第14話 ギャグ
「2人はギャグアニメとかは見るん?」
「ギャグですかぁ・・・」
「ギャグアニメはなぁ・・・」
2人の反応は芳しくない。スポーツアニメみたいに苦手なジャンルだったかな・・・
「ギャグは苦手なジャンルだったか・・・」
「いや、そういうワケではないんですけどね。けっこう見ますし、好きな作品も多いのですが・・・」
「俺と知樹の好み・・・笑いのセンスがまず合わないのよね。これ面白かったよな?って言っても、え?ってなる事が多い」
今日の会話の感じだと、2人の評価がズレる事の方が少なかった気がするのだが・・・ギャグアニメではそうはいかないらしい。
「笑いの好みって千差万別過ぎて難しいですよね。年齢性別によっても全然違うし、僕とケンさんでも分かり合えない作品がいっぱいありますもん」
「ところでなんでギャグアニメなん?」
ケンイチが俺に聞く。
「最近話題になってる『ポップテアピッピク』を見たんだけどさ・・・正直そんなにハマらなくて・・・」
『ポップテアピッピク』は現在放映中のギャグアニメだ。
ニワカヲタクの俺でもちょいちょい情報を拾えるくらいには流行っていると思ったのだが・・・
「『ポップテアピッピク』はかなり上級者向けだからな・・・」
「ギャグにアニメに上級者とかあるんかよ??」
「『ポップテアピッピク』は内容が半分、残りは毎回変わる声優さんの配役と絡みを楽しむ作品ですからね。声優さんに詳しくないと面白さが半減しますよね」
「しかも本筋のギャグもかなり偏った感じするしな」
「なぜそんな尖った作品に人気が出るん??」
「むしろ尖ってるから気になったり、話題になったりするんじゃないですかね?」
「無難なギャグアニメなんて誰も求めてないしな」
それもそうか。
「あ、でもラブコメだったり、ストーリーがしっかりしててギャグテイストな作品だったらちょっとクスっとなるくらいの無難な笑いでも全然OKやけどね」
「ラブコメで紹介した『かぐや様は告白されたい』や異世界転生で紹介した『この素晴らしい世界に祝砲を』は、ピュアなギャグアニメかと言われたら少し迷いますもんね」
たしかに・・・『ポップテアピッピク』のような純度100%のギャグアニメはそれはそれで珍しいのかもしれない。
「じゃあさ、オススメじゃなくていいから2人の好きなギャグアニメトップ3を教えてよ」
の話題を振った俺にも責任があるし、せっかくなので俺から提案してみる。
「よっさん・・・僕達をノせるのが上手くなってきましたね」
「しゃーないーなー考えたるわ」
2人共ニッコニコやん。
しばらく2人はうーんと唸ったのち、ケンイチの方が先に口を開く。
「俺から発表していいかな?」
「お先にどうぞです」
「よろしくー」
「トップ3・・・とは言えず順不同で3つピックアップするなら『カクシゴト』、『ベンチプレス何キロあげれる?』、『あそびませ』かな?」
ケンイチがあげた3つの作品は、どれも知らない作品だ。
「ケンさんらしいと言うか、好みが偏っていると言うか・・・」
「他にも候補はいっぱいあったんだけど、ここはあえて、好きに寄せてチョイスしてみたわ。説明もしていいん?」
「もちろん」
大歓迎だ。タイトルだけ聞かされても俺にはさっぱりわからない。
「まずは『カクシゴト』なんだけど・・・タイトりが「書く仕事」と「隠し事」のダブルミーニングになってて、主人公が自分が漫画家である事を娘に隠しながら送る日常のドタバタギャグ作品やな」
そのままケンイチは続ける。
「ギャグ作品ではあるけど、随所で差し込まれる成長した娘の不穏なパートの伏線や、家族愛の話なんかも盛り込まれていて、ギャグ意外にも泣けたりする作品になってるわ」
これは・・・たしかにケンイチの好きそうなテイストだ。
「次は『ベンチプレス何キロあげれる?』これは女子高生が筋トレをはじめる作品やな。女の子可愛さと筋トレの知識が増えていって知識欲が満たされていく・・・そんな感じやわ」
「どこにギャグ要素が入ってるのかわからんな」
「うーん・・・説明しづらいけど、筋トレあるあるを含んだクスっと系なのかな?とりあえず可愛いひびきちゃんを愛でて欲しいくらいしか言う事ないわ」
今までの作品とは違い、紹介するケンイチの方も迷いながらなので、イマイチ面白さが伝わらないな。
やはりギャグアニメはなかなか難しいようだ。
「最後は『あそびませ』・・・これは可愛い女子高生がグループの話なんだけど・・・」
ケンイチはギャグ作品でも、どうやら可愛い女の子が出てくる作品が好きなようだな。
「ワキガの女の子や毒舌の女の子がいたりと、絵柄とギャグのギャップで楽しむ作品やな」
「ワキガ女子かぁ・・・これはな・・・」
「え?でも可愛いで」
くそう・・・ケンイチの感覚が独特過ぎてついていけない!
「後はさっきの『かぐや様は告白されたい』はラブコメとしても好きだけど、ギャグとしてもかなり笑えると思うわ」
「ケンさんは可愛い女の子出てくるの好きですよね」
「俺もそう思った」
やはり知樹も気づいていたか。
「いや?そんな事ないで。他に古い所だと『ケロケロ軍曹』、『はぴ☆すた』、『通常』とかが好き」
「全部萌えじゃないですか!わかっててやってるでしょ」
「まーね。でもたしかに女の子が出てくる作品が好きな傾向はあるかもな・・・今まで意識した事はなかったけど」
好きな作品を客観的に聞いてもらう事によって、自分の趣味嗜好に初めて気づく事もあるのかもしれないな。
「そういう知樹は好きな作品は決まったん?」
次はケンイチが知樹に聞き返す。
「そうですね・・・僕は『金魂』、『おそ松さま』、『ぐらんどぶるー』が好きです!」
「知樹・・・全部下ネタじゃねーか」
「テヘっ」
『金魂』と『おそ松さま』は俺でも知っているくらいの有名作品だ。
「説明・・・いらないかも知れませんが『金魂』は週刊少年ジャンピで連載されていた王道の少年漫画ですね。バトル漫画としても面白いと思いますが、個人的にはシリアスな話よりも馬鹿な事をやってる話の方が断然好きです」
「『金魂』はシリアス回とギャグ回の温度差凄いよな」
「ですね。僕はどっちかって言うとギャグのセンスの方が素晴らしいと思うんですけどね・・・あとはパロディとかの攻め方もやばい」
「『エバ』のパロディとかもやってたな」
「やりたい放題でしたよね。あと、一応ですが劇場版でアニメ作品としても完結してますよ?」
「俺だって別に、ギャグアニメにまでアニメだけで完結して欲しいとかは思ってないけどな・・・むしろ刹那的に笑わせてくれたらそれでいいよ」
「ですよね」
「『金魂』は俺でも知ってるわ。『おそ松さま』も一応知ってる。これはかなり話題になったやつよな?たしか腐女子を中心に人気なった・・・みたいな」
俺も聞きかじりに知識で会話に参戦する。『おそ松さま』はかなり昔のアニメのリメイク・・・?続編?といった感じで、小学生だったキャラ達が全員大人になったという設定の話のはずだ。
「たしかに爆発的なブームの原因は女性人気だと思いますが、ギャグもしっかり面白いんですよね!大人になった六つ子のクズさやゲスさ・・・ニートネタ、ギャンブルネタ、下ネタ・・・なんでもアリで笑えますよ」
「『おそ松さま』ってそんなアニメなんだ。女性人気が高いからもっとキラキラした感じかと思ってたわ・・・」
「実際キャラデザもイケメンって感じじゃないし、俺も最初は何故あんなに人気が出たのかわからなかった」
「うーん・・・六つ子の尖った性格の個性に、人気の男性声優さんを配役したからですかね??その程度の作品は他にもありそうですが・・・僕も正直あそこまで人気が出るとは思っていませんでした」
2人にもイマイチわからないのか。
世の中は何がウケるかわからないものだからな。
「最後は『ぐらんどぶるー』ですね。こちらは主人公が大学生になってダイビングサークルに入る話ですが、ギャグのメインは酔っ払いネタと下ネタです」
「やっぱり下ネタじゃないか」
「まるで僕が下ネタ好き人間みたいな良い方はやめてくださいよ」
「実際チョイスしているアニメが物語っているんだよな・・・」
知樹は下ネタでゲラゲラ笑うタイプなんだろう。
「『ぐらんどぶるー』も一応ラブコメやんな?下ネタのイメージ強過ぎるけど」
「ラブの要素あるんだ・・・。そう言えば大学生のラブコメアニメって少ないよな?」
ラブコメアニメの大半は高校生のような気がする。
「たしかに少ないですね。メタな話をするなら漫画家やラノベ作家で陽キャのサークルに所属しつつ、大学を卒業した人が少ないからじゃないですかね?」
それは・・・偏見では?
「大学のラブコメで1番最初に思い付くのは『現視研』だけど、あれはヲタクサークルの話だしな。あとは『ゴールデンタイマー』とか?」
「『現視研』は面白かったですね。『ゴールデンタイマー』は・・・どんな作品でしたっけ?」
知樹も記憶にないようだ。
「『どらドラ』の作者さんが『どらドラ』の完結後に書いたラノベをアニメ化した作品やな。『どらドラ』の時と同じような二匹目のドジョウを狙って、原作の完結とアニメの最終話を同じタイミングにしたんだけど・・・正直、イマイチ盛り上がらなかったかな」
「失敗したんや」
「うーーーん・・・俺は好きやねんけどな・・・知樹が認知してないって事は・・・世間の評判はそんな感じなんだろうな」
「たしか僕も最初は見てたと思うんですけどね・・・1クールくらいでギブアップしたような気がします・・・」
今日、2人は俺に面白いアニメ作品の話をしてくれているので、当然ポジティブな話が多いけど、それ以上にイマイチだった作品もたくさんあるんだろうな・・・
「2人は面白くない作品でも一応は最後まで見るん?」
「俺は・・・全然合わないって作品じゃなければ、わりと最後まで見る事が多いかな?」
「僕はかなり大量の作品を1~3話だけ見て、気に入ったやつを残す感じですね」
「まぁ、途中はずっとワクワクしているのに、右肩下がりで面白くなくなっていったり、最後の最後でオチが酷いなんて作品はいっぱいあるけどな」
「ありますねー。でもそれもまた出会いですもんね」
「クソアニメを最後まで見たという経験を得れる」
達観してるな。
「ヨシハルはまだまだ経験せんでええよ。楽しい作品は山ほどある」
「放映中のアニメをドキドキしながら追いかけるのは絶対に楽しいですが、あえて面白くない作品を最後まで追い続けるのは・・・まだよっさんには早いです」
面白くない作品を最後まで見るスタイルはマネしたくない。
「そういえばさっき話してた『ぐらんどぶるー』はラブコメ視点から続きが気になって、俺も原作は漫画喫茶で読んでるねんな」
「あれ?僕の事を下ネタイジリしたのに、ケンさんも好きなんじゃないですか!」
「ギャグがハマったってわけじゃないで!あくまでいおりとちさの恋の行方が気になっただけやで!」
「やっぱ男子はみんな下ネタが好きなんですよ。小学生の頃からずっとDNAに刻み込まれているんでしょうね」
なぜそんな壮大な話にするのか。
「ケンさんは『金魂』と『おそ松さま』は見てないんですか?」
知樹がケンイチを下ネタ大好き仲間に引き込もうとしている。
「俺は・・・『金魂』は連載で毎週読んでたからアニメの方は見てないし、『おそ松さま』は1期は全部見たんだけど、2期の途中で合わないなーと感じて見るのやめてしまったわ」
「なんと!そんな下ネタ苦手アピールはいらないですよ!」
「ホントだって」
最初に言ってた通り2人はギャグアニメに関しては感性が合わないのだろう。
「知樹は他にも好きなギャグアニメとかはもうない?」
俺は最後もう一度知樹に聞いてみる。
「『生徒会役員達』も好きです」
「やっぱ下ネタじゃねーか」
やっぱり下ネタらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます