第8話 バトル

「原作ありの作品が多いと言えば能力バトル系のアニメもそうですよね」

知樹が次の話題を提案する。

「能力バトル系・・・これも1つのジャンルとしてまとめてしまうにはなかなか幅広くて難しいけど、避けては通れない道ではあるな」

そんな大げさな・・・

「古くは『ドラゴンボーイ』や『幽霊白書』、現在でも『ワンピィス』『チェーンソー・マン』とか・・・この4作品はどれも週刊少年ジャンピ原作で王道の中の王道って感じの作品ですね」

「だからこそ、原作付きで長い作品も多いし、今更ヨシハルにオススメしやすい作品は少ない気もするけど・・・やっぱり今期始まった『チェーンソー・マン』辺りが無難かな?」

『チェーンソー・マン』は先ほど流行ってるアニメでも出てきた作品だな。

「自分で名前を挙げといてアレですが『チェーンソー・マン』は王道って感じがあんまりしないですね・・・」

「王道のバトルで今期スタートな作品なら『ブローチ』もあるけど・・・あれも最初からアニメで全部見るとなるとかなり長いもんな」

「でも作画も素晴らしい出来だし、すでに完結した作品だからきっちりとキリの良い所までやると思うし、けっこう楽しみに見てますよ」

「俺も!」

『ブローチ』・・・俺が学生の頃にも放映してたような気が・・・

ただ、ここまで出てきた作品のほとんどが知っている作品である。これが王道たる所以か。

「けっこう知ってる作品多いんだけど、なんか今更見たいって感じではないなぁ・・・もっと、こう、何かないん?アニヲタっぽいやつ」

謎のリクエストをしてしまった。

「なんですかそれ?と、言いつつもなんとなーく言いたいことはわかりますけど」

「たしかにこの辺りの作品は小学生が見てそうな、夕方とか日曜の朝って感じはするよな」

言いたい事は伝わったか。

「でも小学生にめちゃくちゃ流行った『鬼詰の刃』とか、今やってる『チェーンソー・マン』とかも深夜アニメですけどね」

「『鬼詰の刃』も言われてみれば能力バトルだな。『呪力廻戦』も最近流行ったし、能力バトルモノはジャンピが強過ぎるな。ジャンピ作品でジャンル作って語っても面白そう」

「てか『鬼詰の刃』って深夜アニメだったんだ?」

知らなかった。勝手に夕方の6時とかにやってそうだと思ってた。

「ですね。ただ今はサブスクとかでいつでも誰でも見れますからね。小学生に広がるのにも深夜アニメだから難しいとかは特に問題はないのかも知れませんね」

「でもあれ、劇場版は一応PG12指定付いてて、親の同伴・・・同意が推奨ってなってるからな」

「え?そうなん?街中とかいろんなグッズにもキャラクターが溢れかえってるから、そういうの気にしない作品だと思ってた」

「『鬼詰の刃』で引っかかるのは、鬼を殺したり血が出たりとかの残虐表現でエロ規制じゃないから、1枚絵は全部セーフなんじゃないですか?」

「まぁ敵を殺したり、血が出たりって表現は親的には敏感になるかもしれないけど、俺らも小学生の時は気にせずに見てたしな・・・」

俺もそうだった気がするな。『ドラゴンボーイ』でフローザ様の胴体が真っ二つになっても、いやぁぁぁぁ!とはならなかったもんな。

「さて話は戻しますが、深夜アニメっぽいバトルアニメですよね」

知樹が話を軌道修正してくれる。

「ラノベ原作で有名なやつだったら『とある科学の禁書目録(インデックス)』とかが面白かったかな」

ケンイチがまた新しいアニメのタイトルを出してくれる。

「面白いですね!でも・・・あれも原作付きで長いですよね・・・今からよっさんにオススメ出来るかっていうとな・・・」

「ちなみにどれくらい長いん?」

一応、聞いておく。

「たしか・・・本編が2クールの3期くらいでしたっけ?」

「それに加えてスピンオフの『超電磁砲(レールガン)』も2クールの3期分あるし、『一方通行(アクセラレータ』が1クール、映画とOVAもあるな」

スピンオフ多っ!それだけ人気のある作品という事か。

「そして・・・残念な事に原作の最後までまだアニメ化されていないです」

これは・・・ハードル高いな・・・

「これは・・・ちょっと難しいかもな」

本音が思わず漏れる。

「でもね、俺個人としてはスピンオフの『超電磁砲』だけ見てもいいかな?って思う。これはホントに面白いからオススメしたい」

「わかります!僕も『超電磁砲』の方が好きですもん!」

スピンオフの方が人気が出てしまったパターンかな?

「世界観とか設定とかけっこう複雑な作品だから、スピンオフの方がキャラの可愛さやバトルの迫力で楽しめる気がするかな」

「そっちから見てみて、気に入ったら本編の『禁書目録』に手を出すのも良いかもしれませんね」

「スピンオフの方は全部アニメ化されてるん?」

「されて・・・ないな・・・」

どっちにしろハードル高いじゃないか・・・

「原作が全部映像化されている作品というなら『妖物語』とかどうですか?」

「あれは最高やな!」

ケンイチの目がパっと輝く。

「お、ケンイチめっちゃ食いつくやん。面白いん?」

「面白い!個人的にベストアニメの1つに推したいぐらい好きな作品やわ」

おお!こんなところにケンイチのベストアニメが埋まっているとは。

「少し厨二病の主人公に、魅力的なヒロインズ。ハーレム恋愛要素がありつつも、基本はメインヒロインからブレない主人公・・・たしかにケンさんの好きな要素がてんこ盛りですね!」

「ヒロインと恋愛の情報しか出てこないんだが・・・」

これはもう恋愛アニメでは?

「いや、死にかけの吸血鬼を助けて自らも吸血鬼になり、いろんな怪異と出会ってしまったヒロイン達を助けたり、戦ったりするのがメインだから」

ヒュゥ!中学生が好きそうな設定だぜ!でも俺も嫌いじゃない。

「でも・・・例に漏れず長いですよね・・・キチンと最後までアニメ化されてるとは言え」

「やっぱり原作のある作品はどうしても長くなるよな。それでも最後までアニメ化してくれたのはとても幸せな事だけどね」

どのポジションからの目線やねん。

「でも・・・『妖物語』はヨシハルに是非とも見てもらいたいな!とりあえず1期1クールだけでも良いし」

「そうですね!1期が人気出て、どんどん続きが映像化されていった作品ですし、そこまで見て合わなければ途中で見るのをやめても問題ないですしね」

「1クールだけならかなりハードル低くて助かるわ!チェックしてみる」

ケンイチがベストアニメとまで言うのだ『妖物語』は見なければなるまい。

「しかしバトルものも長くて、原作ありの作品ばっかりですね・・・なにか1クールのオリジナル作品とかありませんでしたっけ?」

このジャンルは『妖物語』で答えが出たのかと思ったぜ・・・まだ続けるのね。


「うーーーーん・・・」

「うーーーーん・・・」

しばらく2人は考えた後、ケンイチの方が口を開く。

「変身して戦う系だと、さっきロボアニメでもちらっと出てきた『SSSSグラッドマン』とか・・・、あとは可愛い女の子が変身して戦う『魔法少女まどかマジック』とか『結城友理奈は勇者である』とかはどうかな?」

「『魔法少女まどかマジック』は話の展開的にSFのジャンルじゃないですか?」

「主軸になるギミックはSFアニメで良く使われるやつだけど、魔法で変身して戦うのがメインだから、やっぱりこっちじゃない?」

「そうですか・・・了解です。じゃあ僕もこの3作品は凄くオススメしたいですね!」

なんか2人の中では通じ合ったみたいだ。何度も言うがこのやり取りは気持ち悪い。

「『SSSSグラッドマン』と『結城友理奈は勇者である』、そして『魔法少女マジカルまどか』はどれも名作ですね。能力バトル・・・とは少し違うかもしれませんが、どれもアニオリでとても人気のあった作品です」

「原作のないアニメオリジナルの作品は毎週、次はどうなるんだろ?ってワクワクしながら待つのが醍醐味の1つだから、その時の熱量がちゃんとヨシハルに伝わるのかはちょっと微妙なところなんだけどね」

「でもその3作品は今からあらためて見ても、ちゃんと面白いと思いますよ」

「ちなみにどんな内容なん?」

どうやら1クールで面白い作品は貴重みたいなので、この3作品は是非ともチェックしておきたい。

「『SSSSグラッドマン』はもともとは特撮作品だったんですよね。それをベースにしながら新しいアニメ作品を作ったって感じです」

「でも俺も特撮の『グラッドマン』は全然知らなかったけど、めちゃくちゃ楽しめたからまったく問題ないで」

「ですね。むしろ特撮の『グラッドマン』からのファンです!って人の方が少なかった気がします」

「これが気に入れば同じ世界観の『ダイナソーゼノン』もあるし、これから公開される予定の劇場版『グラッドマンVSダイナソーゼノン』も控えてるから、今からでも全然間に合うで」

「3人で映画観に行くのも楽しそうですね」

3人で・・・映画?おっさん3人で?アニメ映画??

「え?2人で映画とか行ったりするの?」

「めっちゃ行きますよ!『ガンダル』シリーズと『コードアイギス』シリーズは全部2人で行ってますよね」

「かなり前だけど『けいおんぶ!』の日本最速上映も2人で行ったよな!」

「懐かしいですね!深夜12時から始まるので、終わった後電車がなくて、歩いて天王寺から帰りましたねー」

こいつらはホント何をしてるんだか・・・

「でも『エバ』は一緒に行かないのよね。うちはさおりも好きだから見たいって言うし、なにより知樹がガチ過ぎて話についていけないからな・・・」

「そもそも『エバ』の最速上映は東京の事が多いですからね。基本遠征になりますからなかなか誘えないですよ」

え?大阪でも見る事が出来る映画を東京まで見に行くの??何を言ってるんだ???

「あと、初日だけでも何回か見るんやろ?」

「そうですね。初回を見終わった後は、一度カフェで自分の中の考察をまとめたりして2回・・・3回目くらいは見るかな?」

俺が映画を見る感覚とはずいぶん違うんだな・・・ついていけそうにない。

「こんなん知樹だけやからな」

「いやいや僕だってその日のうちに何回も見るのをは『エバ』だけですよ」

良かった。アニヲタは全員こんな奇行をしているのかと思ったわ。

「最近はけっこうすぐにサブスクで見れるようになるからなー昔みたいに気に入ったから2回3回って行くことがめっきり減ったわ」

やっぱり行ってたんかい!俺の経験上同じ映画を2回見に行った事は1度もない。それが普通だと思っていたのだが・・・

「便利ですよね。最近は劇場での公開期間を短くして、すぐにサブスクってのが前提の作品も多いですもんね」

「でも劇場で見る臨場感、音響、迫力がウリの作品も多いから、全部の作品を家で見ようとはならないけどね」

「その辺りの見極めは大事ですね」

たしかにそれはありそうだな。映画館の雰囲気が楽しいってのも絶対にあると思う。


「話はそれちゃいましたが、次の『魔法少女まどかマジック』も凄く良い作品です」

「魔法少女ものの中でも傑作と呼ばれるアニメだと思うな」

「魔法少女?『プイキュア』みたいなのはさすがにちょっとな・・・」

たしかに幼児アニメが好きな大きなお友達が多いとは聞いているが、俺にニチアサはまだ早い。

「いやいや、俺も娘と一緒に2年くらい『プイキュア』シリーズは見たけど、なかなか奥が深くて・・・」

「待って!今は『プイキュア』はいらんかな!」

多分奥深い話は聞けるんだろうけど、今はまだその深淵は覗き込みたくはない。

「まぁよっさんに『プイキュア』はまだ早いですよね。結婚して女の子が産まれてからでも十分間に合います。『プイキュア』はいつだってあなたのそばにいてくれますよ」

知樹・・・お前も結婚してないだろ。なぜその立場で俺に語り掛けてくるのか。

「さて『まどマジ』の話でしたっけ?いや魔法少女の話か?」

「そうそう。俺は魔法少女にはそんなに興味ないかな?って話やわ」

「しかしな、ヨシハル・・・深夜アニメと魔法少女は切っても切れない関係なんだぜ」

そうなの?

「僕達の子供頃の魔法少女アニメと言えば『夢ちゃんのりぼん』とか『赤ずきんチャラ』とかの少女漫画原作のものや『おジャ魔女どらみ』みたいに女の子が変身して事件を解決する作品が多かったのですが、さきほど話題になった『プイキュア』で女の子が変身して戦う作品になって、それがめちゃくちゃ流行って今でも続くようなシリーズになったんですよね」

たしかに『プイキュア』は長いよな・・・いつでもやってるイメージ。でもおっさんには毎年全部一緒に見えるけどな!

「昔は『美少女戦隊セーラームーン』って女の子が変身して戦う大人気の作品もあったんですけど・・・」

それは俺でも知ってる!レジェンド級の作品でしょ。

「『美少女戦隊セーラームーン』は少女漫画原作でけっこう恋愛要素強めなんですよね。それに比べて『プイキュア』は恋愛要素が薄い」

「それが何か関係あるん?」

「たくさんの可愛い女の子が変身して、戦って、女の子同士わちゃわちゃして男の影がない作風がヲタクと相性が良くて女児のファン以外にもたくさんの大きなお友達のファンを引き寄せてしまいました」

「ああ・・・」

「するとそこから女児のファンを排除した、グロかったり、ちょっとエッチだったり、ストーリーが少し難解な魔法少女アニメが深夜枠で増え出したんですよ」

「有名なのはさっきも出た『魔法少女まどかマジック』、『魔法少女マジカルなのは』、原作付きなら『魔法少女育成報告』とか『魔法少女ウェブサイト』なんてのもあったな」

「めちゃめちゃあるやん」

「そう!だから深夜アニメを見るなら魔法少女のジャンルは避けては通れない道の1つなんですよ」

「この辺りの作品を食わず嫌いしてるようじゃ、まだまだよ」

おっさん向けの魔法少女アニメか・・・もうなんだかわけわかんねぇな。

「さて、よっさんに魔法少女アニメへの理解を含めてもらったところで『まどマジ』の話ですよ」

「ああ、そんな話してたな」

ようやく本題のようだ。

「『まどマジ』は主人公の前になんでも願いを叶えてくれる代わりに魔法少女になってよ・・・と話しかけてくるマスコットキャラみたいなのに出会って、そのマスコットキャラと契約して魔法少女になるのですが・・・」

ふむふむ。

「ストーリーは・・・」

ふむ?

「あれ?ケンさん、『まどマジ』って核心を隠してストーリーを伝えようとすると、めっちゃ面白くなさそうになりません?」

「たしかになー」

どゆこと?

「この作品アニメオリジナルなので先が読めなくて、毎週考察したりするのが楽しかったんですけど、序盤は先輩魔法少女に魔法少女のお仕事を見せてもらって、私も契約しよっかな!とかなってたのですが・・・いや、これも言ったらダメなやつですわ」

「なんか不穏やな!」

「すみません!聞かなかった事にしてください・・・」


「じゃあ残った1つの方は?」

「『結城友理奈は勇者である』ですね」

「『ゆゆゆ』も面白かったね」

アニヲタはちょいちょい独特な略し方をするよな。

「『ゆゆゆ』は突然勇者に選ばれた女の子たちが変身して戦うストーリーで・・・」

魔法少女系はある日突然変身出来るようになるのがテンプレみたいね。

「ストーリーは・・・」

ふむ?

「ケンさんこっちもダメです。バラしたくない部分を隠してよっさんに面白さを伝えるのが難しい」

「『ゆゆゆ』もアカンな・・・めっちゃ面白いんやけど」

「この作品もアニメオリジナルで、序盤は女の子達が部活動みたいにキャッキャウフフしながら変身してたんですが・・・あとは察してください」

「諦めたっ!」

「アニオリ作品の醍醐味は読めない展開だからなー。この辺りは致し方ないよな。もう俺達を信じて見てよ!と、しか言えない」

「ですねー。でも『まどマジ』と『ゆゆゆ』は面白いですよ!能力バトル、アニメオリジナル、1クール作品でオススメする作品は、僕ならこの2つにします」

「知樹は『魔法少女マジカルなのは』や『プイキュア』も含めて魔法少女のジャンル好きよな」

「ですね・・・ケンさんが急に能力バトルのジャンルに含めなきゃ、個人的には魔法少女ってジャンルで語りたいくらいですもん」

魔法少女のジャンルかぁ・・・沼が深そうだな・・・

「でもまぁ知樹は1クールって言ったけど、『まどマジ』も『ゆゆゆ』も人気が出たから映画、続編、前日譚、外伝とけっこう映像作品だけでもいろいろあるし、漫画や小説、ゲームなんかも含めたら把握しきれないほどは製作品はあるけどね」

やっぱり、いっぱいあるんじゃん。

「いえいえ!僕は『まどマジ』も『ゆゆゆ』は1クールで過不足なく魅力を伝える事が出来る作品だと思ってます!」

とりあえず好きになったらいろいろ追いかけてもいいしね。

「了解。じゃあ知樹のオススメは『まどマジ』と『ゆゆゆ』・・・ん?『ゆゆゆ』って正式名称は何だっけ?」

「『結城友理奈は勇者である』ですね」

「オケ。知樹のオススメは『まどマジ』と『結城友理奈は勇者である』って事ね」

「ちなみに『まどマジ』は『魔法少女まどかマジック』ですよ」

「そっちも略称だったか・・・」

タイトルを忘れそうだな。

「ケンイチの方は推してくれる作品はあるん?やっぱり『妖物語』?」

なんせベストアニメって言ってたもんな。

「そうやな!こっちもとりあえず1期だけ見て、気に入ったら続きを見ていったいいと思うわ」

ケンイチは『妖物語』がオススメっと。

これで能力バトルアニメの話もひと段落したかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る