第15話 料理番、再戦闘をする。

「ブモモッ!」


 がさがさと、草むらを分けてモンスターが僕達の前に現れる。


「光の精霊さん、精霊さん。あの敵のステータスを鑑定してくれるかい? 光魔法、チェックザフラッシュッ!」


 パシャリ。


 【ワイルドボア】ボア種2世代進化体。  <LV.5>  危険度E。


 ボアが成長を遂げて進化した姿。大きな牙が前へと突き出し、強力な突進により危険性の高かった個体が、一本大きな角を生やして、脚力を強化した事で、更に危険度は増している。上等な肉質を保有しているがゆえに、冒険者が出会いたいモンスターNO.1との呼び声が高い。


「ワ、ワイルドボアだ……!」


「ブモッ!」


 コイツの味は一級品。それは分かってる。昨日ほど、奮発して買った記憶が蘇る。


 足が一足だけで金貨になる食材だ。丸ごと一頭売りつけたら、どうなるんだろう。


 相場とかはよく分からないけど……。


 っ! いかんいかん! つい失念していた。ヤツはこちらへと突っ込んできて……。


 目の瞳孔を赤く染めて、目に見える3本の牙と角が鋭く前へと尖る。ホーンラビットより速いスピードで、真っ直ぐ、直線に、僕を目掛けている。


「ここ、来いやぁッ!」


 僕は相変わらず震える手で、フライパンを構える。


「れお!」


 シュン、と一閃。


「え?」


 物凄いスピード。というより、目で追えなかった。


「ブモォッッ!」


 汚い泣き声を放ち、即座に絶命するワイルドボア。


 縦に爪が入った残像だけが見えた……。相変わらずの高威力でもある……。


 DEX値? が恐らく上がったからなのだろうか? 戦闘能力値については、あまり詳しくない。料理ばかりしてたからね。敏捷性についての記述があったし、そういう事なのかも。


『502』。


 ダメージ表記を見て、分かった事が一つある。


 彼女の素のステータスはレベル差によって、恐らくデバフを受けてしまっているが、僕の料理ボーナスは、その影響を受けないということ。


 相手がどのような強さであろうとも、関係無しの固定ダメージとなれば、グランドベアであろうとも、こちらに勝機があるということだ。


 …………。そうとなれば、僕自身レベルを上げて、料理ボーナスを上げていかなくちゃ。


 プァプァプァプァーン!


 突如、ランクアップのファンファーレが鳴り響いた。


「雷の精霊さん、精霊さん。この紙に今、ランクアップした内容を書き起こしてくれるかい? 雷魔法、ライトニングライティングッ!」


 紙の束を一枚ちぎり、空中へと放り投げる。紙はピカピカと光り、黒印字が書き起こされていった。



 レオ

 料理人【LV.4】※ランクアップまで、残りEXP1。

 前回の獲得経験値45。

 HP:15(+900) MP:20(+300)

 STR:8(+500) DEX:8(+1500) INT:16(+500) LUX8(+500)

 詠唱魔法の効力が上がりました。一部、隠されていたワードを表示します。



 ???

 【LV.4】※ランクアップまで、残りEXP1。

 前回の獲得経験値45。

 HP:23(+900) MP:12(+300)

 STR:24(+500) DEX:18(+1500) INT:9(+500) LUX:18(+500)

 スキル:【食事効果】~ホーンラビットのとろけるシチュー~スピード系パラメータを大幅に上昇させる。呪い除けの加護を発動させる。スタミナ2時間無敵化。雷属性抵抗強化小。脚力強化大。雷属性へのダメージ強化小。経験値ボーナス大(倍率3.00)。

 装備:『アークサリナ』の呪縛印。対象の心臓を残りあと3日までに死滅させる。呪鍵×(9-1)



 うおっ! レベル2も上がってる! 経験値ボーナス3倍はやっぱりでかいな。


 それに……、この子に対して、呪いを掛けた人物の名前が表示されたみたいだ。


 アークサリナ。聞いたことある気がする。どっかで。


 うーん……。でも、分かんないや。


「ピギィッ!」


 そうこうして首をひねっていると横の草むらから、ホーンラビットが飛び出してきた!


「うわ! 光の精霊さん、精霊さん。あの敵のステータスを鑑定してくれるかい? 光魔法、チェックザフラッシュッ!」


 パシャリ。


 【ホーンラビット】別名:ツノウサギ。  <LV.3>  危険度E。


 さっきの個体より、レベル低いみたいだ。料理ボーナスが無かろうともレベル差あるし、料理ボーナスで多分余裕だろうな。


 目の瞳孔は真っ赤で、こちらを睨み続けている。ワイルドボアを倒した余韻をもうちょっと浸らせてくれとは思ったけど、自分のレベルより弱いモンスターなら、大歓迎。


「れお! やっちゃっていい?」


「ああ! 頼む!」


 爪をシャキーンと、立てて臨戦態勢に入った彼女を見て、俺は指示した。


 今のうちに、レベルを上げるだけ上げとかないと。

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