4-1-3.意味

📖この節では、次の項目について説明する。

  【

   🖈意と意味の違い

   🖈意の食い違いによるへい

  【れん



      †



📕【

 〈意に内包された中身〉転じて〈意を説明する概念〉の意。


 思いれ物と見立てたときの、その中身思いの実体に相当する「ちゅうしょうてきなにか」であり、それでは何なのかよくわからないため、概念を使って説明付けをするもの。


 なお〔味〕は〈味覚〉〈おいしいところ〉転じて〈肝心なところ〉〈実体〉〈中身〉さらに転じて〈母体〉〈部類〉の意。


   📍意と意味の違い


 強いて言えば「=⦅食べ物のような⦆じったい」、「=⦅食べ物の味のように⦆じったいからかんれるもの」と、とらえることができるかもしれない。

 あるいは「意」は〈力〉、「意味」は〈力によって生じた効果〉と呼べるだろう。


 例として、〝偉くなったものだな〟という皮肉について考える。

 この場合、語を解釈した結果の意〈あなたは偉くなった〉と、発言者の内心での実際の意〈お前はそんなに偉くない〉とが、一致していない。

 つまり、〈あなたは偉くなった〉という意が〈お前はそんなに偉くない〉という意味を内包している、つまり一見たたえているようで実は逆にたしなめている、と解釈されることでこの皮肉は成立するわけだ。

 抽象物の説明とは非常にしづらいものであるが、この説明で「意」と「意味」の違いはつかめただろうか。


   📍意の食い違いによるへい


 ただ根本的な話、実際に言いたいことと食い違う語を選んでしまえば、それはそのまま誤解をさせる余地を生む、という事にもなる。

 この皮肉についても素直に受け取ったならば、められたとして喜ぶことだろう。

 だから特殊なねらいでも無いかぎり、語義からはずれた意味で語を遣うことは、基本避けたほう良いのだ。

 そしてそのためには、つねごろから適切な語の選択を心掛けていなければならない、という事になろう。


 たとえば、語学の分野では「せいせいぶんぽうgenerativeジェネレーティブ grammarグラマー)」という用語があって、これは〈ヒトが生まれながらにして持ち合わせている言語感覚〉のようなものを指す。

 しかし見てすぐわかるように、この用語はそのたいしょうをまったく的確に表現できていない。

 そのせいで〝すべての自然言語での根幹をなすへん文法〟のように、誤解されてもいる。

 このように〈ことば選びが不適切なせいで誤解が招かれること〉を、「へい」と呼ぶ。


 語とは意を伝えるものなのだから、きちんと伝わることが担保されるべき、というところがまず基本となるはずだ。

 だからぼくであれば、差しづめ「せんてんげんかんかくinnateインネート languageランゲージ senseセンス)⛏」とでもするだろう。

 語学者には、語のエキスパートであることが期待されるように思う。

 にもかかわらず、語を扱ううえでっとも肝要と思われるこの基本が、どういうわけかとくできていない場合がしばしばみられるわけだ。

 専門分野であるほど、正確性を欠いたら困るだろうに。


 世では、〝あいまいだろうが不正確だろうが、伝われば問題ないのだ〟などと豪語する人が絶えないものだが、それは「」と指摘しておく。

 なぜそんなに自信満々でいれるかはいまいち不明だが、自身のことば選びを検証しない人はそれによる結果もまた検証しないゆえ、とは想像できるかもしれない。



      †



📕【れん

 〈意の本質的な部分に触れず本来伝える必要のない装飾的な意味〉の意。


 たとえば


  • そのいんぱくようこんそこよりほっしそのはつすさぜててん


ったとき、しかし伝えるべき意の本質的な部分は


  • ガチギレ


と、カタカナ4文字で表現できるものに過ぎない。

 このとき、ほかの「こんぱく」やら「ばくはつ」などの意味はすべて、伝える必要性のない[れん]に該当するわけである。


 しかし見てのとおり、装飾とは人をきつけ、その影響力を増すもの。

 つまり、伝える必要性が無いからといって、必ずしも用いる必要性が無いわけではなく、特に創作においてはむしろ最重要に近い。

 が、ともすれば人をせんどうするにもだますにも有用であり、ヘタをすると全部がれんにすぎない言葉も有ったりする。

 〝偉くなったものだな〟という皮肉は、まさにそれだろう。

 だからぼくらは、注意して聴き、注意して語らねばならないのである。


 なおこのように、〈簡潔に済むはずの記述をあえて長々と引き延ばして強調をする技法〉を「えん」とう。

 これは〈言葉のいんしょうを操作する技法〉こと「しゅう」のひとつであり、[れん]の大半はこの修辞によってもたらされるものある。

 修辞については、節〖2-5-4.語の効果操作〗で説明する。

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