おかえり

 とある不動産から聞いた話です。

 その人は事故物件を中心に周っている人で、その日も事故物件であるということを聞かされたうえでその家を見るために訪れたそうです。

 その家は二階建ての木造築で、築50年以上は経っていそうな建物でした。外見はツタが覆われていたであろう痕が残されており、庭はやや広いといった印象でした。ただ、車が置けないという点に関しては昔の造りであり、たとえ庭を削ってもどこかでパーキングを借りなければいけないのかもしれません。

 その家ですが、中に入るなり不思議な感覚になったと言います。

 ”おかえり”と誰かから出迎えられたような気がしたんです。そのとき、家には不動産しかおらず一人でした。この家が前の持ち主にでもそう言っていたのかなと思うことにして、家の中を見て回ります。

 とくにおかしなことはなかったので、最後に庭を一周して帰ったそうだ。


 会社に戻るなり撮影した映像を編集していると一点だけ、奇妙な物が映っていたそうだ。それは玄関から入ってすぐ窓のところに人影が写っていたそうだ。ただ、1秒ほどしか映っておらず、前後しても人影はなかったそうだ。

 あのとき、玄関から入ると確かに窓はあったが、逆光しており、撮影者である本人の後ろには誰もいなかったはずです。そして、”おかえり”といった声もこの1秒間の前後から発せられていたものも確認がとれたそうです。

 今は、その家はすでに住んでいる人がいて住所は明かせないらしいですが、不思議なものだったといいます。”おかえり”と声をかけられただけで緊張の糸が切れ、穏やかな気持ちで撮影できたと語っていたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る