第23話

「罪を……告白する?」

 アカが言う。

「つ 罪って、一体何の……?」

 アイも言う。

 蒼斗も、他の皆も何も言わないで、黙ってガラスで仕切られた室内を見ていた。あの部屋の奥にある机の上、そこにあるマイクに向かって、自分の罪を告白する。だが……

 蒼斗は目を閉じる。

 罪、いくつかの事が思いつく、ネット対戦のゲームで、所謂ハメ技で勝った事、バイト先で休憩時間を、時間が過ぎたのに気づかないふりをして休んでいた事、高校の頃には授業中に居眠りをした事もある、だが……

 きっとあのマイクに向かって言うべき『罪』は、そんな事では無いのだろう。

 蒼斗がそんな事を思っていると、またしてもスピーカーから声がする。

『一番』

 またしても男の声。

『大きな』

 今度は女の声。

『罪です』

 最初とは別の男の声。

 バラバラにされた単語が次々とメッセージを述べていく。

『人生で』

『一番の』

『罪です』

『もしも』

『一番の』

『罪』

『では無い』

『罪を』

『告白』

『しても』

『すぐに』

『解ります』

 声が言う。

 すぐに解る……

 つまり相手は、こちらの事を知っている、という事なのだろうか? 蒼斗は思ったが、それを口に出すよりも早く。

『もちろん』

『嘘を』

『ついても』

『すぐに』

『解ります』

 声がまた響く。

「……嘘を付いたら、どうなるんだ?」

 ミドリがぽつりと呟く。

「多分、これね」

 ユカリが言いながら、こん、と自分の顔の仮面を叩いた。そのまま首の前で、右手で何かが弾ける仕草をしてみせた。つまりはこの仮面が爆発して死ぬ、という事か……

 蒼斗はぎりっ、と歯ぎしりした。この下らない『ゲーム』を思いついた人間は、一体……

 一体何処まで、自分達の命を弄ぶつもりなのか、それに……

「どれだけ、俺達の事を……」

 蒼斗は呟く。

 そうだ。

 この『ゲーム』の主催者は一体、どれだけ自分達の事を知っているのだろう?

 嘘の『罪』を告白すれば、すぐに解る。

 そう言うという事は、やはり相手は自分達の事を……

 そして……

 そして。

 あの黄島悠斗の過去の映像。

 あれを写した、という事は多分……

 多分……


『それでは』


 声がする。


『ゲームスタートです』


 それと同時に……

 がち、と。微かな金属音が響いた、どうやら、ガラスで仕切られたあの部屋の扉が開いたらしい。

 全員が、黙って音がした方を見る、確かにそこには取っ手のついた扉があり、どうやらそこから中に入れそうだ。誰も何も言わず、黙って扉を見ていた。

 ややあって。

 蒼斗は、ゆっくりと……

 ゆっくりと、歩き出す。

 そして。

 蒼斗は、ノブに手をかけ……

 勢いよく、扉を開けた。

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