第22話 羅馬の驚愕
使節団の代表五人は、
「どういう事でしょうか?我々全員に暁の軍備を見せても良いなどと…。普通ならば、軍備というものは最高機密なのに…。」
文官長のクイントスが首を
「ローマに対して、胸を張って誇れる軍備など無いからでしょう。だからこそ並みの兵器を我らの前に
シドニウスの言葉に副官のラサウスが
「
マルクスの言葉に、クイントスも
「それに先程会ったあの
すると、後方から二人の意見を否定する声が掛かった。
声の主は、シドニウスだった。
「それは、我らローマの事を良く知らぬからでしょう。マルクス殿も、クイントス殿も、暁を過大評価しておられます。所詮は、蛮族の国ではありませんか。」
「今からの視察で、お前の言う事が正しいかどうかが直ぐに判る。しかし、最初から相手をみくびって
ローマ使節団の全員は、成都の
演習場の横にある広場には、投石機、
それを見たシドニウスが、ふんと鼻を鳴らした。
「特別に珍しいものではないな。まぁしかし、ペルシャとは同程度と言ったところか。」
弓兵達が手にする弓を観て、ローマ兵達の中からざわめきが起きた。
弓兵が持つ弓には、中央に弓を固定する台座が取り付けられ、
使節団の前に立った暁の将校が、弓兵達が持つ弓について解説した。
「
草原に向けて円形の木の的を抱えた兵達が走り出し、草原の中に等間隔に距離を取って的を設置して行った。
的の設置位置を見て、ローマ兵の間に
「本当にあのような距離にまで、矢が届くのか?」
弓構えの号令と共に弓兵達が地面に並行に弓を構え、
そして、撃ての合図と共に一斉に矢が放たれ、全てが草原の的に吸い込まれた。
自分達の想定外の距離にまで到達した矢を見て、ローマ兵達は息を呑んだ。
次に登場した弓兵達は、先程とはまた異なる形状の弓を手にしていた。
「これは…? 弓の台座に三本の矢が取り付けられている?」
ローマ兵の中から、また
今度の弓兵達が弓を構えたのは、先程の弓兵達とは異なり、前方の草原では無く後方の林の方角だった。
合図と共に放たれた無数の矢が、林の中に吸い込まれて行った。
おぉ、と声を挙げたローマ兵達が視線を暁の弓兵に戻すと、弓兵の手元の弓には次の三本の矢が既に装着されていた。
そこで、解説の将校が声を挙げた。
「
解説の声に、ローマ兵達は眼を
最後に登場して来たのは、弩弓の三倍近いの大きさを持ち、地に据え付ける
三人の弓兵によって運ばれて来たその大型の弓は、二人の兵によって三脚が地に据えられた。
そしてもう一人が、大槍に等しい巨大な矢を台座に装着した。
矢の中程には、
合計十台の兵器が横に並び、ローマ使節団たちの視線がそれらに釘付けとなった。
構えの号令と共に、
撃ての合図と共に、十台の兵器から一斉に炎を
放たれた矢は草原の遥か向こうへと飛び、その先にある岩場の大岩に突き刺さった。
そして、直後に周辺に炎の球を
「
将校の解説の声を耳にしたローマ使節団の誰もが
視察の列の一番前にいたマルクスが、横に立つシドニウスとラサウスに眼を
武官の二人は共に眼を見開き、膝を震わせながらその場に立ち尽くしていた。
視察を終えた使節団が王城に戻ると、与えられた会議室に代表五人が再び集合した。
集まった五人は、
するとシドニウスが、全身を震わせながら立ち上がった。
「このような事があって良いのか。遥か極東の国にこのような武器が存在するなど…。」
マルクスは、震えの止まらないシドニウスを
「
マルクスの言葉を受けた二人はびくりと硬直し、
「勝てません。例え二十万の軍勢で
そう言ったシドニウスに続いて、ラサウスが言葉を繋げた。
「しかも、あれが暁の軍備の全てとは思えません。マルクス様が言われた通り、我らが乗って来た鉄甲船の事を改めて考えると、暁には本日我らが眼にした以上の恐ろしい兵器が存在している可能性があります。」
その言葉を聞いて、マルクスはシドニウスとラサウスの肩を叩いた。
「二人共良く言った。負けず嫌いながらも、勝てぬ相手には
マルクスからそう言われても、凄まじいばかりの武器の威力を見せ付けられた他の四人は、一様に腰が引けていた。
それを見たマルクスが、
「何を
マルクスから
「しかし、交渉の方向はどうしたら良いでしょう?。過日送った使者に対して、既に暁は同盟を否定しています。非戦協定ならば良いというのが、その時の暁の回答です。」
そうクイントスに聞かれたマルクスは、意を決した眼で二人を見た。
「非戦協定で結構だ。ペルシャと交易折衝まで行おうとしている暁が、
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