第4話 ヴァービック老と長男ハンス達の数奇な運命
「父君のハインリッヒさまが十代の子供時代に
イスタンブールの寄宿学校でお世話いたしました それが縁でしたね」
この日、執事で人の良い優しいヴァービック老はトルコ風の普段着を着て
連日の家庭教師たちに勉強を教わる私達の為に
午後のお茶やお菓子、林檎のアプフェルシュトゥルーデルを準備して
手渡し、そんな話をしてくれたのだった。
「数か国語を簡単に習得して、日本では各国の大使の方々と交流されて
日本語を翻訳したり、それぞれの国の翻訳のお手伝いまで‥」
「興味を持ち、遠い謎に満ちた東洋の日本に来られるからは酔狂な方も多い
そうですね 優しい方が多いのも」
「熱心なクリスチャンでしたらから
神父様たちの慈善活動のお手伝いもされましてね ええ」
「慈善活動に意欲的なフランス人で長い白髭をされたリギョール神父
それぞれのご家族が母さまであるミツコさんの結婚を反対した時にも
大きな味方でした」
「アジア方面の大使代理でしたから、近隣諸国にも短期旅行をされましたよ
マカオなども」
子供達は暖かなココアや紅茶に菓子を口にしながら
ヴァービック老の話を聴いていた。
暖炉の焚火が小さな音を立て、弾ける音がしていた。
「ああ、北海道や朝鮮半島では狩猟も楽しまれましたよ」
「日本に向かう前にも多くの国々を一緒に旅しました」
懐かしそうにヴァービック老が言う
「それに日本から戻るときも大旅行でしたね」
「世界の半分を廻っての船旅でしたから
東南アジアに香港にインドにサハラ砂漠にエジプトにウイーンの宮廷」
「幼い頃だったけど僕のパパは
日本の大使館で沢山の人達に好かれて人気者だったねヴァービック」
「そうですねハンス坊ちゃま」
長男で日本で生まれて、幼少期を過ごした長男のハンス兄
次男のリヒャルト
・・長兄、彼ハンス(日本名・光太郎)は富豪のユダヤ人の妻を娶るが 妻や家族を守る為に
ナチス政権下に置かれる事になったハンガリーのノルベルク城の為にも
心ならずもナチスに協力する事になり
日本で生まれた赤子だった次男の兄リヒャルト(栄次郎)が
ナチスから命を狙われて、逃亡とは対照的な人生を送る
そうして‥後には多くの者達がそうなったように
長兄ハンスは命こそ助かったが強制収容所送りとなって‥そこから逃亡
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