夢の入った玉

 昔からガシャポンなるものが好きだ。


 昔住んでいた国には、その周りの国にもなかった文化。記憶のある限りの昔、どうにも好きなことが見つからず、子供ながらに淡白でつまらない生活を、あれは変えてくれた。


 子供でも気軽に出来て、何でも出てくる魔法の箱。この国で人気の、ある漫画のキャラのように、何でも出てくる凄いもの。


 大人になって、稼ぎが増えてからはその熱はさらに加速した。特に、中身も大事だが、カプセルを大事にするようにした。メーカー、中身、値段でもカプセルの形は変わり、年代でも少し違いが出る。1部マニアは、パッと見でそれらが全てわかるというのだから、どうにも凄い。


 さてまぁ、稼ぎのほとんどをガシャポンにつぎ込む程に心酔している私だが、最近悩みができた。行きつけの店で、私目当てに来る客がいると聞く。


 何故って、古いガシャポンのカプセルや、景品をコレクションしている事がバレてしまったからだ。


 ガシャポン屋の店主も、もう何年もの付き合いでたまに被ったものを交換したり、休日には別の店に遠征に出かけたりと、親しい仲になり、私のコレクションの写真を見せたり、話をする度に盛り上がってしまう。そのせいで、他の客に見られ、そのコレクションを寄越せと、売れなどと戯けたことを言い腐るやつがいる。


 私も、店主も声を荒らげてふざけるな!と、一喝したが、彼らは堪える素振りも見せず、薄ら笑いを浮かべてにへらへらと要求を押し通そうとしてくる。


 更には、あの化け物…外様の人までやってくる始末だ。


 彼ら隣人の多くは人の物を欲せず、共に暮らせど基本干渉を是としない。


 人のものが好きで、共に仕事をして自分で買い求めるものもいるが、まさかこんな厄介な外様もいるのかと私は少し唖然とした。


 そうして、事は起きた。なんとあの阿呆共が店のガシャポンマシンをばったばったとなぎ倒したのだ。


 何事か問うと、欲しいものが出ないからと、そもお前が俺たちにコレクションを寄越さないからだといちゃもんを付けられた。


 もはや呆れて言葉も出ないが、見ると彼らは替子らしい。体にうっすらと鱗が生えているものと、足の形が逆関節になっているもの、他も大体姿形は人間に近しいもので気付けなかった。そして、替子であることで困ったことがある。こちらから手を出したり、相手に不利益を与えれば、下手をすれば我々が悪となってしまう。


 悩みに悩んだ末、転がってきたカプセルに、私は1つ、思いついた。


 ポケットから、家から持ってきたカプセルを出す。それを見せ


「これは、コレクターアイテムの1つだ。調べずとも、出品すればすぐに買い手がつく。持ってけ」


 と、昨日別店舗で買ったカプセルガシャなんて言う古いカプセルが出てくるだけのガチャの景品を渡す。全て持っていたものが被ったので、ほぼゴミだった。


 彼らはひゃっほいと喜び帰ろうとしたが、その時に店の前に警察が来ていて、ようやく御用と相成った。


 まぁ、そんなこんなで事は解決した。あいつらは二度と来ることはなく、今でも私は夢を求めてガシャを回す。次は、何が出てくるのか、期待に胸膨らませて。




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