第5話 教会の鐘 誰の為に? 日本大使館のミツコ伯爵夫人と大人のオルガ

誰の為に鐘が鳴る? それは‥


オルガの記憶‥人生の走馬灯

子供時代に多感な少女時代、それから‥離れて行った兄弟たち

一人残って、母の世話をする日々は‥


美しい娘時代の頃、しかし世界は華やかな明るい時代から暗い重苦しいへと

時代はドイツのナチス時代

其処はオーストリアの日本大使館

「ああ、教会の時を告げる鐘の音‥午後の三時ですわ 大佐」

「そうですね マダム 光子伯爵夫人さま」

日本大使館の客室のソファには二人の客人

差し出された日本茶を口にしての年齢を重ねた貴婦人が微笑する。

傍には影のように穏やかで大人しいオルガの姿


「日本茶に和菓子の羊羹 なんて素敵」光子夫人


「光子さま 日本の新聞も届いてます 読まれますか?」日本大使館に住まう軍人

「ええ、有難うございます」


「こうして見守ってくださって嬉しいですわ ナチスとは息子たちの事もあって‥

難しい立場ですからね 

長男ハンスは富豪のユダヤ人妻の為にナチスには協力してますが

次男リヒャルトは御存じのように思想犯としてナチスから追われて逃亡生活」


「マダム」「うふふ」


「教会の鐘の音がまたしてますね」

「ええ、そうね 戦争中ですもの 葬列の鐘かしら?」

「それとも婚姻、結婚式かも」


傍で静かにオルガも微笑していた。


教会の鐘が個人の為になるのは‥普通の場合は結婚式に葬送の時‥

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