神のいる世界

 この世界には、たくさんの神様がいる。大昔に、1柱の偉大な神様が5柱の神様を作り、そのなかの1柱の神様が、人間が神様を作り出す力を与えた。それから、世界にはたくさんの国と、たくさんの神様がいるようになった。


 そんな神様達には、それぞれ権能と言われる得意分野があり、私の国の神様は生命いのちと豊穣の神様だと言う。


 もちろん、マイナスな権能の神様もいて、死や殺戮、戦争の神様もいる。


 けど、たった1柱の死の権能を持つ死神様は、死んだ私たちを新しい体に導いて、転生させてくれる優しい神様でもある。転生できなかった魂は、いずれ壊れるか、怖いおばけになってしまうって話がある。


 そんな神様が、目の前にいる。


 ―事は、数時間前に起きた。街を歩いていたら、猫を見つけて、追いかけたら、道路に出て、酔っぱらいの運転する車に轢かれた。あとから聞いた話だと、ほぼ死にかけで、どうして助かったのか不思議なほどの大怪我だったらしい。


 それから手術して、すぐに目が覚めた。目が覚めたら、目の前に女神様がいた。


 …神様の容姿は、みんなよく知っている。大体が、信仰する人たちの願う姿になるので、こんな見た目だよーっと、発表されているからだ。


 それによると、死神様は綺麗なロングの銀髪にあおの眼で、右目に眼帯をつけているらしい。頭には輪っかが浮いていて、白いふわふわの羽が生えていて…要素もりもりの天使様みたいな見た目らしい。それが、目の前にいた。


 死神様は、不思議そうにその垂れた眼をこちらに向けてくる。あとたまに、左手で持った鎌で首元をつんつんしてくる。チクチクした。


 そして、死神様は口を開く。


「死んでない…」


 死んでること前提なの?


 どうやら、奇跡的に一命を取り留めたとはいえ、神様基準的には完全に死んだ判定らしい。まぁ私も死神様が見えてるから、実はもう死んでるなんて言われても信じるけれど。


 そして、死神様はまた一言呟いた


「トドメ…刺すか」


 やめてください?


 思わず、口から出てしまった。死神様もそれに驚き、振り上げた鎌をゆっくり下ろして首に添える。添えるな。


「見える…の?」


 疑問そうに首を傾げる。こう見ると、とても可愛らしい神様だなあと思った。手に持ってるものが物騒すぎたけれど。


「そっか、ギリギリ助かったの。でも見える…見えるなら、死人判定でいい気も…んー」


 死神様は考えながら、手持ち無沙汰そうに鎌を振り回す。そして手が滑って天井に刺さった。あれ、クールでかっこいい神様って話だよな?ポンコツなのでは?


「ポンコツじゃない」


 軽く拳骨される。


「まぁいいや、またね」


 そう言って、神様はふわっと、どこかに消えてしまった。…なんだったんだろうか、あれは。


 ―そして、それからまた数日がたった。この世界の技術力は本当に凄いと思う。例え骨が折れて飛び出しても、内臓が破裂しても、手術して特殊な薬を飲めばすぐ回復するんだから。


 私は、重い後遺症も無く、無事退院できた。


 そして、その私の後ろに、死神様がいた。


「暇だから、ついてく」


 やめてほしい。


 …それから、死神様は私と一緒に暮らすようになった。大変なことしかない生活だけど、その話は、またいつか。




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