第19話 司馬炎の復帰
『司馬炎殿。半年の
徐苑からの
「困ったな。しかし徐苑殿からこのような文が届くという事は、徐苑殿は既にこの事を
そう
数日後、司馬炎は郡主の館からの呼び出しを受けた。
館では、郡主の
「いきなり
夏侯舜は、全てを察している様子の司馬炎を
「何だ、もう既に
それを聞いた司馬炎は、小さく
「分かり申した。本来ならば夏侯舜殿の下で、時には必要となる汚い仕事に身を
それを聞いた夏侯舜は、はっきりと首を横に振った。
「私などの下に貴方がいるのは
夏侯舜に頭を下げられ、司馬炎は苦笑した。
こうして司馬炎は、成都へと向かった。
成都では、帝の
司馬炎の顔を見るなり、姜維が言った。
「早速にも司馬炎殿の意見を伺いたい件が
徐苑から羅馬よりの申し入れを聞かされた司馬炎は、小さく眉を上げた。
「ほぅ。羅馬は、暁国の軍備のあり
そう言う司馬炎に向けて、姜維がどうしたものかという
「せっかく遠方から
司馬炎は少し考えるように眉を寄せてから顔を挙げた。
「ただ見せるのではなく、しっかりと見せつけるのが良いと思います。」
それを聞いた姜維が、驚いた表情になった。
「ほぅ、見せつけると…。それは
「羅馬も、先を考えた上での申し入れでしょう。将来に於いて暁と
司馬炎の言葉に、姜維は眼を
「それを承知の上で見せつけるとは…。何をお考えですか?」
司馬炎は、顔に巻いた包帯に一度手をやると、自分の考えを語り始めた。
「今の羅馬軍のあり
そこで一旦言葉を切った司馬炎は、座に居る皆を見回した。
「弓矢などの飛び道具については、羅馬は、今の暁には
それを聞いた姜維が、難しい表情になった。
「いや、しかし…。そうであれば
しかし、司馬炎は姜維に向かって首を振った。
「確かに…。両国が
ほぅと顔を挙げた姜維を見て、司馬炎は更に言葉を繋げた。
「それと、今から申し上げる事は…。そこ迄する必要があるかは分かりませんが…」
今度は華真が、興味深げな眼を司馬炎に向けた。
「まだ何かお考えなのですね。是非お聞かせください。」
司馬炎は、軽く唇を
「暁は今、西域で国境を接する国々と共に、その先にある
ずっと黙って聴いていた志耀の眼に、司馬炎に対する
「司馬炎殿は、恐ろしい方ですな。そこ迄考えが回るとは。徐苑殿は、今の司馬炎殿の
志耀からそう問われた徐苑は、司馬炎に
「正直、呆れ返っております。私が一年あまり共に話を交わして来たお人が、このように恐ろしい方であったとは今迄気付きませんでした。今の羅馬は、自国領土以外に手を伸ばす余力は無いと思います。しかし隣接する波斯国については、厄介な相手と考えているのも事実。司馬炎殿のお考えには、
それを聞いた志耀は、今度は華真に視線を移した。
「ふむ。今の提案、どう思います?異論はないですか?」
その問いに対して華真が深く拝礼するのを見て、志耀は
「それでは、羅馬使節団に暁の軍備視察を許可する事にしましょう。。姜維殿、どうせやるなら派手にやって下さい。只見せるだけでなく、実際に武器を使う場面も視察して貰えば良い。そういった場を見なければ、威力は伝わらぬでしょう。」
志耀の元から下がった司馬炎は、共に
「
「帝の日常には、呂蒙様と王平殿がいつも付き添っております。呂蒙様が、
華真の言葉に、司馬炎は小さく笑った。
「呂蒙様ですか…。あの方からは、以前に炎翔が
「元気も元気。事ある
それを聞いて、司馬炎が首を
「はて…。炎翔は医術の道に進むと、伝え聞いていますが…」
「その通りです。ただ呂蒙様は、まだ
「炎翔には随分と過分な評価ですね。しかし
華真は立ち止まると、司馬炎に向き直った。
「炎翔は、必死に
「いや…。医術の事など私には分かりません。しかし
そう言うと司馬炎は顔を挙げ、
華真が自分の
「
その報告に華真は驚いた。
はて?華鳥の店ではなく、直接私の所に来るとは…。
珍しい事もあるものだ。
これは、羅馬の事を嗅ぎつけてやって来られたのかな。
応接の間に入った華真に向かって、父の華翔が片手を挙げてにっと笑った。
「久しぶりだな。お
「妻子がある訳でもありませんし。独り身で王宮内で暮らすなら、人手はそれ程必要とはしません。各部署への連絡の為に、一人だけ
「三度の飯なんかは、どうしてるんだ?」
「王宮には、
「何だ。帝と一緒に飯を食ってるのか? 結構良いものを食ってるんだな。」
「
「ふぅん、そんなもんなのか。」
意外そうな表情で
「親父殿が急に会いに来られたという事は、何か特別な用件がお有りと思いますが…。」
すると華翔は、にやりと笑った。
「なんか面白そうな事が起こってるじゃねぇか。羅馬から使節団が来るそうだな。」
やはり、もう嗅ぎつけていたか…。
楽しげな笑みを浮かべる華翔を見ながら、華真は苦笑した。
「華鳥の亭主から、新しい香辛料を手に入れたいという依頼があってな。俺の方から送った物について追加を頼んで来る事はあっても、
「そういう事でしたか。それならば、親父殿も羅馬の事については色々ご存知でしょう?是非、今後の羅馬との折衝について、ご助言を頂きたいですね。」
そう言った華真に向かって、華翔は大きく手を振った。
「
華翔の反応を見て、華真は怪訝な顔つきになった。
「ならば、どのようなご用件でやって来られたのですか?」
「お
それを聞いた華真が、興味深そうな顔になった。
「ほぅ。耀春が何かを思い付いたのですね。それと親父殿がやって来られた事の間には、何か関係があるのですか?」
すると華翔は親指をぐいと立ててみせた。
「可愛い孫の為だ。俺も一肌脱いでやろうと思ってな。」
華真は、父の顔を覗き込んだ。
「ほぅ。という事は、それだけの数の皿を揃えるには、陶芸師か
しかし華翔は、首を横に振った。
「いんや。耀春が発注を出した
それを聞いた華真は首を
「それならば、何の問題もないように見えますが…。」
華翔は、
「やっぱり、お
そう言って華真の肩を叩く華翔を前にして、華真は苦笑いを漏らした。
「何かお考えがお有りなのですね?確かに
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