第24話 料理番、ピンチを救う。
ダダダっ。
「あと少し、あと少しだっ!」
「村が見えたぞ!」
駆けた男達は柵をジャンプで飛び越えて、また後ろを振り返る。
そこを……。
ダァーンッ!
柵を体当たりで吹き飛ばして、粉々に破壊した、グランドベアの4足歩行の姿。
「グォルアッッ!」
「ひぃぃっ!」
「お助けっ!」
グランドベアが大きく威嚇をして、村の中でも屈強な男達がしりもちをつき、そ
の場に倒れ込む。
「――っ!」
危ない。そうとっさに判断した獣人の子は、何も考えず、恐れずに飛び掛かった。
「やっ!」
ギィン。
「……!」
渾身の力とスピードを込めて、一気に飛び掛かったはずだった。
縦に大きく振り下ろした爪は、グランドベアの爪によって弾かれ、そのまま通り
過ぎて着地する。
あの馬鹿でかい図体の癖して、とてつもない速さ、動体視力、細かい爪の動作を兼ね備えている。
そう思った彼女は、瞬間的に体が硬直して、見つめ合ったまま、距離をそのまま保つ。
「にげて!」
「あ、ありがてぇ!」
「ふひゃああ!」
彼女が叫んだその背を見つめて、情けなくも男達は村の方向へと、一目散に駆け出した。
501。
ヤツの頭の上に表示されたダメージ表記を見て、彼女はちゃんとダメージが入った事を確認する。
どれだけダメージを与えれば倒せるだろう。あと何回攻撃を……。
ちょっと思考を巡らせていた瞬間、いつの間にかヤツの姿が消えていて、ハッと
気が付いた時には、自身の目の前で、大きく振り下ろしてきた爪の刃が、彼女の瞳に映った。
「――あッ!」
ザシュ。
一撃入った。思わず両腕を上げて、カバーしようと思ったところに入った。とっさの事でどれだけのダメージが入ったか、分からなかったけど、これだけは分かる。
かなりHPを持っていかれた。あまりの威力のままに体が吹っ飛んで、よく一撃で死ななかったと思うほどに、激痛をおこし、空が見えるほどに宙を舞って、衝撃を理解した。
「やぁぁ……」
どん。と地面にぶつかり、ぐるぐると地面を回転する。止まったけど、床に伏せたまま目が開けられない。頭から血が流れてる気がする……。ヤツが少しずつ、ずしん。ずしん。と音を立てて近づいてくる感じが、地面の揺れでちょっと分かる。このままじゃ死ぬ……。
「れ……お……」
彼女はとっさにそう呟いた。そう自分の吐いたセリフにまた、ハッとなって気が付く。
自分はまた、彼に助けを求めてしまっているんだと。弱いままの奴隷なんだと。
それでもいい。また甘えたい自分に素直になってしまった。もう死ぬかもしれないから。
「れお……、れお……、れ……お……」
目に涙をにじませて、草むらをぎゅっと掴み、苦し紛れに息を殺した。少しずつ近づいてくる、ヤツの足音がついに目の前まで来た時、瞳を大きくつぶって、最後の瞬間を我慢しようとした。
ギィンッ!
「やぁ、大丈夫かい?」
彼女が目をかっぴらいたその先に、レオがフライパンを両手で持って、振り下ろされた爪を真正面から、防いでくれているその姿が見えた。
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