第2話 志耀の日常
「
怒りを
「食事はもう良い。着替えたら直ぐに行くよ。」
それを聞いた呂蒙の顔に、
「さては...。また
呂蒙の申し出に対して、志耀は手を横に振った。
「呂蒙爺の
その口調に挑発の色を感じとった呂蒙は、強い視線で志耀を
「何を
「ほう。此れが例の薬用の
そう問われた商人は、床に
「干して、
そう言いながらそっと眼を上げた商人は、帝座の前に置かれた箱から、志耀が一本の人参を取り上げ
志耀への説明を終えて謁見の間を出た商人は、
「全てを高値でお買い上げ頂き、誠に有難う御座います。しかし
商人の話し掛けに対して、延臣は軽く手を振った。
「新しき薬草の類が出た事を耳にされると、いつもああなのだ。ご自身で食し、直接質問せねば納得されないのだ。」
その二人の
「この人参は、直ぐに郊外の医療所に運べとのお達しだ。療養中の患者に試せと...。それと
それを聞いた商人が眼を丸くした。
「薬用人参は、
それに対して、問われた延臣は何の問題もないとばかりに小さく笑った。
「
全ての
「供の者達も、外出の準備は出来ているな?」
それに
「昼食をお済ませになった後、直ぐにお立ちになれます。」
「昼飯は、朝方私が持ち帰った
鹿皮の衣に着替えた志耀は、狩り
先頭を疾駆する志耀の後ろで、供達は必死の形相で馬を駈けさせた。
先頭で後方から追い
「しかし…….
王平の言葉に、志耀は何事もないかのような表情を見せた。
「それは、馬の質が良いだけだ。皆もこの馬ならば、私と同じように駆ける事が出来る。」
そう言った後、志耀は周囲を見渡した。
「さて、それではこの辺りで話を聞く事にするか。誰か、庄屋の所に行って、話をしてくれる者を探してくれ。今日は
「
「ほぅ、それは好都合ではないか。よし、皆。行くとしよう。」
左右に
馬を停めた志耀達は、横の林に馬を繋ぐと、稲田の二人に声を掛けた。
「仕事中に済まぬが、話を聞かせては貰えませんか?」
志耀の声に、二人は顔を挙げた。
顔に皺を刻んだ老人の横に立つ若者が、真っ黒に日焼けした顔に警戒の色を見せた。
「誰だ、あんた達は..? 新しい稲の秘密を探りに来たのか?」
稲の秘密という言葉に、志耀の眼が興味深げに光った。
「まぁ、そう言う事です。しかし決して怪しい者ではない。我等は王宮から来たのです。」
そう言った志耀は、
「
感嘆する志耀の姿を、男二人は珍しいものを眺めるようにして見た。
若い男の横で、今度は老人が尋ねた。
「ほう...。王宮の方々ですか? それでこの稲を見て、どうされようというのです?」
老人に声を掛けられた志耀は、稲穂から眼を挙げると、老人に向き合ってにこりと笑った。
「今年の夏の少雨にも関わらず、この一帯の稲田だけは見事な稲穂が実っていると聞いて
志耀の問いに若い男が応じた。
「だとしたら何なのです? 最近この稲穂を盗みに来る輩が後を絶たない。王宮の人達と言うのなら、そのような連中は取り締まって貰いたいね。」
「これほど見事な稲穂なら、盗んででも手に入れたい者も出るでしょうね。しかし盗難とは…。それは困った事ですな。放っておけば、刈り入れ前に田は丸裸にされてしまう。差しつかえが無ければ、王宮から見張りの兵達を派遣したいのですが...」
志耀の言葉に、老人が頭を下げた。
「それは有り難い事です。この稲は、
老人の言葉に、
その若い男に志耀が尋ねた。
「工夫と言われたが、それは
志耀がそう言うと、若い男が即座に反応した。
「
その言葉を聞いた志耀の眼が光った。
興味を示した志耀の顔を確認して、男は再び口を開いた。
「今の
「こ、こら...。お前、帝に文句を付けるのか...」
「事実は事実だよ。俺の言う通りに工夫してくれれば、もっと良い米が出来るよ。」
平然とそう言う若者を、志耀が興味深げに眺めた。
「その工夫、是非聞かせてくれませんか。」
王宮への帰り道で、馬を
「今日は良い勉強をした。やはり
「何を
「普及だけでは駄目だ。現場の知恵を入れ、更に工夫をせねば...。あの若者だが....農技術所に
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