第15話 アイドル
「じつはヨシハルにオススメしようと思っていた、本命のアニメがまだ紹介出来てなくてさ」
「え?こんなにいっぱい紹介してくれたのに?」
すでに紹介してもらった作品だけでも、もう十分に満足できる供給量だ。
「作品名が出てないって事は、まだプレゼンしていないジャンルって事ですよね?他に何かありましたっけ?」
知樹にもピンときていないようである。
「ジャンル自体もまだ出てないわ」
それにしても・・・アニメのジャンルは改めて考えてみれば、かなりいろんな種類があるんだな・・・まぁ今まで深く考えた事はなかったが・・・。
「ケンさん、もったいぶらずにいきましょうよ。誰もここでのタメは楽しんでないですよ」
これは知樹に同意する。ケンイチのニヤニヤ顔がうざい。
「別にもったいぶってるワケじゃないけど・・・アイドルアニメを忘れてないですかね?」
アイドルアニメ・・・よく聞くジャンルではあるが、俺とは1番縁がないジャンルだと思っていた。
「ああー!忘れてましたね!アイドルアニメも絶対に毎クールに数本はありますもんね」
「ヨシハルが最初に好きになったアニメが『けいおんぶ!』って聞いてたからさ。可愛い女の子がいっぱいいて推しを探せるし、楽曲も良いのが多いし、それにジャンルとしても人気だから、次々に新しい作品も出てくるしね」
「基本、恋愛要素が少ないから、自分の好きなキャラが変なやつとカップルになったり、もしくはメインのキャラにフラれて滑り台に行ったりしないので、ギヤァァァー!ってなる事ないですもんね」
そんなやつおらんやろ。
「精神衛生上優しくて助かるよな」
ケンイチも同意してる・・・そんなやつおるんか。
「あとは1番人気のある作品が今でも現役で、続編が作り続けられてってのも、オススメしたい要員の1つやね」
「1番って言うと・・・『ラブラブライブ!』ですか?」
『ラブラブライブ!』は聞いた事がある。たしかに有名な作品だ。
「『ラブラブライブ!』は聞いた事あるけど、アレってまだ続いてるんだ?」
「続編というよりは、同じ世界線の中で別メンバーの話って感じだけどね」
「いままで初代の『ラブラブライブ!』・・・巷では無印と呼ばれているのが1作目、2作目は『ラブラブライブ!シャイニー』、3作目は外伝扱いですが『ラブラブライブ!夢ヶ咲学園スクールアイドル部』、そして4作目は今年放映していた『ラブラブライブ!ウルトラスターズ』と現在4作品があります」
知樹もなかなか詳しいようだ。
「知樹もアイドルアニメは見るんだ?」
「まぁ嗜む程度ですけどね。人気作品は一応チェックしてますね」
嗜む程度って・・・
「ケンイチは?」
「俺もガチ勢じゃないけど、気に入った作品のライブには行く程度・・・かな?」
「ガチじゃねーか!」
ライブに行くのは相当好きなはずだ。
「ケンさんはどのグループのライブ行ったんですか?」
「『ラブラブライブ!』シリーズではないんだけど・・・『フランシュシュ』と『ワルキューレ』は行ったな」
グループ名かな・・・アニメタイトルとは別にアニメ内のグループが存在するのだろうが・・・当然のようにさっぱりわからない。
「それは何のアニメ作品のグループなん?」
「『フランシュシュ』は『ゾンビィランドサガ』、『ワルキューレ』は『マイクロス△』内に出てくるグループやな」
この2作品はたしか、今日すでに名前の出てきた作品だ。
「『マイクロス△』はロボットアニメじゃなかったっけ?」
「そうやな。『マイクロス』は歌が大きな1つのテーマなんだけど、初代は昭和っぽいソロのアイドル、『8』はバンド、『F』は歌姫キャラと平成のソロアイドルみたいな感じで、その時々の流行りを取り入れるのよね」
「ああ。それで『△』の時はアイドルグループが流行っていたから、作品内にアイドルグループがいるって事なんやな」
納得した。『ゾンビィランドサガ』の方は・・・
「『ゾンサガ』はMAPPOの作品って事で紹介しましたね」
「2人共が面白いって言ってた作品やな」
「ですね!これは・・・死んでゾンビになった女の子達がアイドル活動を始めるって作品ですが、間違いなくアイドルアニメですね」
「・・・ギャグじゃなくて?」
いや、この内容はどう考えてもギャグだろ。
「笑いあり涙ありの正統派アイドルアニメです」
「正統派かどうかは審議が入ると思うわ」
「聞いただけだとイロモノにしか思えないわ」
「まぁ正統派かどうか置いておいて・・・僕はアイドルアニメで1番好きなのは『ゾンサガ』か・・・少し古くなりますがやはり『アイドルマイスター』は外せないかと」
『アイドルマイスター』も良く聞く名前だが、たしか・・・
「『アイドルマイスター』はゲームでもあるよな?」
「そうですね。元々ゲームセンター用のゲームが家庭機に移植された作品なので、ゲーム発ですし、ここ最近はソシャゲでしかコンテンツが追加されていない印象ですね・・・最後にアニメやったのっていつでしたっけ?」
「たしか・・・『シンデレラマスター』でも5年以上前、無印の方だと10年くらい前になるんじゃないかな?」
名前をよく聞く作品の割には古い作品なんだな。
「その辺の作品は今から追いかけるのはツライかな?」
「ソシャゲはまだ現役だし、今でも『アイマス』のライブとかはやってるけど・・・」
「新規で今から飛び込むのにはオススメしないですかねぇ・・・良い作品なのは間違いないんですけどね」
「そうか・・・アニメは星の数ほどあるし、あえてこの作品に今すぐチャレンジする事はないかもな・・・」
「そうやな・・・でもアイドルアニメのジャンル自体を好きになったら、いつかは必ずぶち当たる事になる偉大な作品ではあるで」
「楽曲数の多さやキャラの多さは群を抜いてますもんね。ケンさんは全部把握してるんですか?」
「まさか!ゲームをプレイしてないから、アニメに出てきたキャラと曲くらいやわ」
「ですよね。でもアニメ関連だけでも十分楽しいですもんね」
「俺はアイドルアニメは好きでよく見るけど、ゲームまでプレイしている作品は1つもないわ」
「アイドルアニメのゲームって多いん?」
「多い・・・と言うか、ほとんどの作品がゲームとセットじゃないかな?音楽とゲームの親和性は高いし、今やソシャゲは最大の集金ツールやからな」
「アイドルアニメで人気が出たら絶対にゲーム化しようとしますし、アニメ化とゲーム化の企画が同時で進む作品も少なくないですよね」
「それで失敗しているパターンをたくさん見るけどな」
失敗するパターンもあるのか。
「そもそもアイドルアニメがここ数年こんなに多く制作されているのって、需要もあるけど、供給側のメリットが大きい事もあるのよね」
どういう事だろう?
「まず1つはゲームとの親和性・・・ゲーム化しやすい事。音ゲーのテンプレはいっぱいあるから、簡単にゲームに出来るし、ゲームは当たるとデカイ。でも・・・」
「でも?」
知樹も横から会話に入る。
「アイドルアニメの音ゲーってヒット作ほとんどないですよね?リリースから2年くらいでサービス終了がザラですよ」
「せやな。だからゲームのメリットよりも、もう1つのメリットの方が大きいんだけど・・・」
「もう1つ?」
「声優さん達によるライブやな!これがグッズ販売も含めてめちゃめちゃ儲かるらしい」
「うーん。夢のない話だ・・・」
「むしろ夢のある話でしょ」
立場に寄るよね。
「だから新規のアイドルアニメの声優さんは、ライブしやすいように有名な人を避けて新人を起用する事が多いね」
「ソシャゲはすぐにサービス終了しますけど、全然話題ならなかったアニメのアイドルユニットがいまだにライブ活動だけしてるとかありますもんね」
「基本そういうアニメで人気出なかった系のアイドルユニットのライブは、関東圏でやる事が多いけど、関西で公演あるんだったら行きたいなってグループいっぱいあるもん」
そういうものか・・・
「とりあえずケンさんがよっさんに勧めたいアイドルアニメは『ラブラブライブ!』って事でファイナルアンサーなんですか?」
「『ラブラブライブ!』を勧めたいというよりは、アイドルアニメのジャンル自体がヨシハルの好みに合うんじゃないかな?って思ってただけだから・・・単純に好きなだけなら『ゾンビィランドサガ』の方が好きだし、2クール分しかないからこっちをオススメしたいかな」
「『ゾンサガ』は劇場版も決まってますしね」
「劇場公開後は絶対にまたライブあるだろうしな!死ぬ気でチケット取るわ」
「本気やな・・・」
「知樹はオススメのアイドルアニメはないん?」
次はケンイチが知樹に話を振る。
「そうですね・・・アイドルアニメソムリエのケンさんのお眼鏡にかなうかはわかりませんが・・・」
なんだよアイドルアニメソムリエって。
それにしてもケンイチは原作厨、恋愛脳、アイドルアニメソムリエと、知樹からたくさんの呼称を与えられているな。
「『推しが武道館に行ってくれたら死んでもいい』は面白かったですね!」
「『推し武道』は面白かった!さすが知樹さんお目が高いです!」
ソムリエも納得のチョイスのようだ。
「さっきケンさんが熱弁してくれたゲーム化している、声優さん達のライブがあるというテンプレからは外れているのですが、作品として面白いですよね」
「漫画原作だし、あえてジャンルで言うとギャグアニメに入るかなって感じもするもんね」
ギャグなのか?ちょっとタイトルからは想像できないな。
「地元でしか活動していない地下アイドルを応援する女性オタクのコメディですね。おっさんのヤベーオタクがしそうな行動を、美人な女性オタにさせる事によって笑いに昇華する作品です」
「でもちゃんと楽曲とかライブシーンも良いし、アイドルアニメとしてもクォリティ高いよ」
ギャグアニメなら見るハードルが少し下がるな。知樹のオススメなら見てみたい。
「あと・・・未来枠ですが、来年にアニメ化が決まってる『推しの娘』も期待してますね」
「『推しの娘』は原作も面白いよ!」
「やっぱりそうなんですね!話題になってますもんね!」
しかしケンイチはなんでも原作チェックしてるな・・・
「でもこれもいわゆるテンプレなアイドルアニメって感じではないと思うけど・・・」
「どういう系なんですが?」
「えーと・・・ミステリ?」
いきなり物騒になったな。
「え?そんな感じなんですか?チラっと見た感じはアイドルがどうとか書いてあった気がしたんですけど・・・」
「自分が推していたアイドルが殺されるねんけど、その子供に転生して犯人を捜す話やな」
「転生要素もあるのか!欲張りセットだな」
でも面白そうではある。
「たしかにそう聞くとアイドルアニメじゃなそうですね・・・むしろ楽しみになってきましたが」
俺もである。
「でも原作でもまだ犯人までたどり着いてないからね・・・どこまでアニメ化するかはわからんけど、確実に続きは原作で・・・ってなるよ」
「そうなんですね・・・」
「そうなのかー」
2人の口からため息が漏れる。
ミステリ作品で犯人がわからないのって最悪のパターンじゃない?
「でも面白いのは絶対面白いから!気に入ったら原作も見てね!」
「ちなみにケンさんは原作は集めてるんですか?」
「『推しの娘』はヤンジャンで毎週読んでるから、持ってないです」
「使えねーなー!」
知樹!毒が漏れてるよ!
「でもまぁ絶対に見るのは見ますけどね。その後の事はその時に考えよう」
「人気が出たら2期あるかもしれないし、アニメ化が続けばいつか犯人に辿り着くかもしれないしね」
気の長い話である。
「コナン君もずっと黒の組織を追っかけてますもんね」
『迷探偵コナン』・・・俺達が小学生の頃からずっと放映されているアニメだ。しかし未だに黒幕を捕まえていない。
「俺達が生きてるうちに終わるんだろうか・・・?」
俺は子供の時にしか見ていないが、黒幕くらいは知っておきたいと思う。
「この前、子供が『コナン』見てたからお父さんが子供頃からずっと犯人探してるって言ったら、さすがに驚いてたわ」
「20年以上も小学生してるからなぁ・・・世界観どうなってるんやろ?」
ちゃんとケータイがスマホになったりアップロードされているんだろうか?
「話がそれてますけど、今年始まった面白いアイドルアニメとかはなかったんですか?『ゾンサガ』も去年だし『ラブラブライブ』や『アイドルマイスター』も未だ人気とは言え、スタートしたのはどちらもかなり前ですからね。今からよっさんが見れる手っ取り早い作品というか・・・」
「『ラブラブライブ!ウルトラスターズ』は今年とは言え、これも2期だもんな・・・」
ケンイチは少し考えた後・・・
「個人的になるけど今年の新規のアイドルアニメで1番好きなのは『シャイニングポスト』かな」
「『シャイニングポスト』・・・僕は見てないですね」
知樹も未視聴の作品か。
「王道テンプレの作品やけどね。売れないアイドルの前に敏腕のマネージャーの主人公が現れて、いろんな問題を解決して才能を開花させ、人気アイドルに駆け上がっていく作品」
「たしかに王道っぽいな」
「でもこの王道を全部ちゃんとやるのが実は難しくてさ。楽曲の素晴らしさ、ライブシーンの動き、各アイドルの掘り下げ回と各々にセンター曲をちゃんと作る丁寧さ・・・もちろん各キャラも魅力的で凄く良かった!」
「でも・・・話題にはなってませんよね?僕、知らないですもん」
たしかに、面白い作品なら知樹も見ていそうなものだ。
「なんでだろうな・・・面白いねんけどな・・・」
ソムリエも全然頼りになんねーな。
「まぁ・・・アイドルアニメは『ゾンサガ』と『ラブラブライブ』の無印を見てみて、このジャンルを気に入ったら新規開拓してみるんが良いんじゃないかな?いつか推しのアイドルグループがみつかるかもしれないし」
声優アイドルグループのライブかぁ・・・今は行ってる自分が想像できないが・・・もしかしたらアイドルアニメにハマっている自分がライブに行っている未来もあるのかもしれない。
俺はまだヲタクを始めたばかりだからね。
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