ケモ耳少女の悩みを粉砕する

 不思議なことの多いこの街では、毎日事件が絶えず起こり続ける。そのなかで、特に問題となっているのが、妖精と人間との取り替えっこ。


 産まれる前の赤ちゃんを、妖精が勝手に連れていき、代わりに無から生まれた人間なのか妖精なのかわからない何かと交換される。その見た目は様々で、人間によく似たものもあれば、全身がどろけてしまい、手足や顔がない子もいる。


 かく言う私も取り替えっ子で、猫の耳と鋭い牙が生え、目つきは鋭く、毛繕いしないと落ち着かなくてたまに毛玉を吐く。そんな猫と人間のハーフのようなものだった。


 一箇所でじっとすることも、止まっているものを見ることも苦手だし、高い所に登っては降りられなくなったり、友達が悪ふざけで持ってきたマタタビで酔って、じゃれついた拍子に友達の指を噛みちぎってしまったりもする。 私はそんな自分が嫌いだった。


(友達の指はその後何とかくっついた)


 でも、私は高校にあがり、1人の女の子に出会って変わった。


 取り替えっ子はよくいじめられる。私もいじめられていた。けど、そんな私を助けてくれたのが、クイナという子だった。


 茶色いミサンガと、何故かクマの耳のカチューシャをつけたこの子は、小学生の時にクマの少女と別れてから、辛い思いをしたけど、そのおかげで強くなったと話してくれた。多分、クマの少女も取り替えっ子なのかな。と思った。


 それから私たちはいつも一緒だった。猫とクマの仲良し2人組。注目されて、嫌な思いをすることもあったけど、その度にクイナは私を守ってくれた。そして、その耳をもっと堂々と見せつけなさいと、手をひっぱってくれた。


 彼女との日々は刺激的だった。森で鮭を取ったり、2人で木登りして降りられなくなったり、好きな男の子が被って河川敷で決闘をしたり。男の子は決闘の次の日に引っ越したけど。


 そんな日々のおかげで、私は、嫌いだった自分がいないことに気づけた。


 今でも急に毛玉吐いたりマタタビで酔って友達を血まみれにすることはあるけど、私はとっても楽しかった。


 そして今日、私たちは高校を卒業した。それぞれの進路に向けて、初めの1歩を踏み出す。


 私は、クイナに感謝し、この耳と向き合っていこうと、やってやんぜこらぁ!と気合を入れてマタタビを吸ってまたやらかしました

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