第5話 二人の才能
今までに見たことがない程に興奮を
「あの二人、
「ほぅ。呂蒙爺がそれほどに興奮する様子は、初めて見るぞ。それで....。あの二人の才能とは、どのようなものなのだ?」
そう尋ねる志耀に向かって、呂蒙が説明を始めた。
「
それを聞いた志耀が、ほぅと息を吐いた。
「ほぅ...。
感心する志耀に向かって、呂蒙は言葉を繋げた。
「それと、耀春の方ですが…。先程王平が、潘誕の店に馬を走らせ、華鳥殿に確認して来た事ですが...。潘誕の店に最近旅の商人達が立ち寄ったのです。図書を商う者達ですが、
志耀の眼に興味深そうな光が宿り、それを確認した呂蒙が更に言葉を繋げた。
「耀春の余りに熱心な様子を見た商人が、つい口を
志耀の顔に納得の表情が浮かんだ。
「
志耀の言葉に、王平が首を振った。
「いえ...一年半程前から、華鳥殿が読み書きと学問を教え始めたそうですが....。絵筆などは持った事はないと...。
志耀は、改めて耀春の絵に見入った。
「そうだとすると耀春は、とんでもない書画の天才という事になるな。この絵も原画は彩色画だが、耀春は墨の濃淡だけで全てを再現している。」
すると王平が、今度は別の絵を指し示した。
「
「ふぅむ...。それで…..。炎翔の方の才能というのは何なんだ?」
志耀の問いに、呂蒙が膝を乗り出した。
「あれは、先ずは記憶の天才です。実際に手にした事のある魚はともかく、薬草の方は尋常ではありません。恐らくは、華鳥殿の所有する薬草の画集にある
それを聞いた志耀は、思わず頭を横に振った。
「実際には手に取った事のない
そう言って息を吐く志耀の顔を見ながら、呂蒙が言葉を続けた。
「耀春の周囲に、書き損じや別の絵は一切有りませんでしたからな。見た記憶が無い物だけを、新しい書物から正確に探し当てたとしか考えられませぬ。それと今一つ。常人には無い洞察力の持ち主ですな。
その日の夕刻、炎翔と耀春は各々が
扉を開けようとする耀春に、ふと炎翔が尋ねた。
「耀春は、王宮の庭で俺達を助けてくれた人を、王平おじさまと呼んでいたな。
「耀おじさまが店に来る時、たまに一緒に来るもの。服装は違ったけど、顔を見て直ぐに分かったわ。」
耀春の言葉を聞いた炎翔は、その場で考え込んだ。
その時扉が開き、華鳥が姿を見せた。
「二人ともようやくお帰りね。今日は、大冒険だったようね。それにしても、王宮書庫に忍び込むなんて、本当に
耀春が差し出した風呂敷包みを解いた華鳥の眼が丸くなった。
「
「王平おじさまが、持って帰れって言って、渡して下さったのよ。」
耀春の横から、炎翔が分厚い書物を華鳥に差し出した。
「俺には、此れを渡してくれた。読み終わったら、直ぐに返すようにと言われたけど...。」
その書物を見た華鳥は、眼を
「
「
華鳥は、二人が持ち帰った風呂敷の中身を前にして首を
すると炎翔が、
「華鳥様、お聞きしたい事があります。先日、この店に尋ねて来られ、俺が
炎翔の言葉に、華鳥は再び眼を丸くした。
「
炎翔は、
「ちょっと考えれば判ります。王宮書庫に忍び込むなど、見つかれば厳罰が当然。それが、何の
「このような事を直ぐに
華鳥は、感心した表情で炎翔の顔を
翌日、志耀の元に、王平が困り果てた表情で
「
王平の言葉に少し驚いたように顔を挙げた志耀だったが、直ぐに感心した表情になった。
「ふむ...。
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