というわけで『カクヨム』さんよろしくおねがいしますね(



      †



📕【かんこうせいじゅつ

 〈漢字の部品を列挙する時その構成を視覚的にわかりやすく示す記号〉の意。

 〝⿰⿱⿲⿳⿴⿵⿶⿷⿸⿹⿺⿻〟などがこれ。

 [IDCアイディーシーIdeographicイデオグラフィック Descriptionデスクリプション Charactersキャラクター)]と書いて同義。


 たとえば〔字〕という字を部品に分解しようとするとき、{宀+子}のように表記できるが、これだと部品それぞれでの位置関係がつかみづらい。

 それが{⿱宀子}のように表記されれば、位置関係もはっきりするだろう、と考案されたものである。

 これにより複雑な漢字でも、たとえば〔戀〕を{⿱⿲糸言糸心}のように入れ子によって構成を明示でき、見やすさのため{⿱(⿲糸言糸)心}のようにかっを加えることもできる。

 なお空白ますを埋める順番は、漢字の一般的な書き順と同じく「部首→左側→上側」の順で優先となる。


   📍漢字構成記述の展望


 ところで、このIDCについては字形として既に定義されているものなので、そのままでの転用はできないが、Unicodeユニコードの文字空間はまだまだ余っている。

 そこでIDCと同様の構成結合を、表示上で実際に行なう〝構成結合文字〟を新たに定義することで、「自分で新たな字を作る」という事がコンピュータ上でも可能になるのではないか、という想像をしたりしなくなかったり。

 そのようにした場合、たとえば[⿱{⿰(⿱林林)(⿱林林)}{⿰(⿱林林)(⿱林林)}](どんだけ木を生やしたかったんだよ‼)のような、コンピュータには未登録だが筆記上にはみられる特殊な字も、標準で表示できるようになるだろう。



      †



📕【がいらいおん】⛏

 〈外来語の本来での発音に極力沿った表現を日本語ので表記する方法〉の意。


 先に忠告しておきますが、基本的に「」(


   📍英語向け表記はお控えなさって


 たとえばV音を「濁ワ行(ヴァヴィヴヴェヴォ:正式にはヷヸヴヹヺ)」で表記する方法は、一般に知られているでしょう。

 加えて、ハ行以外のに半濁点をすことによって、ほかのさまざまな英語表記をもなるべく崩さないまま仮名表記できるようにしよう、という試みがございますの。

 次のような表記が考案されておりますのよ。


  •  カ゚ 行:Ng音をあらわす

  •  サ゚ 行:Ch音をあらわす

  •  ザ゚ 行:Th音をあらわす

  •  タ゚ 行:Tu音をあらわす

  •  ラ゚ 行:L音をあらわす

  •  ヷ 行:V音をあらわす



 これによれば、「churchチャーチ=サ゚ーシ゚」「birthバース=バーズ゚ 」「tuningチューニング=ツ゚ーニンク゚ 」「levelレヴェル=レ゚ヹル゚」というようになりますわね。

 ただ、「一応このようなものもある」ということでご紹介いたしましたが、しかしながら一般にはおそらく、ほとんど通用しないことでしょう。

 なにより多くのデジタル環境、特に縦書き表示において、これらの表記はあまり正常には表示されないことと存じます。

 ゆえに、少なくとも現時点では控えておくのが賢明でございますわ。


   📍アイヌ語向け表記もお控えなさって


 アイヌ語表記向けとしても、「サ゚セ゚ツ゚ト゚」のような半濁点文字、および「ㇰㇱㇲㇳㇴㇵㇶㇷㇸㇹㇷ゚ㇺㇻㇼㇽㇾㇿ」などの小書きが用意されていますの。

 しかし、実際にこれをお出しになった場合、ほとんどの読者は読みに困ってしまうでしょう。

 アイヌ語そのものを話題にしたい場合でもないかぎり、アイヌ語表記は出さないほうが無難でございますわ。

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