ラゼラータ名物!魚の臓物煮!

 ラゼラータはその土地柄、魚料理が多い。新鮮な魚はビタミンも取れるからと生で食べられることが多く、生で魚や卵を食べるためだけに専用の殺菌装置まで作るくらいには、みんな生のものが好きだ。


 そんな中、時折やってくる旅人や、新しく住民となる人のために、生では無い料理を作ろうとなった。


 しかし、肉は最初から焼くし、卵も加熱調理をする。魚も基本的に全部生で食べる…そう、料理の幅が狭いのだ。


 いや、魚も加熱しろよだの組み合わせあるだろなんて言われるかもしれないが、この国の人はそんなことを考えない。


 悩みに悩んで、結果的に、生で食べられることの少ない内臓を煮て食べるのはどうか?という案が出た。


 国の人は、それは名案だと喜んだ。いや、だいぶ迷ってる方の迷案だけど。


 そうして出来上がったのが、沖合で捕れるガリルルという魚の内臓の煮付けだ。


 ガリルルは、この国でもっとも多く食べられる魚で、大きな体の割に骨が少なく、非常に食べやすい。白身の肉は脂身は少ないが、味が濃縮され、生で食べると、ほろりと崩れ、口中に旨みが広がるのだ。


 そんなガリルルなのだが、問題はその内臓がかなり臭うところだ。血合いも多く、好き好んで食べる人は珍しい。


 しかし、味は良い。ので、煮付けの味付けをどうするかでかなり議論は加熱した。そこで考えられたのが…


 ガリルルの煮付け、生姜とレモンたっぷり爽やか煮。だ。


 ガリルルの内臓は前述の通り、血合いのせいでかなり癖が強く、臭いも気になるものだ。それを大量の醤油と酒で一気にかき消す。しかし、それだけでは内臓の良さが出ず、臭いも消しきれない。そこで、生姜とレモンの絞り汁をたっぷり使うことで、臭いを消し、濃くなりすぎた味を和らげ、食べやすくするのだ。


 …では、実食と行こう。


 まず、箸の通り。その体躯に見合う大きな内臓は、張りはあるが固くなく、箸で簡単に切れる。それを口に入れ、1口噛むと、ぶりんっ。とした食感と、濃厚な旨みが湧き出してくる。普通ならここで襲いかかってくる臭みは、生姜と酒で打ち消されている。更に、たっぷりの醤油でだいぶ濃くなった味は、レモンの酸味でだいぶ和らぎ、ここまでやってなお爽やかな印象を与える…


 こうして、ラゼラータの新名物が生まれた。しかし、新たな問題として、今度は国中で煮付けブームが起きてしまったのだ。


 そのせいで、巻き起こる事件も…まあ、それはまた別のお話だ。

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