第56話 大団円

 数か月後、私とローリエのための家が完成した。


 広々と緑があふれる庭に、ゆったりと暮らせる落ち着いた家。

 今日は完成した家のお披露目と同時に、私とローリエとの結婚披露宴も兼ねている。カルダモン伯爵の計らいで、庭には立食パーティの用意が整いつつある。

 パセリ、ジンジャー、マスタードも手伝ってくれている。

 そこに、今日の来客、第一弾が到着した。


「サフラン、ローリエ、ひさしぶりです」

「おお、良い庭に立派な家だね」

「パセリたちも頑張ってるな」

「ローズマリー先生! フェンネルさんとオレガノさんも! よく来てくださいました!」


 第二段は馬車で到着した。カルダモン伯爵だ。


「やあ、サフラン、こんにちは。気に入ってくれたかな?」

「カルダモン伯爵! お庭も家も素敵です! ありがとうございます!」


 第三弾は、お忍びの馬車だ。ナツメグさんが御者をしている。

 馬車からガーリック将軍が降り、エスコートされてスターアニス王女が降りてくる。


「サフラン! お久しぶりですわね。お元気?」

「スターアニス! ガーリック将軍とナツメグさんも! 遠路はるばるありがとうございます!」

「父も来たがっていましたが、まだ旧ハバネロ帝国領の統治で忙しいようでしたわ」

「コリアンダー大王もお元気そうですね」

「土産話をたくさん持って帰ってくるように言われていますわ」


 *****


 パーティが始まった。

 ちなみに結婚披露宴を兼ねていると言っても、高砂席が用意してあるわけではない。私とローリエもみんなと一緒に輪になっている。


「皆さん、本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。ご存じのとおり、わたくしサフランとローリエは結婚いたしましたので、ここにご報告いたします」


 私とローリエは、左手の甲をみんなに向けて、コリアンダー大王にもらった結婚指輪を披露した。王都から帰る前日に大聖堂で魔力をチャージしてもらっており、また交信や転移が可能となっている。


 みんなから拍手をもらう。


 この世界に来てから、どれぐらい経つだろう。

 ローリエと出会い、ローズマリー先生と出会った。そしていろんな人と出会った。

 私の隣にはローリエがいる。何不自由ない暮らしがある。


 晴れ渡った青空の下で、楽しそうに笑うローリエを見て、こんな平穏がいつまでも続いてほしいと願わずにはいられなかった。


(完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る