第7話 スポーツ

「スポーツアニメってどうなの?」

俺は何気なく聞く。

「そうですね・・・」

「うーーーん」

今までとは違い反応が鈍い。

「僕はあまり得意なジャンルじゃないですね・・・」

「俺も語れるほどは見てないかも」

意外だな。2人にも苦手なジャンルがあるとは。

「『キャプテン翔』とか『スラムダッシュ』とか有名な作品も多くて王道かと思ったけど」

「もちろん王道ジャンル1つですよ。少し前だと『テニスの王様』とか『黒子のバスケット』とかが大人気でしたし・・・」

「今期も『アカアシ』や『弱者ペダル』がやってるしね」

『テニスの王様』『黒子のバスケット』『弱者ペダル』は俺も聞いた事がある。どれもジャンピやチュンピオン等の週刊連載誌が原作だったはずだ。

「今出たタイトルのアニメは全部漫画原作よね?」

「ヨシハル!良い所に気が付いたな!」

なんか褒められた!

「そうなんですよ。スポーツアニメってほとんどが漫画原作ですね」

「スポーツものって、まずそのスポーツや仲間に出会い、ライバル登場、試合、挫折、特訓、勝利・・・とテンプレなぞるだけでも時間がかなり必要だから、オリジナルのスポーツアニメってほとんど見ないよな」

「そして人気のあるスポーツモノは当然のように原作が長い」

「じゃあ、原作の方を読めばいいやってなるよな」

なるのはケンイチだけかも知らんが。

「あとはスポーツアニメでヒットするパターンってキャラに魅力があって女性人気が出た時がほとんどですよね」

「そう!女性人気が出て、グッズの売り上げで数字が出ないと、なかなか原作の続きもアニメ化しようってなってくれないからね」

「僕達が子供頃のように、とりあえずアニメは1年間っていう時代じゃないですから・・・スポーツモノだと人気原作の作品を2クールくらいやって、人気が出るかを判断してみて・・・みたいな感じが多いですね」

「それで2クールだけだと、だいたい原作の中途半端なところでアニメが終わっちゃうからね・・・オススメしやすい作品が少ないなと」

そうなのか・・・それならば仕方がないよな。

「ケンさん的にはスポーツアニメのオススメは何ですか?」

でもやっぱりこのトークテーマやるのね。

自分で振った話だから仕方がないけど。

「俺的には・・・無難に『弱者ペダル』かな」

「グッドチョイスだと思います」

2人は頷き合う。納得の選択なのだろう。

「少年チュンピオンで連載されている漫画原作でその名の通りロードバイクレースが題材の作品やね。ヒット作の例に漏れずキャラが多彩で魅力的な上にレース展開も激熱で男女問わずにファンが多いわ。この作品きっかけでロードバイクがめちゃくちゃ売れたとも言われる超人気作品やわ」

「ですね!これまで4期、計9クールがアニメ化されてて、現在は5期目が放送されます」

長いわ!

「長いわっ!」

おっと、心の声が思わず・・・

「まーね。でも今回の5期目で2年生のインターハイの最後までいけそうだから、アニメとしての区切りも良いんよね」

「ケンさんはアニメの区切りを大切にする男ですからね」

「性格的に続きは原作でって言われたら、じゃあ原作で良いじゃん!ってなるタイプやからなぁ・・・。そういう意味でもスポーツアニメって相性が悪い」

だからこのジャンルには消極的だったワケね。

「知樹はオススメのスポーツアニメってあるん?」

次はケンイチが知樹に聞き返す。

「そうですね・・・じゃあ僕はあえてマイナースポーツ作品をピックアップしてみましょうかね」

「ほう!そう来るか!」

どう来たのだ。

「さっきからケンさんも言ってる通り、スポーツアニメって原作が長いのが前提な上に完結作品って少ないんですよね。」

「そうみたいやね・・・」

「ただこれがマイナースポーツになると、サッカーや野球と違って、競技人数が少ない分、主人公の急激な成長にも納得がいったり、いきなり最強クラスがライバルになったりと短くても山場が作りやすくて面白いんですよね』

「わかる」

わかる・・・らしい。

「そこで僕がオススメしたいのが・・・『ボールルームへいらっしゃい』『風の強い日は嫌いか』『爆熱カバディ』『やまかける』辺りですね。

カバディだけはわかるが、他は何のスポーツかすらわからない。いや、カバディが何かって言われたら聞いた事はあるが、これもさっぱりわからない。

「ああー!『ボールルーム』はめっちゃ良かった!」

ケンイチも知っているようだ。

「『ボールルーム』は社交ダンス、『風の強い』は駅伝でこの2作品は2クール。『爆熱カバディ』はその名の通りカバディ、『やまかける』はボルダリングでどちらも1クールと短めです。」

「『ボールルーム』放映中に原作の最新刊までアニメ化されたからね!区切りも良いよ!」

アイツまた原作の話してる・・・

「『風の強い』も原作が小説なのでしっかり最後までアニメで完結してて面白いです。まぁ僕は原作読んでないんですけどね」

この2作品はちゃんとアニメだけで楽しめそうなんやね。良い事である。

「『カバディ』『やまかける』続きは原作で~のパターンなんですが、マイナースポーツならでの出会いやスポーツに説明も序盤の山場になったり、ベタですが他の競技をしていた主人公にこんな意外な才能が!で強くなったりと1クールでもしっかり面白いんですよね」

「ヲタクは知らない競技の説明とかを見るのも、知識欲が刺激されて好きやからな」

わかる気がする。でもそれってヲタク特有というワケでもない気がするが。

「僕がパっと思いつくスポーツアニメのオススメはこの辺ですかね?」

「どの作品も原作があるので、好きになったら結局、原作に手を出すハメになると思うけどね」

原作に手を出すのが嫌ってわけではないけど、やはり少しハードルが上がるよな。

「アニメオリジナルのスポーツ作品はないの?」

一応聞いてみる。

「うーーーん・・・何かありましたっけ?」

「あ!『ユーキ!オンアイス』!アイススケートのアニメなんだけど、さおりがめっちゃハマってたやつあるわ」

「あー!アレも人気ですよね!女性人気がメインですけど、ストーリーもスケート描写もかなりクォリティ高くて僕も好きでした!」

そういえば近藤もヲタクなんだったっけ。ケンイチは家でも2人でこんな話をしているんだろうか?

「あと架空スポーツという謎ジャンルでいいのなら『ウマムスメ』は面白いですよ」

なんだよ架空スポーツって。

ただ『ウマムスメ』?は聞いた事があるな。たしか巷でかなり流行っているスマホゲームだ。

「『ウマムスメ』は盲点だった!それが許されるならこのジャンルで一番オススメしたい!」

「『ウマムスメ』ってゲームにもあったよな?競馬の話やっけ?」

なんとなくの知識で聞いてみる。

「競馬の話というか現実の引退した競走馬を擬人化・・・女の子化して、ケイバ学園という学校で学園生活をしながら、プリティレースというレースに出るって感じですかね」

とんでもない設定だな。

「それホントに面白いの?」

「それがね・・・面白い。実際の競走馬のとんでもない史実や伝説のエピソードをベースにしてるから、それだけでも感動出来るのに、さらには他のキャラとの関係性を増やしたり実際にはなかったIFの展開にしたりして、オリジナルアニメ作品としても素晴らしい出来になってるわ」

実際に存在する偉人を物語にする、伝記みたいなイメージかな。

「NHKの大河ドラマみたいな感じやね。それの競馬バージョンみたいな・・・」

「その認識に・・・近いんですかね?言われるまで考えた事なかったですが・・・」

あら?例えが微妙だったかな?

「そんな感じでいいんじゃない?大河ドラマも『ウマムスメ』も、こういう史実ベースの作品って、そんな都合良くいかないでしょ!からの、実は実際に起こった事なのです!が気持ちい作品だと思ってるし」

あーこれはたしかに歴史モノあるあるだな。

「でもここまで聞いた感じだと『ウマムスメ』ってスポーツアニメかな?」

架空スポーツで史実モノ・・・スポーツアニメの概念って何だ?

「まぁ・・・そもそも僕らがよっさんにプレゼンしやすいように、ジャンル分けしてるだけで、明確な区切りなんて一切ないですからね」

「スポーツアニメの代表みたいな顔してる『キャプ翔』も『テニキン』も完全に架空スポーツのジャンルに片足突っ込んでるからな。深く考えくていいよ」

「面白ければなんでもいいです」

「同意!」

ま、そうだよね。『ウマムスメ』はスポーツアニメとは認めない!だから見ない!とはならないかな?ただ、お馬さんを女の子にしてレースをさせるという発想は突飛過ぎて人を選びそうだけど・・・

「結論から言うと、スポーツアニメのオススメは?」

改めて聞く。

「『ウマムスメ』!」

「『ウマムスメ』ですね」

「いやいや、ずっとしゃべってた『弱者ペダル』とか『ボールルーム』とかはどこにいったのよ?」

「いやー『ウマムスメ』がスポーツアニメで良かったぜ」

「苦手なジャンルに一筋の光が差しましたもんね」

2人の中の答えは一致したみたいだ。

「じゃあ気が向いたら『ウマムスメ』も見てみるわ。

これでスポーツアニメも網羅した・・・はずだ。

純粋なスポーツなのかはわからないが。

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