第23話 暁と羅馬の外交
二日目の朝、使節団の宿営所に設けられた食堂には、早くから大勢が押し寄せていた。
「
「通訳から聞いたんだが、
「何と言っても、卓に並べられた料理の全てが食い放題と言うのが良い。ついつい食いすぎてしまう。しかし今日ばかりは、朝も昼も少し控えめにしておいた方がいいぞ。今晩の宴会では、暁の人間でも見た事がない料理が出されるそうだぞ。」
使節団の皆が騒ぎながら食事を進めるのを見ながら、クイントスが
「
そんなクイントスの卓の前で、盆を持ったマルクスが立ち止まった。
「しっかりと食っておかねば、体力も気力も持たんぞ。」
マルクスが持つ盆に乗った料理の数を見たクイントスは、また溜息を付いた。
「良くそんなに食べる気になりますね。」
「胃が痛いのは俺だって一緒だ。しかし食事だけは、しっかりと
王宮の謁見の間で、
「
クイントスの問いに対して、
「同盟まで結ばねばならぬ必要は、今の暁にはありません。羅馬と
それに対して、ミアケスがやや上目目線で意見を発した。
「しかしペルシャとの
そう言ったミアケスに対して、姜維は手を振った。
「仮定の話には、さして興味はありませんが…。しかし今のお話は、羅馬が
姜維の言葉に、使節代表の後方にいたシドニウスとラサウスが蒼白となった。
ローマ文官二人の横に並んで姜維の言葉を聞いたマルクスは、
そして直ぐに口を開いた。
「同盟を求める言葉、
それ迄黙って話し合いを聞いていた志耀が、初めて言葉を発した。
「マルクス殿。不戦協定のお話は望むところです。しかし折角遠路はるばるお越し頂いたのですから…。場合によっては、我々が羅馬と波斯国の間に立って差し上げても良いのですよ。」
志耀の言葉に、マルクスは眼を
「それは…どのような意味でしょうか?」
すると志耀は、胸の前で両の
「それにお答えする前に、一つお聞かせ頂きたい事があります。今の羅馬は、殊更に波斯国と
志耀の問いに対して、マルクスは
「それには、我がローマの国内事情があります。今のローマでは、貴族女性を中心に、絹を使った衣装が流行しています。光沢が
マルクスの言葉を聞いた志耀は、思わず息を吐いた。
「ほぅ。いつの時代、どこの国においても、女達が求める物に対しては、男達は逆らえないと言うことですか。……と言うことは、二国の戦いに、知らずして暁も
志耀の言葉に、マルクスは慌てた。
「加担などと…。とんでもない事です。我らは決してそのように思った事はありません。」
志耀は、そんなマルクスに笑い掛けた。
「そのような事情があると知ったからには、暁も
マルクスとクイントスが顔を見合わせ、
「分かりました。我らだけでは決めかねますので、帰国後に皇帝陛下にお伝えして、
使節団の宿営所にある会議室に戻ったローマ代表の五人は、互いの顔を見合わせた。
「何か、上手く丸め込まれたような気もするのだが…。暁が間に立った場合、ペルシャに持ち掛けるのは、絹の安全な輸送を保証する事の筈。そうなると、商人達がペルシャを通る際には通行税を払う事辺りを、落とし所と考えているのではないでしょうか。そのような事、我が皇帝陛下に申し上げても大丈夫なのでしょうか?」
そう言うクイントスに、マルクスが言った。
「まだ終わってはいない。今晩行われる
志耀の居室では、姜維と華真が志耀と向かい合っていた。
「交渉の持って行き方、あれで良かったかな…。お二人は、どう思われますか?」
志耀が発言を
「見事な
それについては、場の全員が頷いた。
それを見た志耀が、一同を見回した。
「うむ。女の欲と言うものは、時として男を
そう言って志耀が華真に眼を向けると、華真が笑みを浮かべた。
「ご
「それで、波斯国の方から、今になって暁に通商交渉を求めて来ているのですね。そうであれば、この交渉に羅馬を
姜維の言葉に、志耀は興味深げな表情で先を
「羅馬も交渉に加わってくれれば、暁は波斯国に支払う通行税を羅馬と
姜維は、そう言った後で、何かを思い付いたように言葉を足した。
「羅馬における絹の
それについては、華真も大きく
「しかしながら、問題は羅馬の皇帝がこの話に乗るかどうかですね。羅馬にも大国の
そう言って
「羅馬の皇帝の
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