愛と勇気
その出会いは、突然だった。
課外学習で訪れた海から見て左側の山の麓、今も開拓が進められているその場所で、私は1人の女の子に出会った。
キリッとした目と、綺麗に分けられた前髪、折り目正しく着られた制服。正直言って一目惚れだった。
近くにいた友人に話を聞くと、どうやら隣の学校で有名な人らしい。どうして有名なのかわからなかったけれど、私は勇気を振り絞って、話しかけることにした。
その前に、まずは身だしなみを整えることにした。けども、そもそも開拓団の人の話を聞かず突然話しかけてくる男は非常識だと思い直し、襟を正してむさ苦しいおっさんの話を真面目に聞く。
長ったらしくてわかりにくい話が終わるまで、たっぷり2時間かかったし制服姿なのに仕事を手伝わされた。
でも、全てが終わり、お昼ご飯の時間になって、ようやく解放された。されたので私は早速彼女に話しかけに行った。
「あ、あの!一緒にご飯、よろしいでしょうか!」
「くたばれ」
一目惚れは終わった。
…いや、まだだ。まだ諦めるな。がっくりと折れた首を持ち上げて、彼女を見つめ
「見るな」
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!
箸が!箸!!目に箸!!痛いよままぁ!!!
バク転に失敗して頭から着地したみたいな感じになって転げ回る私を見て、彼女はとても楽しそうにげらげらと笑っていた。くすくすではなく、げひゃひゃひゃひゃひゃ!って笑っていたのは多分聞き間違いだ。
だが、私は彼女が好きになってしまったのだ。もう一度、勇気を振り絞って思いを口にする。
「好きです!!!」
「金払いなぁ!!!」
諦めよう。
―後から調べると、彼女はああやって清楚そうな格好をして男を騙し、笑いものにしているのだと言う。ふざけんなクソアマが。
…おや、あんな所に素敵な女性が!!よし!勇気を出して声掛けてぇああああの女じゃねぇかぁぁぁ!!!!!!
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