第12話「手をはなさないで」

「えー!カプセルさん、いい奴のフリして、ほんとうは悪い奴だったの?」

「イソシアネート君たちは、みんなで集まってカプセルさんになって、香り成分を守ってくれる良い奴です。

でも、壊れたあとは、人間にとって悪い奴に変わってしまいます。」

「どうして悪い奴に変わっちゃうの?」

「カプセルさんのカラダは、イソシアネート君たちがたくさん手をつないでくっついてできています。手をつないでいれば、いい奴なんです。でも、手が離れてしまって、バラバラになると、寂しくなって悪いことをする子になってしまうんです。」

「寂しくて悪い奴になっちゃうんだ・・

イソシアネート君、ちょっとかわいそう」


香和ちゃんが言います

「え、ちょっと待って先生!

柔軟剤は・・魔女の薬は・・毒だった、ってこと?!」

「柔軟剤には、カプセルさんがたくさん入っています」

「・・魔女の薬は、悪い魔女が作った毒薬だったの?!」

「ふわふわでいい匂いになるから、みんな良いものと思って使っています」

「みんなが使ってるのに、どうして理愛ちゃんだけ病気になっちゃったの?!みんなは全然平気なのに!!」

「体に良くない化学物質でも、ちょっとだけなら、みなさんは、具合が悪くなりませんね。でも、ちょっとを毎日くり返して、理愛ちゃんは、病気になってしまいました。みんな一人ひとり、体は違います。背の高さが違うのと同じように、体に良くない化学物質にどれくらい耐えられるかは、一人ひとり違うのです。みんなにとっては大丈夫でも、理愛ちゃんにとっては大丈夫じゃないのです。」


「そんな・・」

香和ちゃんは、納得できません


先生は続けます

「みんなの服には、カプセルさんがたくさん付いているので、理愛さんは、みんなの近くにはいらません。

みなさんと同じ教室にはいられないので、理愛さんだけ、別の教室で、勉強をします。

みなさん、理愛さんには近づかないようにしてあげてください。

でも、理愛さんもクラスの仲間です。

離れていても、大切な友達です。

そのことを忘れないでくださいね」

「はーい!」


香和ちゃんは、先生の話を、信じられませんでした


「だって理愛ちゃん、あんなにいい匂いって言ってたのに・・うそだ・・」

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