第12話 お仕事

「さっきちょっと出てきた仕事をテーマにしたアニメ作品って、ジャンルにできるくらい多いの?」

次は俺の方から聞いてみる。

さぁ!ヲタク共、ノってこい!

「次はお仕事アニメか!いいね!」

「お仕事系も意外と多い気がしますね」

ヨシ!ノってきた。

「でも・・・とりあえずお仕事アニメと言えば絶対に紹介せなアカン作品が1つあるよな」

「ですね。これを外してはお仕事アニメは語れないですよね」

どうやら2人の中で鉄板のアニメがあるようだな。

2人は目線を交わし合い、声を揃えて・・・

「『シロバコ』!」

「『シロバコ』っ!」

綺麗に揃った。

「やっぱ『シロバコ』は外されへんよな」

「『シロバコ』抜きでこのジャンルのアニメの話をするのは不可能です」

そんなに面白いのか。

「『シロバコ』ってどんな話なん?そもそもタイトルだけじゃ、何の仕事のアニメかもわからないし・・・」

お仕事アニメというわりに、お仕事感は出ていない。

「『シロバコ』はアニメ制作会社の話やな。新人制作の主人公が奮闘しながら成長していくストーリーやわ」

「アニメ業界の裏話とか、あるある話とかがかなりリアルっぽく描かれていて、アニメヲタクの僕達も毎週興味津々で楽しみにしながら見てました」

「それに加えて主人公の学生時代のアニメ同好会のメンバーが、大人になってからはバラバラになりながらも同じ業界にいて、学生時代の夢がだんだんと重なりあっていくのがめちゃくちゃエモいんよ!」

「ラストのヅカちゃんとおいちゃんのとこ泣きますよね!」

「俺『シロバコ』は1年に1回は絶対に見てて、必ずそこで泣く」

ケンイチは毎回泣くほど好きなのか!俺にとっての『けいおんぶ!』みたいな?

「そんなに面白いんだ?」

「もう4~5年前の作品ですけどね・・・未だに俺の中では色褪せないわ!多分、ヨシハルが今から見ても面白いと思う」

「『シロバコ』が傑作過ぎて、一時期PBワークスはお仕事アニメを作るアニメ会社ってイメージがありましたもん」

「PBワークスって?」

「『シロバコ』を作ったアニメ制作会社やな。知樹が言ったようにPBワークスは他にも『花咲くおとは』、『ヒマワリクエスト』、『青い海のアクアトープ』っていうお仕事アニメを作ってるね」

いっぱい名前を出してくれたけど、タイトルからはどれ1つとして、題材とされた職業がわからない。

「ちなみにその作品は何のお仕事です??」

「『花咲くおとは』は旅館、『ヒマワリクエスト』は役所の地域振興課、『青い海のアクアトープ』は水族館ですね」

「千差万別やな!」

いろんな職業をアニメにしてるんだな・・・

「どれも面白いんですけどね!でも・・・『シロバコ』が頭1つ抜けてるなとは思います」

「俺は最近の『アクアトープ』も好きやけどな。それでも・・・№1は『シロバコ』やな」

これは結論が早かったな。

「そうか、それじゃあお仕事アニメは満場一致で『シロバコ』という事ですね」


「いやいやいや」

「待て待て待て」

あら?ストップが掛かった。

「今のはあくまでPBワークスのお仕事アニメの中では、って事ね!」

「まだまだ語りたいアニメはありますっ!」

どうやら結論を急ぎ過ぎたようだ。

「ケンさんは他にオススメあります?」

まずは知樹がケンイチにパスを送った。まだまだ続けるぞ・・・という意志を感じる。

「そうだな・・・最近のだったら、お仕事アニメと言っていいのかわからないけど「オットセイタクシー」が今年めっちゃ良かったわ」

「それは・・・タクシー運転手やな!」

これはわかりやすい。

「まーね。ただこの作品がお仕事アニメというよりは、タクシー運転手の主人公を中心にした群像劇とミステリーって感じやな」

「『オットセイタクシー』も放映中は考察とか盛り上がりましたよね!これもネタバレ厳禁系なので多くは語れないですが」

「アニオリで1クールだけだから是非見て欲しい」

今聞いただけでは面白いのかどうか全くわからないが、2人の薦めるものだから大丈夫だと盲目に信頼しておこう。

そして当然のように知樹にもおすすめはあるのだろう。

次はケンイチがパスを送る。


「知樹のオススメは?」

「そうですね・・・先ほどの『AREA』と同じ架空の職業になってしまうのですが、『バイオレットエバーガーデン』もお仕事アニメに入れてもらえないかと」

『バイオレットエバーガーデン』はたしか太秦アニメーションのオススメでも知樹が名前をあげていた作品だ。

「『バイオレットエバーガーデン』もアニメの世界だけの仕事なん?」

そういえばさっきは泣けるアニメとだけは聞いたけど、その内容は全く話してなかったな。

「そうですね・・・大きな戦争が終わって平和な世界へ移行していく時代、字を書けない人の為に代筆をする、自動手記人形・・・ドールっていう手紙の代筆屋さんの話ですね」

「元々軍人で、戦う事しか能の無かった主人公が人の手紙を代筆して、たくさんの人の心に触れ、愛を知っていく・・・みたいな話やな」

当然のようにケンイチもチェックしているようだ。

「これはベタっぽい話だけど、聞いただけでも感動しそうって感じがするな」

「じっさいに王道でベタベタな話が多いですよ。しかしながら太秦アニメーションが王道でベタな内容を丁寧に、そして美しい映像で仕上げてくれただけで、こんなに素晴らしい作品になるのか・・・って感じですね」

「わかってても泣いてまうよな。あれはズルイ」

「ズルイってなんやねん」

「いや、これは見たらわかる。あんなん絶対に泣いてまうズルイやつや」

とりあえず、確定で泣けるのなら、それはもう名作なんだろう。間違いない。


「あと・・・『昭和落語心中』もこのジャンルで推しておきたい」

ケンイチが違うアニメの名前をあげる。

「これは・・・落語になるのかな?」

「そうやな。戦前の話やねんけど、落語を中心にした愛憎劇って感じの作品やわ」

「僕も見てました。面白かったと思います。丁寧でちょっと重い感じのイメージの作品ですね」

「たしかにそうやな。ストーリーも面白いし、落語のパートのクォリティ・・・声優さんの演技も素晴らしいよね」

「あれはたしかに演じるの難しそうですよね。でも、まるでプロの落語家さんの話を聞いてるようでした」

「俺はそもそも落語自体も好きで、落語アニメも好きな作品が多いねんな」

落語アニメってそんなにあるのか?ニッチ過ぎない?

「落語アニメって他にもあるん?」

「そうやな・・・今ちょうど放映してる『ボクの師匠にはしっぽがない』とか、『じょしらくご』とかあるな!」

けっこうあるみたいだ。

「今、シレっとケンさんは『昭和落語心中』と『しっぽな』と『じょしらくご』を落語アニメでまとめましたけど、この3作品は全然テイストが違いますからね」

「そうなん?」

「『昭和落語心中』はリアル路線の愛憎劇、『しっぽな』はタヌキの女の子が人間に変身して、落語の師匠に弟子入りするファンタジー、『じょしらくご』はゴリッゴリのギャグアニメです」

ほんとにバラバラのジャンル過ぎて笑う。

「てか、そもそも「落語」がテーマとして狭すぎて、この3作品くらしか思いつかないですよ」

だよな。だと思った。

「知樹さんの言う通りです。まぁ俺が好きな作品って事で・・・そこまでオススメはしないけど」

「逆に落語みたいなジャンルでも3作品あるので、お仕事アニメの種類・・・取り上げられた職業はかなり多いですよ」

そのようだな。


「ヨシハル、試しになんかテキトー職業を言ってみてよ。そのアニメを探すわ」

「お!やってみます?」

なんかゲームが始まった。

「じゃあ・・・警察官」

「『ハコ・ヅメ』」

「『富豪警察』」

即答である。

「簡単過ぎたか・・・じゃあ教師」

「『GTA』」

「じゃあ僕は『電脳教師』」

ここも苦もなく作品名をあげる。

「医者」

「『ブラックジョーカー』!」

「モ・・・『モンスターのお医者さん』」

『ブラックジョーカー』は俺でも知っている有名な作品だ。『モンスターのお医者さん』は・・・

「『モンスターのお医者さん』とは・・・?」

「モンスターの女の子を専門に見るお医者さんの話・・・かな」

なんかヤベー雰囲気するな。深くは聞かないでおこう。

「なんでもあるな・・・次は掃除屋さん」

「掃除屋・・・」

「掃除屋さんはないかも?」

さすがにないか。

「『シティーハント』・・・スィーパーで掃除屋って事でどうですか?」

知樹が苦し紛れに答える。

「セーフにしておいてやろう」

まぁこれくらいで彼らも満足かな?

「とりあえずたくさんあるって事は伝わったわ」

「えー!まだまだあるのに!」

もう満腹だ。多分、このままダラダラ続けても、知らない名前のアニメがどんどん増えていくだけだ。

俺はこのテーマを終わらせようと、2人に声を掛ける。


「他にこのジャンルで言い残した事があるものはおるか!」

このジャンル・・・想像したよりも作品が多くて収集がつかなさそうなので、そろそろまとめに入っておきたいところだ。

「そうですね・・・僕は『船を編む』をすすめたいです」

知樹がまた1つ作品名をあげる。

「ああー!アレは俺も好き!原作も持ってる」

ケンイチも好きな作品のようだ。

「ケンさんの言うように小説原作の作品で辞書の編集者の話ですね」

「辞書の編集者?またニッチな職業やな・・・」

「そうですね。でもこういうあまり知られていない職業の方が、たくさんの知らない世界に触れる事ができて楽しいってのは確実にありますね」

「たしかに!ラジオDJの『波よ聞け!』とか、たいそうのおにいさんの『うらみちにいさん』とかもあったね」

「スポーツの時もあったけど、マイナーなものだから面白いっては、作品を作る上では逆説的に王道なのかも知れませんね」

「スポーツで思い出したけど、スポーツアニメで紹介した『風の強い日は嫌いか』と『船を編む』はどっちも原作は同じ作者さんやで」

さすがケンイチ、隙あらば原作情報をねじ込むなぁ。

「たしかにどちらも雰囲気似てますもんね。そしてどっちも人間ドラマがメインですね」

「実際にどちらも実写映画化もされているもんな」

「むしろなぜアニメ化したんでしょうね?」

「良い作品なのは間違いないけど、ぶっちゃけグッズ展開とはしないし、映像ソフトもそんなに売れるってワケでもないしな」

「大人の事情ですかねぇ」

「いや・・・俺たちも十分大人でおっさんやからな」

思わずツッコんでしまう。

「俺達にはわからんけど、何かメリットはあるんだろう」

「実際、僕みたいにテレビドラマや小説をあまり読まない人間にも、媒体を変える事によって届いてますからね。良い作品をいろんな人に届けるという使命感・・・でいいんじゃないですか?」

「イイハナシダナー」

そうだろうか?そんな結論でいいのか?

「と、とりあえずは『シロバコ』はマストで『オットセイタクシー』と『バイオレットエバーガーデン』を見ておけばいいかな?」

「個人的にははその辺で大丈夫だと思います」

「お仕事アニメはスポーツモノやバトルモノと違って、アニオリや1~2クールできれいに完結している作品も多いから、どんどん面白そうな作品にチャレンジしていくのも楽しいで」

お仕事アニメ・・・思ったよりも幅広いジャンルだったんだな・・・。

ますます見るアニメが増えそうだ。























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