第2話 流行りのアニメ
「知樹の言うとおり今流行ってるアニメを追いかけるのもやっぱり楽しいよな」
お?トークテーマがまた変わりそう?このタイミングで食べ物と飲み物を追加注文しておこう。2人が話に熱中しだすと、さえぎるの悪いもんな。
俺はさっと注文を済まして、トイレに立つ。
「今年流行ってるアニメと言えば、『チェーン・ソーマン』『スパイファミリア』『木星の魔女』辺りかな?」
「異議なしです」
この3つの作品はさすがの俺も知っている。日本人全員が知ってるとは言わないが、少しでもアニメヲタクを名乗る人間なら間違いなく聞いた事のある名前だ。
「さすがにその3つは知ってるわ。『チェーン・ソーマン』『スパイファミリア』はジャンピの漫画原作で『木星の魔女』は『機動戦士ガンダル』の最新作やろ?」
「そうですね。やっぱりこの辺りはアニメ見てない一般の人でも知識としては知ってるレベルかな?」
うーん・・・どうだろ?一般人の知識ってのはさすがにアニメヲタク特有の過大評価のような気もするけど・・・まぁその感想は飲み込んで話を続ける。
「でも俺ガンダルシリーズは全然知らないんだよな」
「大丈夫ですよ!『木星の魔女』はアナザーシリーズなので、宇宙世紀とは違って作品単体で楽しめます」
知ってる話をしていると思ったら、急に理解できない話になった。アナザーシリーズはまずわからん。
一応ケンイチがフォローをしてくれる。
「宇宙世紀っていうのは1番最初のファーストガンダルからZ(ゼット)、ZZ(ダブルゼット)、逆襲へと続くシリーズで、全ての作品の世界観と時間軸が繋がっていて、過去の主人公が次の作品にも出てたりもするし、ある程度最初から見ないと全部理解するのが難しいところもあるんだけど・・・」
ほうほう・・・
「その世界観とは別にG(グレート)W(ウィナー)SEEDS(シーズ)OO(ダブルゼロ)みたいなガンダルって呼ばれるロボットは出てくるけど、違う世界のお話・・・アナザーっていうシリーズもあるねん」
「まぁそのアナザーシリーズもA(エース)という作品の中で実は繋がりがある事がわかって・・・」
「知樹・・・その話、今はやめとこか」
「はい。すいません」
知樹に変なスイッチが入りそうになったのをケンイチが静止したようだ。
「『木星の魔女』はアナザーシリーズだからガンダルの名前は付いてるけど、今までの作品は何も見ていなくても楽しめるってワケやね」
それは良い事を聞いた。『木星の魔女』が流行っているのは知っていたが、ガンダルシリーズってだけでアニメ初心者にはめちゃめちゃハードルが高く感じるんだよな。
「しかも『木星の魔女』は『チェーン・ソーマン』『スパイファミリア』と違ってアニメオリジナル作品だから、誰にも先の展開はわからないし、現在は1クール目の放映中で、2クール目はまだ先。今、1番旬で楽しめる作品だと思う」
「でもまぁ、続きがわからないからこそ、2クール目で失速して、後に駄作と呼ばれて事も少なくないんですけどね・・・」
2人は何かを思い出したかのように遠い目になる。辛い過去でも思い出したのか。
「『熱血』も俺は好きやで。ガンダルのデザインも世界観の雰囲気も気に入ってたし、1期が終わった時点では2000年代以降のガンダル作品で1番面白いって言いまくってたくらいやからな」
『熱血』?ガンダルシリーズの中の1作品なんだろうけど、ここは素直に聞いておこう。
「『熱血』って何なん?」
「数年前に放映されたガンダルのアナザーシリーズで正式名称は『熱血のオフフェンズ』って作品ですね」
「イマイチやったん?」
2人は微妙な表情のまま話を続けてくれる。
「最終的な世間の評判は正直あんまり良くはないかな?さっきも言ったみたいにビーム兵器を使わず実弾兵器のみの戦闘だったり、味方のキーキャラが中盤で命を落としたりと、作品の世界観が骨太なのが受けて、途中まではかなりワクワクしてんけどね」
知樹も続ける。
「2期以降がね・・・1期のラストで敵のメインキャラが裏切ってこっちの味方に付いておおおー!ってなったのに、こっちに付いて以降はポンコツムーブをしまくるとか・・・」
「味方のリーダーが命狙われてるのわかってるくせに、敵地のど真ん中で謎にフラフラ動いて、案の定めっちゃ雑に殺される脚本とか・・・」
「1期は革命の女神!みたいだったヒロインも2期では空気になりますしね・・・」
「そもそもヲタクは大ピンチを切り抜けての大団円が好きなのに、バッタバタと味方が死んで、主人公も死んで、そのおかげで世界がちょっと良くなりましたエンドだしな・・・」
「バッドエンド、ビターエンドはアニメ作品として決して悪くはないんですけど、味方全滅が前提としてあり過ぎて、キャラの扱いも展開も全体的に雑にやり過ぎかな・・・」
出るわ出るわ。そんなに不満が溜まってたのか。
「2人ともめっちゃ『熱血のオルフェンズ』嫌いやねんな」
俺がそう結論付けようとすると、意外にも2人は首を振って否定した。
「いやいやいやいや!そんな事ないよ!むしろ好き!ヴァルヴァトスめっちゃカッコいいしな!」
「主題歌もめっちゃ良いですよね。今でも聞いたら涙出てきますもん。紅白でも歌われたんですよ」
正直、この作品への2人の評価が全然わからん。
「ガンダルっていう好きな作品のシリーズだから、無駄に期待のハードルを上げ過ぎたというか・・・」
「この世にはもっと作画が悪くて、脚本が雑で、演技も酷くて駄作って言われてる作品はいくらでもありますからね。『熱血』はクォリティ的にはしっかり良作だと思います」
「じゃあ『熱血のオルフェンズ』はオススメなん?」
「「オススメは・・・しないかな」」
オススメせんのかい!!しかも今回は綺麗にハモりやがった。
「これをオススメするんだったら、もっと違う面白いアニメをオススメしたいと思いますね」
「ガンダルシリーズだけにしぼったとしても、これをあえて1番最初には選ばないかな?」
なんか微妙な立ち位置な作品なんだな。初心者ヲタクには手を出すなという事だろう。
「話は戻しますが、今放映中の『木星の魔女』はめっちゃオススメしますけど、今後の展開次第ではよっさんや僕達の期待に応えてくれない、駄作になる可能性はあるって事ですね」
「でもそれを含めて次の展開を楽しみに予想したり、考察したりするのもアニメ鑑賞、アニメヲタクの醍醐味の1つだから、ヨシハルには是非今からでも追いかけて欲しい」
現在放映されている作品なので情報もすぐみつかる。スマホで少し検索してみると主人公の画像が出てきた。
「主人公、女の子か。なんかイマイチ可愛くないな」
俺が好きな『けいおんぶ!』のキャラから比べると・・・なんか意識高そうってか萌えが足らない気がする。
「それがですねぇ・・・動きだすと可愛いんでよね」
「周りのキャラもなかなか魅力的だしね。その辺はあんまり心配しないで良いよ」
なんかニヤニヤしてる。2人だけがわかってるよみたいなニヤケ顔だ。少し気持ち悪いな。こういうとこヲタクの良くないとこだと思うゾ!
「了解!じゃあ『木星の魔女』も帰ってから見てみるわ!」
心のチェックリストにこの作品も追加しておこう。
「『スパイファミリア』はどうなん?」
実はアニメのキービジュアルを見比べた時に、先に上げた3作品の中で1番気になった作品だ。
「小中学生にも人気みたいですね。キャラデザも可愛いし、ギャグもわかりやすくて面白い」
「うちも子供達が好きで一緒に見てるわ。『ドラグーンクエスト』のダイと『スパイファミリア』のアーニアの声優さんは一緒なんやで!とか話ながら見てる」
「うっわ・・・アニメ見てたら急に声優の知識語り出す、ヲタクの1番嫌われるムーブじゃないすか・・・ケンさん・・・やめた方が良いですよ・・・」
あ、ケンイチが露骨に傷ついている。
知樹が茶化しながら言ったセリフがどうやらケンイチの中でクリティカルが入ったみたいだ。
仕方がない、こっちで話を続けよう。
「子供向け作品ってワケではないのよね?」
「そうですね。スパイと暗殺者と超能力の3人がその秘密をお互いに隠しあって家族になるシュチュエーションコメディなのですが、暗殺者のお母さんはしっかり人を殺してますしね」
「子供に見せても大丈夫なん?」
「大丈夫じゃないすか?そりゃ『プイキュア』とか『忍たま乱次郎』に比べたらさすがにアレですけど、殺しのシーンもかなりギャグ的に処理されてるし、それだったら『鬼詰の刃』の方がもっとエグかったから」
たしかに、自分達の子供の頃見たアニメで、人が死んだとかどうかでワーキャー言った印象はないな。
「僕達よりも上の世代は『南斗の拳』とかが夕方にやってたんでしょ?あんなの晩御飯食べながら家族団らんの場で見てたら頭おかしくなりますよ」
俺達より上の世代のアニメヲタクエピソードはちょいちょい常軌を逸したものが出てきそうだな。興味深い。
「とりあえず『スパイファミリア』は大人から子供まで全年齢で楽しめるオススメのアニメって事でオケかな」
「原作がある作品で、その原作へのリスペクトや再現度も高いからオリジナルの『木星の魔女』よりも安心して見れますよ」
「かなり力が入ってるアニメやからコラボグッズやコラボカフェ、イベントも多いからアニメ本編以外でもしっかり楽しめると思うで」
お、ケンイチが復活した。
「俺も子供達と『スパイファミリア』のコラボカフェ行ったけど、凄い人だったわ!子連れ家族、カップル、女の子同士におっさんのソロ・・・おっさんのグループは少なかったが」
おっさんのソロ勢もいるのか・・・闇がふ・・いや奥が深い。
「公式が力入れててグッズの供給量が多い作品を追いかけるのはやっぱり楽しいですよね!」
「どんなに好きになった作品でも、原作とか公式に元気がないと、こっちもヲタクパワーをずっと燃やし続けるのが難しくなるからな」
なんだよヲタクパワーって。
「ただ原作付き作品だと原作に追いついた時はどうなるのか?そもそも原作の最後までアニメ化してくれるのか問題は付きまといますけどね」
「そうやね。原作付きアニメできっちり原作の最終回までアニメ化してくれる作品なんて全体の1割もないんじゃないかな」
そうなのか・・・そういえばたしかに子供の頃にやってた『スラムダッシュ』も『シャーマンキングダム』も中途半端な所で終わってた気がする。
「そうなると続きが気になって原作に手を出さなけれいけなくなるからな。うちはそれで集め始めた漫画や小説がいっぱいあるわ」
「実際はそんな風に原作の販促を目的にアニメ化した作品も多いですからね」
「『スパイファミリア』もそうなる可能性が高い?アニメだけではまで見れない可能性が高いと?」
「難しいですね・・・『鬼詰の刃』くらいの大ヒットで、さらに完結していれば、このままどんどんアニメ化、映画化してもお金は産み続けてくれるでしょうから、最後までアニメ化しそうですが・・・」
知樹は続ける。
「『スパイファミリア』はまだそのレベルには到達していないと言うか、そもそもこのまま人気出ても原作に追いつく方が早そうですね」
「うちは子供に頼まれて『スパイファミリア』の漫画全巻揃えたわ」
うーん・・・こいつ・・・子供の事だからチョロいのか、ヲタクだからチョロいのか・・・
ケンイチは嫁に怒られないんだろうか??
いや、そう言えば嫁もヲタクだったわ。
「順調にいったらは次は劇場版公開って感じじゃないですか?」
「その辺りが妥当で王道ルートかな」
よくわからんが、そういう事らしい。
「それでは『スパイファミリア』はオススメという事でよろしいのでしょうかね?」
一応、確認はしておく。
「そうやな!面白いと思って、続きが気になったら原作も買って、コンテンツにジャブジャブ課金していこうぜ!」
完結してないアニメ作品を追う楽しさと、難しさを教えてもらった。ありがとうございます。
「原作と言えばケンさんは『チェーン・ソーマン』の原作漫画全部持ってましたよね。原作勢としてはアニメの評価はどうなんですか?」
次は『チェーン・ソーマン』の話か。
なんだかんだで2人は俺の興味のある作品の話をしてくれてるんだな。たまーに置いて行かれそうになるけど。
「そうだな・・・良く出来てるとは思う。でも原作が神懸ってるからな・・・少し物足りないというか、表現の解釈違いというか・・・」
「うっわ!原作厨キッショ!」
「自分から話を振ってきて、その言い草はないんじゃないですかね・・・」
また2人でじゃれ合ってる。
「逆に原作読んでない知樹の『チェーン・ソーマン』の評価はどうなん?」
たしかにそっちの方が聞きたい。
「めっちゃ面白いですね!ダークヒーローものって言うのかな?主人公を筆頭にキャラが独特で、テンプレにハマった感じもなく魅力的だし、続きも気になる。さっきの『スパイファミリア』同様に公式が力入れてるのをビシビシ感じますね」
これは期待出来そうだな。
「アニメ化スタッフに恵まれているのって大切よね・・・最近、俺の好きな作品がアニメ化されたんだけど、それはもう・・・ヒドイ出来だった・・・」
「うわぁ・・・ご愁傷様です・・・どっちですか?・・・惑星?魔王さま?」
「どっちもだよっ!」
ケンイチが吼えた。
そこで俺はふと疑問になった事を聞く。
「でもさ。アニメ化ってそもそも面白いと評価された作品が選ばれるワケやろ?そこに色付いて、音付いて、声付いて、動き付くんだから、尺の問題でカットしなきゃとかどうしようもない事はあっても基本的に原作よりも面白くなるんじゃ??」
「まぁその尺の問題がなかなか難しいと言いますか・・・小説とか漫画って基本的には作者は1人が多いし、面白ければ書きたいものを書きたいだけ作者の好きなように表現できるけど、アニメは絶対に制限ありきですからね・・・その取捨選択にめちゃくちゃセンスが問われますね」
「さらに言うならその色付いて、音付いてってのも、そもそもそのパートを担当するクリエイターが最高の仕事をしなければ成り立たないからな。作者1人が天才だったら素晴らしい作品が生まれる小説とか漫画よりも、かなりハードルが高いと思う。」
「アニメ化が失敗したって言われる時はたいがい、ストーリーやキャラの出番をカットし過ぎ、逆に無駄なオリジナルエピソードの追加、声優陣が棒演技、作画崩壊・・・この辺りですね」
「逆に良いアニメってのは面白いシナリオに、最高の演技をしてくれる声優さん、素晴らしい音楽に、良く動く動画、そしてそれを取りまとめ監督さん達スタッフ・・・この全てが揃って神アニメだなってなるから、好きなアニメに出会えるって事は奇跡よ」
なんか話がデカくなってきたな・・・大袈裟過ぎやしないか?
「僕はアニメは総合芸術だと思います。かかわったクリエイターの全てが最高の仕事をした上で、それが奇跡的に噛み合わって初めて素晴らしい作品が生まれるんです。だから原作の方が面白いとか、原作の良さを出せていないとか言い出す原作厨は逃げだと思います」
「え!?急に俺の方に飛び火させるやん!」
変化球でケンイチをディスりだす知樹。これにはケンイチも苦笑いやな。原作厨に親でも殺されたんだろうか。
「それで原作厨のケンイチ的には『チェーン・ソーマン』のアニメはイマイチだと?」
ケンイチはしどろもどろ答える。
「いやぁ・・・原作者のタッキ先生の天才的なセンス表現しきれていないというか、声優さんの演技とかアニメの動かし方も俺たちが期待していたアニメらしくパキっとしたものじゃなくて、邦画的な感じって言うの?監督のディレクションの方向性だと思うんだけど、俺とは解釈が違うというか・・・」
ダメだ。やっぱこいつはめんどくさい原作厨だわ。
「まぁなんだかんだ言ってしまったけど、素晴らしいアニメ化だと思うよ!でも、もしアニメが気に入ったら原作も読んでくださいっ!」
あ、コイツ折れたな。
流行りのアニメ3作品の彼らの評価はこんなところだろうか。流行っているというだけあってどれも面白そうである。
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