4-2-3.IQ値のとらえ方

📖この節では、次の項目について説明する。

  【IQアイキュー

   🖈IQ値の不完全性

   🖈IQ値帯と統計について

   🖈IQ値帯ごとでの特徴

   🖈離れたIQ値帯に対するいんしょう

   🖈IQ値帯ごとでの価値観の差異



      †



📕【IQアイキュー

 〈IQテストによって測定された知能指数の値〉の意。


 この指数の基準は大別すると、


  • (従来型)のうすう:実齢と精神年齢の差異をはかる指標

  • へんのうすう:同年齢内での差異をはかる指標


の2つに分かれる。

 うち前者は精神年齢を測るゆえに、成年では平均値に収束してしまって実用に耐えない、とされる。

 たとえば〝IQ 500〟のようなとんでもない高IQ値が聴かれるが、子供時代に高度数学問題が解けたとき、たしかに前者の基準ではそのような判定になる。

 とはいえ、それを大人時代にまで引きずってみたところで、大人が高度数学問題を解くのはごく一般的な話なのだから、つまりしんぴょう性に疑問が残るわけだ。

 よって現在で「IQ値」とった場合、基本後者のものだと理解してよい。


   📍IQ値の不完全性


 IQ値は、テストのされ方やコンディションによって変動する。

 つまりぼくらの知能を、そこまで的確に表現できている代物ではない。

 たとえば知力の高い人でも、自分の知らない話には理解が及ばないだろう。

 逆に、自分で乗算的な考え方を思いつけない人でも、掛け算九九の習得によって、あんざんがそこそこできるようになるはずだ。


 要は、IQそのものについては前々節〖4-2-1.知能の正体〗で述べたとおり、「物事に対する解像度」とせよう。

 一方でIQテストの結果に対しては、そういった知識や経験もまた当然反映されるし、体調や精神状態だってまたしかり。

 つまり、「知能IQ」と「成績IQ値」は基本的に別物なのであって、前者を正確に測りうる方法は現在のところ、皆無。

 ゆえに〝このIQ値だからこうなのだ〟というような断定が、できるものでもないのだ。


 これから紹介する指数値帯ごとでの特徴は、飽くまで参考にとどめられるべきものである、という点をまず了解されたい。

 また「知能」と「成績」の区別のため、面倒でも表記上の「値」は、省略しない方がよいとも忠告しておく。


   📍IQ値帯と統計について


 ともあれこの指数値は、100を中心としたがね状の「せいぶん」として分布するもの。

 当然ながら、100周辺の人数がもっとも多く、高方や低方へ寄るほど反比例的に減っていく。

 一般に、その指数値帯によって次のような判定がなされる。


  •  〜69:特に低い (2.2%)

  • 70〜79:低い (6.7%)

  • 80〜89:平均の下 (16.1%)

  • 90〜109:平均 (50%)

  • 110〜119:平均の上 (16.1%)

  • 120〜129:高い (6.7%)

  • 130〜 :特に高い (2.2%)


 なお()内の割合は、全体に対するその指数値帯の人数の参考的な割合であり、100を中央として対照になっているのが見てとれる。

 ちなみにIQに限らず、〝統計的判断は、サンプル数が2000程度を超えた場合に、しんぴょう性が出てくる〟ともわれるもの。

 つまり統計とは大局的判断をするために有るもので、だから例えば100人規模のグループでは、このとおりの分布にはならない場合が多々ある。

 また、学力へん値ごとに学校生徒を区分けする場合のように、意識的に選別を行なった場合にも分布は崩れるので、局所的に見るほど参考にできなくなるわけだ。


   📍IQ値帯ごとでの特徴


 ぼくらは自身よりも、IQ値が10くらい上までの思考回路ならば、なんとか理解できる。

 視力検査において、視力の限界を超えてしまって正確にえないマークでも、おぼろげにうかがえる断片情報から実像が推定できるのと、同じような話だ。

 この「思考回路が理解できる」とは、〈正解が出ていない状態では答えるのが難しいが、正解さえ知れればそれに至る思考過程には察しがつく〉というようなこと。

 そしておぼろな視界では、それだけ判断も遅れるだろう。

 だからそのような正解を、スッと自力で出せる人こそが、〝賢い〟と認識されやすい。

 そのため、母数のいちばん多いIQ値100よりも10上、すなわち「IQ110」という事になる。


 一方で、あまりに微細なマークでは、断片情報すら視認できないのと同じように、それを超えてIQ値が20も離れてしまえば、大人おとな稚児こどもくらいに違ってしまう。

 たとえば『モンティ・ホール問題』という、設題に対する正解があまりに直感的でない、とされるパラドックスがある。

 説明が長くなるので、設題の詳細を知りたい場合にはWebウェブけんさくしてほしい。

 〝史上最高のIQ〟とされるマリリン・ヴォス・サヴァント氏が、最初にその答えを提示したとき、それは世界じゅうの学者たちから否定され、また強く中傷もされた。

 のちの検証により、その答えは正しかったことが証明されたが、その検証はコンピュータでの乱数試行の統計モンテカルロによって、やっと可能性に気づかれて始まったもの。

 要はその学者らは、彼女の「思考回路が理解できなかった」わけで、もしコンピュータが存在していなければ、彼女の〝無実の罪〟は晴らされなかったわけだ。

 なお、理解できない領域を測れる定規など発明困難であるため、彼女の具体的なIQ値は未知数だ。

 ただ、「思考回路が理解できなかった」その学者らの最高IQ値よりも最低20は上、とは推定できよう。


 このようにIQに差があると、思考力に歴然とした差が出てしまう。

 このため、たとえば高IQの子供は、学校の授業ににつき合っていれなくなり、そのせいで〝態度が悪い〟と悪評をつけられる事もよく有る。

 くわえて思考力が高いゆえに、周囲の間違いにすぐ気がついてしまい、正解をつい指摘してしまいがちにもなるが、これはとてもいやがられる行為であろう。

 そもそもなのであり、だからこそマリリン氏もまた盛大に、中傷されたわけである。

 〝バカと天才は紙ひと〟とはそういう事であり、つまりIQが高すぎると周囲からの評価は、むしろ下がるのだ。

 〝飛びぬけてIQの高い人たちは、あまり大きな功績をのこさない傾向にある〟ともわれるが、これは大功績には他者の協力が不可欠であるのに、理解されないゆえに支持者が集まらないせいだろう。

 また、認められないゆえに内向的になりがちであり、〝どうせわかってもらえない〟とのえんせい観をも抱えやすい。

 あるいは功績に魅力を感じなくなって、世捨て人にまで至ってしまうかもしれない。

 だから若いころ引きこもってたんだろ、しょかつりょうちゃんよぉ(平然とを呼んでいくスタイル


   📍離れたIQ値帯に対するいんしょう


 こうなるとIQの高い側が、手加減というか「」をしないかぎり、本当に話が合わない。

 東大入試合格者がちょうど、その平均IQ値が120ほどであるから、もし平均的なIQの人が東大生らと会話できていたなら、それは東大生側が相手を接待しているわけだ。

 もちろん接待とは非常に気をつかう事だから、それなりに利益が見込めなければする気にもならない。

 一方で、平均的なIQの人から見るとIQ値120以上の人らは、役立ちそうにもない話ばかりを細かく並べ立てる、〝使えない〟人物のように感じられるのである。


 つまりぼくらは、自身より高いIQの相手を、こんな「幼稚」な奴らの相手などしていれるかと、んざりさせてしまいがち。

 また同時に、自身より低いIQの相手へ、子供のころに大人おとなたちの雑談から感じさせられた、あの「尋常でない退屈さ」を与えてしまいがちなのだ。


 高い低いによらず〝標準的なIQよりおおきく外れる〟と思われる人は、少なくないのではなかろうか。

 もしそのような人が作家として、より多くの人気を獲得したいなら、まずは既存の人気作品をよくぶんせきして、「どの程度のストレスがっとも受けが良いのか」をあくしなければならない。

 そしてそれと同時に、「自身が楽しめる作品を書いてはいれない」ことを覚悟する必要が有る。

 まあなんだ、つまり創作にかぎらずIQは、低すぎては良くないのはもちろんのこと、高ければ良いわけでも、必ずしもなく。

 中央値100から離れれば離れるほど、人気獲得、ひいては人間関係の構築に不利、って事ですよ。

 なんてこったい右京さん(


   📍IQ値帯ごとでの価値観の差異


 その図式はもちろん、IQ値90と110の間ででも成立する。

 指数値帯が100を中央として対照分布する以上、 90の人数は110のそれとおよそ同数。

 だから〝賢い〟という事で人気者であるはずの、後者らの作品であっても絶対に、〝わけわかんなくて退屈〟との悪評が、少なからず発生してくる。

 しかし「低IQは高IQが退屈」、「高IQは低IQにへきえき」という図式は、脳の性質からくるものである以上は崩しようが無い。

 ゆえに「すべての人にまんべんなく楽しんでもらえる作品」なんてものも、作りようが無いわけだ。

 なので、そういう悪評は気にしてもかたが無いし、ただし〝退屈〟という感想はごく自然な物だから、これを憎んだりめ立てたりするのもすじ違いなのでよろしくない。


 逆に、〝どうしてこんな低俗な作品が好評を博しているのか〟という疑問を持つ人がいたならば、その人のIQは平均よりもだいぶ高いのかもしれない。

 ただし、「」という事だけは、忘れるべきではないだろう。


 このようにぼくらは、自身の属する指数値帯によって、有利にはたらく「身の振りかた」「物事の受け取りかた」というものが変わってくる。

 よって、正式なIQテストをまだ受けていない人はじゅしんをして、自分のIQがどの程度なのか知っておくことをおすすめする。

 IQテストの概要については、次節〖4-2-4.知能テストの実施〗で説明する。

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